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花が羨ましい烏/ショートショート

真っ黒な姿をした烏が、色とりどりの花壇を見ていた。

花壇にある花たちは、私が丁寧に育てているもので烏が近くにいるのは少しだけどきどきする。

でも、烏はそれを観るだけで咥えたり突いたりはしない。

その瞳は、なんだか輝いているように見えた。

「羨ましいのかな」

いつからいたのか、娘が私の背中に隠れながら言った。

確かに、羨ましいのかもしれない。

私が真っ黒な姿をした烏なら、鮮やかな花たちに憧れるかもしれない。

「カア カア」

見上げると、烏が数羽空を飛んでいた。

花壇を眺めていた烏は、慌てたように飛び仲間に混ざった。

「他の烏は、自分の姿に自信を持ってるのかな」

今度は私がそう言った。

「自信を持ちなさいって言われてるけど、何羽かは羨ましいって思ってるはずだよ。私だってふりふりの服着てる子羨ましいもん」

「そうなの?買ってあげるよ?」

「お母さんわかってないなあ。私には似合わないんだよ」

「似合うと思うけどなぁ」

「欲しいけど、似合わないのはわかってるから。周りもみんなふりふりじゃないからもっと着れなくなるの」

烏もそうだってこと?

意味深なことを考えるもんだな。

「烏も似合うと思うけどなぁ」

「お母さんテキトー!」

「適当じゃないよ、ほんとだよ」

「えぇ〜?」

娘は旦那のカメラを借りているようで、花壇に近づくと写真を撮り始めた。

「お母さんはね、チューリップみたいな黄色が似合うと思うんだぁ」

「似合わないよ〜」

「ひひ、私もお母さんも烏と一緒だねっ」


「そうだね」

娘は見て〜と写真を見せてくれた。

そこに写っていたのは、鮮やかな花たちと青い空を飛ぶ真っ黒な烏だった。

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