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デザイナーを8年やって気づいた「デザイナーの本質的な強み」

こんにちは、MOCKSモリシゲです。Twitterで「デザイナー8年やって思ったこと」をツイートしたところ、ありがたいことに1800いいねの反響があったため記事にしました。

デザイナー以外の方にとっては、デザイナーはいかにも芸術家のようなイメージがありますが、デザイナーを経験してみてそれは誤解だと気づきました。

本質的には「情報を整理し、問題を最適化する能力がある職業」と言えると思っています。

本記事は、私がデザイナーを8年間経験してみて気づいた「デザイナーの本質」について、9つの観点から説明しています。

ツイートでは文字数の関係で書ききれなかったので、そのコンプリート版という形で書かせていただきました。


1. 「情報整理」に長けている

デザインの本質の1つである「情報整理」は、どこでも応用が聞くので、経営やPO(またはその補佐)として配置すると、複雑な課題を最適化してくれます。

なぜ情報整理が得意なのかというと、デザイナーはただ文章や図形をおしゃれに並べているわけではないからです。

デザイナーは常に情報をこのように捉えている
  • この情報とこの情報は似ているから近くに置いたほうがいい

  • 言いたいことが混在しているから、文章を複数に分けたほうがいい

  • 一番言いたいことはこれだから一番目立つように表現しよう

  • これは大事な情報ではないから消すか、小さくしよう

…といったように、情報をしっかり読み込んで、情報が持つ意味だけでなく、優先順位やグループを意識して、デザインをしているからです。

このようなことを日々の業務で当たり前のように行っているため、情報整理の能力が高くなっていきます。

2. 「違和感」に気づく

デザイナーはなにかをデザインするときドット単位・ミリ単位でミスを探します。文字と文字の間のスペースなど、見えない部分に関しても神経質なほどです。

このような繊細な訓練をしているので、違和感や間違いに気づきやすい能力があります。

例えば、自社のプレスリリースやブログで炎上しそうな文章や画像があったとき、他の職種よりもデザイナーが先に気づいていることがよくありました。

このようなミスに気づく特性を活かすなら、情報公開の確認フローにデザイナーを置けば、リスクヘッジにつなげられると思っています。

デザインの強い会社では「情報公開前にデザイナーが審査する取り組み」がある会社もあります。(モリシゲが過去勤めたVisionalさんでも似たようなものがありました。)

3. 「緩衝材」になる

デザイナーはユーザーの意見、開発要件、経営要件など聞きまわった上でようやくアウトプットする生き物です。

ゆえに、ステークホルダーの多いところでディレクションを任せると活躍してくれます。プロジェクトマネジメントにも向いています。

デザイナーは常にいろんなひととコミュニケーションをとっている

弱点としては、いつも板挟みなので、やさしくしないと精神的に追い詰められてしまいがちです。デザイナーに理解のある会社では、活き活きと働けるような環境づくりをして、精神的なサポートをするようにしています。

4. 「職人気質」と「プロフェッショナル」がいる

「職人気質」と「プロフェッショナル」は似ているようで全く違います。

デザイナーは技術職なので、こだわりが強い方が一定数います。
そのような「職人気質」のデザイナーは、こだわりが強い分、個人能力が高いことがほとんどですが、ワガママで意見を曲げないことが多く、チームの生産性を大きく低下させます。また本来の目的とは別に「そのデザイナーを納得させること」という非生産的な目的も生まれてしまいます。

職人気質の方は「自分は仕事ができる人間だ」と信じているし、アウトプットのクオリティも高いので、マネージャーによる説得も困難であることが多く、諦めて異動させるにしても誰とも関わらないようなポジションはなかなか用意できません。

どのデザイナーも少なからず「こだわり」をもっていますが、ビジネスはチームワークです。相手の意見を取り入れる姿勢を持ち、達成したい目的のために自分のこだわりをも捨てられるのが「プロフェッショナル」です。

