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チョコレート(pixiv_2016年2月13日投稿)

「チョコレートが媚薬だって知ってた?」
間接照明だけが点いている部屋の中、何をするでもなくぼんやりしていると何やらごそごそと何かを取り出しているのが見えたが、しばらくそっとしておいたらそう問い掛けられて思わず顔を見た。
左側に座っているいつものその姿にゆっくりと近付いて問い掛けてみると、少し呆れるような顔をして笑われた。
「ブラックチョコレート食べてる時、心拍数は、キスをしている時の約2倍に増加してんだって」
チョコレートを一欠口に咥えて近付くその顔に手を添えて迎え入れる。
少し苦味のある味が口の中に広がった瞬間、舌が絡んでどろりと溶けたチョコレートが流れ込んで来た。
「これ、ブラックチョコレート?」
そう問い掛けると楽しそうに笑う顔が見える。
また舌が絡んで、ちゅ、ちゅ、と音を立てながら啄まれる。
そのうちにチョコレートの味もしなくなって、二人共微かに息を切らして唇を離した。
「幸福感をもたらす脳内物質のエンドルフィンっていうのが出てね、」
気持ちよさそうに目を閉じて、頭や顔を撫でられながらもゆっくりとした口調は止まらない。
それを制するでもなく耳を傾けながら、ソファーにゆっくりと横たえて体重を掛けないように伸し掛かる。
それを許すかのように首に腕を回して抱き締められ、目の前にある顔を見下ろすと楽しそうに笑う顔が見えてまた口付けた。
「フェニルエチルアミンていう、恋愛ホルモンが含まれてて、恋愛の初期段階においてドーパミンを放出させる神経伝達物質なんだって。MDMAやLSDとかにも関係あるんだってよ」
「何か難しいこと言ってるね」
「EDにも効くんだってよ」
そう意地悪気な笑顔はテーブルの上に置いてあるチョコレートをまた一欠片口に含んで、舌の上に乗せたままゆっくりと口を開く。
赤く上気した顔は艶やかに、見下ろして来るその顔を誘うように撫でた。
程よく苦く甘いその中にアルコールの香りがして微かに目を開く。
「アルコール入りの食べると、副交感神経が刺激されて、リラックスするのと同時に皮膚の感度が上がるんだってさ」
そう言いながらシャツの中に手を差し込んで腰を撫であげると、促されるように脱ぎ去る。
その姿に見とれていると顔が近付いて口付けられた。
「詳しいね、そういう分野得意なの?」
頬に口付け、項に手を這わせてまた口付ける。
熱い手が優しく体中を這い、くすぐったくて身を捩ると無意識に深く息を吐き出した。
「チョコで、脳が興奮した状態、キスと比べて4倍以上も長く続くんだって」
「チョコ食べながらキスしちゃってるから、もっと続くのかね」
その呟きに微かに笑うその顔に口付けて、ゆっくりと服を取り払う。
直接肌が触れて、抱き合ったまま口付ける。
離れては絡み、絡んでは離れてまた絡む。
喋る声も聞こえなくなって、鼻から抜ける甘い息遣いだけが響く。
難しいことはよくわからないけど、と静かな声が聞こえて目を開くと一度啄むように口付けられて前髪を掻き上げられる。
「好きな相手と、リラックスして、チョコ食べて、キスしてれば、幸せってことでいいかな?」
「…いいんじゃない?」
俺も詳しいこと知らないから、と腕を伸ばして頭を引き寄せられると、また深く絡み付いて体が熱くなる。

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