平成生まれの物書き自営業。

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最近の記事

「兄の終い」

私には蒸発したおじさんがいる。蒸発したのにいるっていうのも変な話だけど、わたしが中学生くらいの頃にいなくなったようだ。家族から具体的に何がどうなってと言う話を聞いたわけでもなく、なんとなく、いなくなったんだなと察した。わたしが人生で初めて結婚式に参列したのは、おじさんが結婚したときだった。写真にうつるわたしと妹は、子ども用のドレスをきておめかしをしてとてもかわいらしかった。花嫁さんのウエディングベールを持って歩く大役を任され、緊張しすぎてロボットのような歩きかたになっていたと

    • 愛想笑いしない

      つながらなくても生きていける社会の方が生きやすいに決まってんじゃん。べつにつながってるのが悪いとかじゃなくて必要に応じてつながったり助け合ったり、したいひとはすればいいけど、人とつながる、それ自体がしんどいひとだって世の中にいないわけではなく、無理につながらなくたって自立して生きていける方がいいと思うそれだけなんだけど。なんか、つながりとか良いこと、もちろん良いこととは思うのだが、つながりが良いとされる一方で一人でいたいとか一人の方が楽だとかつながりから外れて生きていたいみた

      • 宝くじを買った話と、3年ぶりに映画館で映画を観た話

        夫の部屋に「5000万円!」「5億円!」と目立つように書かれたポケットティッシュが置いてあり、よく見ると「ハロウィンジャンボ」宝くじの発売を伝えるものだった。人生で初めて宝くじを買ったのは両親が離婚した高校二年生の頃(一年だったか二年だったか、いまだにうろ覚えだ)。かなり精神的につらい日々が続いていたときに、「ここまでしんどい思いをしたのだから、もし神様がいるのだったら宝くじくらい当選させてくれるだろう」と思って、バイト代でたった一枚の年末ジャンボ(300円)を買った。人生で

        • 病めるときも健やかなるときも

          「病める時も 健やかなる時も富める時も 貧しき時も 愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」夫が病んでから、もう百回くらいは頭の中でこの「結婚の誓い」の一節を復唱し、「いや、病めるときは難しいわ」「健やかなときに結婚したんだから病んでるときの想像なんてしたこともないし」とか思っている。病んでいて、自分のことで精一杯で、私が疲れているときに気の利いた一言をかけたり労ったりときに笑わせることができない人を愛するのはまじで難しい。というか、愛とか以前に、目の前の夫を生かすことで精一杯な

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        「兄の終い」

          「頑張る」はスタンダードじゃない

          夫は昨日から入院。朝、二人で娘を保育園に送ってからその足で病院に向かい、入院の手続きを見届けて別れた。「せっかく県内でも大きな病院に入院するんだから、(インスタグラムの)ストーリーズでいろいろレポートしてよ」という私のリクエストに応えるように、夫は病室の様子や食事の写真を撮ってはせっせとアップしていて、それを見るのが私の楽しみになっている。4泊5日の入院合宿のはじまり。 数ヶ月前から家事の分担を見直し、これまで私が担当していた家計の管理(実はこれがすごく苦手だったのだ)、日

          「頑張る」はスタンダードじゃない

          動く光

          夕飯を終えてお風呂に入るまでのあいだ、娘とぼんやりテレビを見たりぬいぐるみを抱きかかえて家の中をお散歩したりして遊んでいた。しばらくして娘がどこかから靴下をひっぱり出してきて「じーぶんでー」と言いながら自分で履こうとするけど今日は上手くいかない。「くつした」と私にヘルプを求めてきたので手伝ってあげると、こんどは玄関からサンダルを持ってきて「くつ はく」「そと」と主張している。片足ずつ履かせて一緒にベランダに出る。19時過ぎ、もう外は暗い。娘は遠くに見える車を見ながら「ぶっぶ 

          動く光

          「この人生を二度と幸や不幸ではかりません」

          夫が今年の6月くらいから総合病院に通っているんだけど、通院し始めたばかりの頃、「病院にいると、見るからに具合が悪そうな人もいれば一見健康そうな人もいて、みんな人知れず身体の不調を抱えながらがんばってるんだなって思ったんだよ」と話していたのがなんとなく印象に残っている。離婚経験がある私の母はそれなりに人生で苦労してきた方だと思うのだけど、可愛らしい見た目と(?)天然っぽいゆるふわな雰囲気から「お嬢様」とか「箱入り娘」と言われることもあるらしく、悩んではいないものの、いつか「なん

          「この人生を二度と幸や不幸ではかりません」

          本当は放っておいても勝手に育つのだろう

          どこかへ行きたい、何かをしたいと思ったときに、ふと「子連れで大丈夫だろうか」という不安がよぎり、「子連れだったらこっちの方が無難なのではないだろうか」と、やりたいことをどんどんダウングレードしながら、もやもやした気持ちになる。「私の人生の主役は私だ!」と大声で叫びたくなる、のだけど。よくよく考えたら子どもから「ニュージーランドより北海道の方が楽でいいよ〜」なんて一言も言われてないんだよね(来年海外旅行にでも行きたいねって夫と話してた)。あくまで大人(親)が勝手に何かを計画して