採用や人事評価などでデザイナーを見極める場面で、この観点は意識しておくとよいと思います。

5. 「効率化大臣」になれる

デザインの作業というのはとてつもなく面倒な作業です。プログラムでどうにかならないことが多いので、さまざまなプロセス改善を行って、効率化しようと努力している人が多くいます。

またその面倒さから、ツールやプラグインをたくさん使用する職業でもあると思います。デザイン以外の場面でも効率化できるツールを知っている可能性があります。

ビジネスプロセスなども機械やAIではどうにもなりません。このようなことを見直すときにデザイナーは役に立つと信じています。

6. 「エモい」人が多い

デザイナーはそもそもデザイン自体が好きな人が多くいます。
そのため、美術、読書、絵画、映像…などに造詣が深く、感受性や表現力が豊かな「エモい」人が多い印象です。

このエモを作る能力を活かすとしたら、例えば、
「経営者の熱いメッセージをうまく表現したい!」などの場面です。
このような場面でデザイナーを起用すると、文章をエモくしてくれ、 グラフィックでの表現もできるので、より伝わりやすく、共感しやすい内容にしてくれます。

7. 「付加価値」をつけられる

デザイナーはなにかものをデザインするときに、自分なりにアレンジして、「もっと良くならないかな?」と試しています。

プロダクトだけでなく、仕事そのものにも「こうやったらもっと楽しくなるのでは」と付加価値をつけてくれるときもあります。

例えば、「社員同士で知見を交換したい」「交流を増やしたい」といった場合、すぐに思いつくのは「勉強会」ですが、それではつまらないし、参加者も増えません。

デザイナーがいれば「フェス感(お祭り感)」を出して、楽しみにながら勉強できる環境をつくれます。実際、以前勤めていたマネーフォワードさんのデザイン組織ではそういった取り組みを行っていました。

8. 「具体」と「抽象」の変換に強い

デザイナーは、具体と抽象をよく変換しています。

具体化は「つまり」、抽象化は「だいたい」
  • 抽象的な意見をきいて、具体的なグラフィックにする

  • 具体的で細かい文章を要約して、抽象的なグラフィックにする

といった作業をしているので、考えがまとまらない会議などでファシリテーターを務めると活躍しやすいと思います。

例えば、

「今、○○さんが言ったことって図で表すとこういう感じですか?」
(即興で図を書いて見せる)

「かなり複雑なので他の方だとわかりにくい気がします。○○という一言のメッセージで伝えて、まずは概要だけ理解してもらう方向ではいかがでしょうか?」

……といったようなアクションを行って、認識の共通化や、サマライズに一役買ってくれます。

9. 「社内文化」を作る人材になれる

ここまで紹介した1〜8を総合すれば、デザイナーには会社のビジョンを言語化し、より社員にわかりやすい表現に変換できる能力があると思います。

会社や仕事に付加価値を生む特性と、多方面からの意見を収集できる能力を合わせれば、社員が喜ぶ、働きたくなるような文化へと昇華させられます。

そういった「社内文化」をつくるポテンシャルがデザイナーにはあると思っています。

経営者、デザイナーを目指す方、デザイナーの方

日本ではまだまだデザインが産業競争力になる事例が少なく、海外に遅れをとっている状況が続いています。

そのため、経済産業省は「デザイン経営宣言」を掲げ、「デザインをもっとビジネスに活用しよう」と政策を進めています。

もしこれをお読みになっているあなたが経営者でしたら、デザイナーを経営会議のメンバーに加えるなど、デザイナーの経営参画に挑戦してみていただきたいです。

そして、引用RTにもありましたが、本記事はデザイナーの取扱説明書にもなっているので、これからデザイナーになりたい方は「自分は何が強みだからデザイナーに向いているか」を考える材料にしていただければと思います。

現役でデザイナーの方は、デザイナーがもっと活躍する会社になるように、社内チームなどで展開していただければ、とても嬉しく思います!

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