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"貴方は貴方の生命だけを輝かせて"

はしがき

この曲は個人的に非常に思い入れが深い。
リリース当初に聞き、それがミセスとのファーストコンタクトとなった曲であるからだ。
私は今大学生なのだが、この曲のリリース時はまだ小学生。歌が好きな父に連れられて行ったカラオケにて広告として流れていたのがこの曲だったのだ。
というわけで今回は「鯨の唄」について書いていこうと思う。

曲説明

この曲は、2017年1月11日発売の2ndフルアルバム「Mrs. GREEN APPLE」の6曲目に収録されている。作詞作曲は大森元貴(Vo./Gt.)。

この曲の特徴ともいえる、音域について調べてみたところ、

地声→ mid1D(D3) 〜 hiC(C5)
裏声→ hiD(D5) 〜 hiG(G5)
(一般的な男性の音域が mid1A 〜 mid2G、
一般的な女性の音域が mid1F 〜 hiD)

https://vocal-range.com/archives/21811196.html
「J-POP 音域の沼」より引用

とのことであった。
こんな難しい楽曲を、大森さんは20歳の時にリリースしており、一説によるとこの曲の歌詞を中学生の時に書いたとのこと。驚愕。

歌詞について

さてここからはただのオタク語り。
歌詞を引用しつつ語っていこうと思う。

1番Aメロ〜サビ

散らばっちまった アイデンティティーが
気付かぬうちに 形になった
光を纏った水しぶきが
時間をかけて落ちるのを見た

以前読んだ記事にこんな発言があった。

YouTubeとか試聴サイトで、はじめの30秒くらいしか聴けない場合などがありますよね。それに全く知らない人の曲を聴くときに、サビまでの30秒って、けっこう長い気がするんです。その30秒を待たせるくらいなら、Aメロからつかみにいきたいなという気持ちはあります。

http://musicschool-navi.jp/columns/feature/keion_v4_interview_2.html
「ミュゥスク interview 大森元貴/Mrs. GREEN APPLE」
より引用。

この記事を読んだうえで、改めて曲を聞いてみると「してやられた」という気持ちが湧いた。もちろんいい意味で。
まさにAメロから心を鷲摑みされたのだった。
情景をこんなにきれいに表現できる大森さんの目にはどんな風に世界が見えているのだろう。知る由もないのだが、知りたいと思った。

何気ない日々の夜に
ひょんなことから迷いこんだ
見慣れたものは 何一つ無いな
「どうやって僕の居場所に気づかせよう」

Bメロ部分。
サビへの高揚感とともに、主人公(鯨?)の見慣れないところに迷い込んでしまった、といった不安が感じ取れる。この曲の好きなポイントだ。

手を挙げて 叫んでいるのを
誰かがきっと見ているから
怖がらないで 貴方は貴方の
生命だけを輝かせて

待ちに待った1サビ。
主人公が鯨だとすると、『手を挙げて叫んでいる』というのはクジラの潮吹きのことだろう。人間に見つけてもらおうとしているのだろうか。
人間に対してのエールとして受け取ると、まるでこれは「あなたは一人じゃないよ、あなたが頑張っているのを誰かは必ず見ているから不安がらないで」という風に言っているように感じた。

ここで間奏を挟み、二番へ突入する。

2番Aメロ〜サビ

奪われちまったバイタリティーが
気づかぬうちに 形になった
汚れを纏った言霊が
時間をかけて澄んでいくのを見た

バイタリティーとは、いきいきとした生命力や活気のことを言う。
活気を奪われて、それが(言葉という?)形になる。汚れをまとった言霊(悪口か?)が時間をかけて浄化されていく。

なんとも人間社会を凝縮したような歌詞だなと感じた。

この"時"に抱く感情を
言葉にするにはもったいないな
失わぬように 傷つかぬように
盾と剣を握りしめた
僕の世界と

もうなんと言ったらいいか分からないが、私はこの歌詞が1番好きである。

『汚れをまとった言霊』をぶつけられた時に抱く感情(大半が悔しいだとか悲しいだとか、そのような感情だろう)を口にしてしまえば、ぶつけた側にとっては「してやったり」なわけだ。
だからこそ『もったいない』。
昨今の誹謗中傷の問題と示し合わせてみると「命を『失わぬように』、心が『傷つかぬように』、『僕の世界』を守るために、訴えたりする手段である『盾と剣を握りしめた』…と考えると少しグッとくるところがある。

考えすぎかもしれないが、私の解釈は上記のようなものだった。

手を挙げて 銃声が響いた
誰かがきっと泣いてるから
怖がらないで
掲げた誓いを果たすために戦ってくれ

2サビ。1番とは打って変わって、主人公は人間だろう。
舞台は紛争などが起こっている地域だろうか。
またはインターネットの一部分だろうか。
『手を挙げて 銃声が響いた』を考えた時、降伏のポーズが浮かんだ。降伏のポーズをしているにも関わらず銃声が響く。相当治安が悪いか、やはり紛争地域が舞台なのか…
『掲げた誓いを果たすために戦ってくれ』の部分から想像するに、伝えている相手は新人の政治家などなのか、はたまた大統領なのか、、、公約を掲げる人物なのだろうとは思うのだが、私の想像力では分からなかった()

落ちサビ〜Cメロ

さて、この後は落ちサビがあるのだが。
1サビとほぼ歌詞が同じなため省略させてもらおうと思う。

いよいよラスサビ。

いつまで 悲しんでいるの?
ここでちゃんと見てるから
もう泣かないで 霧が晴れたら
虹の元へ歩いてみよう

ここで一旦1番と2番を振り返ってみよう。
1番はタイトルの通り、主人公はクジラであると考えて良いだろう。
2番は打って変わって人間が主人公であると考えられる。

ではラスサビは?
ラスサビも人間が主人公であると考えるが、舞台はガラッと変わり天国、または死後の世界だと考える。

『いつまで 悲しんでいるの?』
『ここでちゃんと見てるから』
と、死後の人間が家族や友人に対して優しく諭しているように聞こえる。

『もう泣かないで 霧が晴れたら 虹の元へ歩いてみよう』
死ぬということを虹の橋を渡る、と表現することがあると思う。それに絡めて、「虹の元へ歩いてみたら、もしかしたら会えるかもよ?」
と励ましているように聞こえるのだ。

人に寄り添った歌詞。なんとも大森元貴らしいと感じた。

雨が上がった
空が見えたら
傷が癒えたら

歩いてみよう

Cメロ部分。
言うまでもない。
心に傷を負って立ち止まってしまっている人間に対して、「雨が上がったよ、もし空が見えたら、その傷が癒えていたら。1歩ずつでもいいから、歩いてみよう」と背中を押してくれるような言葉でこの曲は幕を閉じる。

曲を整理してみての感想

思ったこととしては、「たった6分の曲で、こんなに長文が書けるのか…」だった。
曲としては割と6分は長い方だと思うが、単純に考えてみてほしい。6分。1時間の10分の1。

この記事を書き始めたのが6/19。
書き終えたのが6/27。

1週間かかった。(まあこれが1週間かけたクオリティかと言われたらそうでは無いと思うが…)
本当に考えれば考えるほどたくさんの考えが浮かんできて、まとめるのに苦戦したのだった。

気づけば3000文字に近づいている。
書いてみて、とても楽しかった。
曲を聴くことに対しての姿勢がガラッと変わったように思う。
次はどの曲にしようか、もうすでに考え始めている。

もし良ければだが、次の記事も読みに来て欲しいと思う。
それでは、また。

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