          本当は放っておいても勝手に育つのだろう

          焼肉食べ放題

          私は幼いころ幼稚園に通い、地元の公立小学校、中学校、高校を卒業して、関東にある大学にストレートで入学した。入学したばかりの頃、同じクラスに1つ年上の人もいれば2つ、3つと年が離れた人もいて少しびっくりしたのを覚えている。それぞれに浪人や留学など理由があった。ずっと東日本で育ち西日本とは縁がなかったので、関西弁を話す人がいたことにも驚いた。彼は奈良県の出身だった。附属高校からそのまま進学した人たちは顔見知りばかりで和気あいあいとして楽しそうで、地方から上京した私に、気さくに話か

          焼肉食べ放題

          びょういんのばあちゃん

          母方のひいおばあちゃんは身体が弱く入院しがちで、といっても恐らく若い頃はそうではなく年をとってからのことだったと思うのだけど、家族から「びょういんのばあちゃん」と呼ばれていた。もちろん入院していないことの方が多かった。私が幼い頃は、病気の影響で左右の太さがごぼうと大根くらい違うびょういんのばあちゃんの脚を見て面白がったり、お小遣いをもらって近所の文具屋へ遊びに行ったりしていた。そういえば、ベッドの枕元にはいつも読みかけの時代小説が置かれていた気がする。ちなみに私自身が子どもを

          びょういんのばあちゃん

          ジャンプの練習

          娘がジャンプを練習しているのを見るまで、ヒトは生まれつきジャンプができる生き物じゃないなんて思っていなかった。立てるようになれば、歩けるようになれば、当たり前に飛べるようにもなると思っていたのだけど、実際は歩き始めてからもステップがあり、足元を見ながら歩いていたのが、だんだん足元を見なくとも上手に歩けるようになる。「ぴょん」とか「じゃんぷ」とか掛け声をするとは飛ぼうとする娘は、上手く弾みをつけられなかったり着地がうまくいかずに後ろにひっくり返りそうになったりしている。「子ども

          ジャンプの練習

          しばらくよく晴れた日が続いていたので、雨が降るとそれはそれで落ち着く。大学に進学したばかりの頃、それが四月末だったのか五月だったのか梅雨の季節だったのかも覚えていないけど、おやすみプンプン他浅野いにおの漫画を一気読みして激沈みしていたのはちょうど雨の時期だった。そのときsigur rosのtakk..にハマっていて、浅野いにおとシガロスのコラボでわたしのメンタルは激沈み、どころか海底二万マイルに到達していた。一週間くらい大学に通わず家に引きこもっていた気がする。今日は朝から雨

          児童館

          打ち合わせを終えて、期日を6日過ぎた本を返却しに図書館へ行った。私が普段利用している図書館は、子が保育園に通い始める前に何度も訪れた児童館のなかにある。返却手続きを終えて予約中の本がいつ頃借りられるか確認したところ、私は140番目の予約者だそうで、貸出期間が一人あたり2週間であることを考えると、私の手元にやってくるのはいつになるのだろうかと気が遠くなった。図書館を出ると、3歳くらいの女の子がお母さんに手を引かれて歩いているのを見かけた。二人は外の休憩スペースに腰掛けると持参し

          児童館

          ローソンのおばさん、初めての孫

          昨日、メルカリで売れた品物を発送するため近所のローソンに行った。レジで手続きを済ますと、伝票の「ベビー用品」という文字を目にした店員のおばさんから「ベビー用品ですか?」と聞かれて(なんでこんなこと聞かれるんだろう...)と思いながら「ベビー用品です?」と答えたら、「ごめんなさいね、いつもは個人情報だし、こんなこと聞かないんだけど。私、つい最近初めての孫が生まれたばかりでね、『ベビー用品』って見てつい気になっちゃって。いまの人はどんなものを使うのかなとか思ってね。ごめんなさいね

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          サンデーモーニング

          昨日は朝も晩も犬の散歩が手抜きになってしまって、飼い主フィルターかもしれないけど夜犬が釈然としない感じに見えたので久しぶりに早起きして(といっても朝7時半だが…)犬を車の助手席に乗せて近所の山に行ってきた。朝8時の山は思っていたよりも人がいて、といっても決して「人めっちゃ多い!」ということではなく、ランニングをしたりウォーキングをしたりするひとをちらほらと見かける程度。それぞれの人たちが日曜の朝を楽しんでいた。自分の予定が変わること、というか自分の予定を簡単に変更可能と思われ

          サンデーモーニング

          初めてのフッ素はケーキの味

          毎晩、子どもが寝たあとは心身ともにヘトヘトになっている。ここ数日、なんてことないブログを書きたいと思いながらなんとなく時間がなくて、寝かしつけが終わった直後は疲れているしお風呂に入ったらはやく寝たくなる。うーん、でも。と思ってお風呂にパソコンを持ち込みこのブログを書いている。特筆すべきことは何もないけど書きたいことがあるっていうのはいいことだと思う。このあいだ取材先に向かうため車を走らせていたとき、人生で初めて運転するアメリカのハイウェイで、それこそ初めての右車線走行で追い抜

          初めてのフッ素はケーキの味