見出し画像

「Black Lives Matter」 × 「ディズニー」


2020年6月、アメリカのディズニーランド・リゾート及びフロリダ・ディズニーワールドが、「スプラッシュ・マウンテン」のテーマ変更をすることを発表しました。


ちょうどその頃話題になっていたのが、この事件。

これが着火剤の1つとなって、「#BlackLivesMatter」が多く取り上げられたことも記憶にあると思います。




「スプラッシュ・マウンテン」と「#BlackLivesMatter」

では、なぜこの2つが関係しているのか?を簡単に解説していきます。


「スプラッシュ・マウンテン」は『南部の唄』という映画の中の一部を基に構成されています。

『南部の唄』は、リーマスおじさん(黒人の男性)が、ジョニー(白人の男の子)に、昔ばなしを聞かせるというもので、その話の1つに「スプラッシュ・マウンテン」のストーリーがあります。

その原作は、『リーマスおじさんの唄と言葉/南部農園のフォークロア』です。この作品にも、上記のような黒人男性と白人男子が話し合うシーンがあります。
このシーンには、当時起こっていた黒人差別を皮肉的に描いています。しかし、『南部の唄』にそのメッセージが十分に含まれていませんでした。

米国の黒人地位向上協会は、『南部の唄』に対して

この映画の時代背景において、黒人の男性と白人の男の子が対等に話をするということは有り得ない。これは、間違った認識を招きかねない。

と批判しました。

この影響もあってか、現在では『南部の唄』を観ることはとても難しいです。DVDやブルーレイなどの販売は行っていませんし、公式動画配信サービス(ディズニー+)でも配信されていません。

ここまでの話は、「#BlackLivesMatter」が注目される前に起こっていたものです。

つまり、事件によって、この件が再熱し、「スプラッシュ・マウンテン」のリニューアルを希望する声が挙がったのだと考えられます。




なぜ『プリンセスと魔法のキス』なのか?

なぜ『プリンセスと魔法のキス』が採用されたのかは、いくつか説がありますが…

1番有力なのは、『プリンセスと魔法のキス』がディズニー初の黒人プリンセスだったからだと思われます。
また、映画としての評価も高いためでもあったと言われています。

「#BlackLivesMatter」にとっても、良かったのかもしれません。

ただ、ここで注意していただきたいのは、この計画は黒人殺害事件が起こる前(2019年時点)で決まっていたと、ディズニー社は発表しているため、直接的な関係は無いかと思います。




東京ディズニーランドの「スプラッシュ・マウンテン」はどうなるのか?


東京ディズニーリゾートはこの件に関して「検討中」と発表しています。

ここからは、私個人の意見ですが、難しいと思います。
この後は、その理由を紹介します。




理由① エリアにおけるストーリー

東京ディズニーランドの「スプラッシュ・マウンテン」は、《クリッターカントリー》というエリアにあります。
《クリッターカントリー》には、壮大なバックグラウンドストーリーが存在します。

クリッターカントリーには、6つの施設があります。
 ①スプラッシュ・マウンテン
 ②ビーバーブラザーズのカヌー探険
 ③スプラッシュダウン・フォト
 ④フート&ハラー・ハイドアウト
 ⑤グランマ・サラのキッチン
 ⑥ラケッティのラクーンサルーン
これは、すべて繋がっています。

昔、クリッターカントリーにはチカピンヒルと呼ばれる丘が広がっていました。
そこには、建築家のビーバーブラザーズ(クラレンスとブリュースター)が作ったダムがありました。
その近くで、アライグマのラケッティが密造酒を作っていました。
ある日、密造酒の工場の蒸留器が爆発して、ダムが決壊し、丘は水浸しになりました。
そして、そこにできた山を「水びたしの山(スプラッシュ・マウンテン)」と呼ぶようになりました。❶

その後、元気が無くなってしまった動物たちのために、ビーバーブラザーズが廃材を使ってボートを作り、カヌーができるようにしました。❷

また、この事件を反省し、ラケッティは密造酒を作るのを辞め、ジュースを販売するようになりました。❻

この他にも、動物たちは立ち直るために、いろいろなことをしました。
ネズミのサラおばあちゃんは、手料理を振る舞います。このレストランを建築したのも、ビーバーブラザーズです。❺

そして、スプラッシュ·マウンテンに乗った人のために、ホタルのフィニアス・ファイヤーフライが自分のお尻の光をフラッシュとして撮影をするようになりました。❸

ちなみに、これら小動物たちには隠れ家があります。❹


このように、「スプラッシュ・マウンテン」は、単体のアトラクションではなく、エリア全体を巻き込んだ1つのストーリーで成り立っているのです。

そのため、1つのアトラクションだけを変更することは、とても不可能に近いのです。
エリア全体を変更するとなると、相当な金額を要することとなり、すぐには実行できません。

(参考)
クリッターカントリーの総工費:約285億円
ビッグサンダー・マウンテンの総工費:80億円
タワー・オブ・テラーの総工費:210億円



理由② アトラクションの位置

理由①で、ストーリーが関係しているために変更が難しいという話をしましたが…
現在時点で変更が発表されているパークはどうなのでしょうか?


カリフォルニアにあるディズニーランド・リゾートの「スプラッシュ・マウンテン」は、クリッターカントリーというエリアにあります。
このエリアは、元はベアーカントリーという名前でした。昔は、『くまのプーさん』のアトラクションがありました。

フロリダにあるディズニーワールドの「スプラッシュ・マウンテン」は、フロンティアランドというエリアにあります。
(フロンティアランドは、日本でいうウエスタンランドです。)
他のパークとは違うエリアにあることが分かると思います。


どちらのパークも、既存のエリアに追加して作られたため、日本のパークのようなストーリーの深さがあまりありません。

このことも、理由①に加えて、日本のパークだけが変更できない理由になると言えると思います。



理由③ 『プリンセスと魔法のキス』の舞台

『プリンセスと魔法のキス』の舞台はニューオーリンズです。そのため、『プリンセスと魔法のキス』のアトラクションを作るとしたら、そのエリアもニューオーリンズがテーマとなるはずです。

しかし、同パークの《アドベンチャーランド》に、ニューオーリンズをテーマとしたエリアが存在します。
(シアターオーリンズ周辺です)

そのため、同じ場所をテーマとしたエリアが重複してしまいます。



理由④ 日本における『プリンセスと魔法のキス』人気

人気を表す指標として、映画の興行収入で比べてみます。

比べるのは、今、東京ディズニーリゾートに1つの映画だけでエリアを持っているものです。

『プリンセスと魔法のキス』
日本:約4.6億円
米国:約1.04億ドル
世界:約2.69億ドル
『アラジン』(アラビアンコースト)
日本:約25.0億円
米国:約2.17億ドル
世界:約5.04億ドル
『リトル・マーメイド』(マーメイドラグーン)
日本:(正確な数値が見当たりませんでした)
米国:約1.11億ドル
世界:約2.11億ドル


また、『アラジン』や『リトル・マーメイド』には続編が何本も出ているという点もあります。
この2作品は、実写版も製作されていますからね。劇団四季さんのミュージカルにもなっていますし…

影響力は桁違いだと思います!

以上のことから、『プリンセスと魔法のキス』単体に、エリアを任せるのは難しいのではないかと考えられます。



まとめ

今回は、「スプラッシュ・マウンテン」をメインに記事を書いてみました。また、「もし東京ディズニーランドのスプラッシュ・マウンテンが『プリンセスと魔法のキス』のアトラクションにリニューアルされることになったら?」という視点で書きました。

とはいえ、これは単なる一個人の意見にすぎませんので、公式からの正式発表を待ちましょう。


最後にウォルト・ディズニーさんの言葉を残しておきます。

「ディズニーランドは永遠に完成しない。世の中に想像力がある限り、進化し続けるだろう」




【参考文献】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?