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ALife2020でArt in the Science Awardを受賞しました

人工生命の国際会議 Alife2020 に出展した Blind Painter という作品が、シンプルな仕組みでありながら複雑なふるまいを創発できるアイデアを評価されて Art in the Science Award を受賞しました。

Blind Painter

Blind Painter は人工生命を種族ごとに色分けして軌跡を表示することにより、その種族の分布を可視化できるようにしたジェネラティブアートです。

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新たな種が生まれる一方で領土を追われて衰退していく種もあり、全体としては常に移り変わる営みを観察できます。

ブラウザで実行可能な状態で公開しており、こちらのリンクから動かしてみることができます。

Blind Painter の人工生命

軌跡を非表示にして人工生命のみを表示すると、生命個体を表すドットがフィールドに置かれているのを見て取れます。

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この人工生命は、『自分の遺伝子配列』と『餌にできる相手の遺伝子配列』だけを持つシンプルな生命体です。

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他者との関係を遺伝情報によって相対化しているために特定の種が一強になってしまうことがなく、変化し続ける生態系を実現しました。

このようなシンプルな構造とそこから生まれる複雑さの対比が Blind Painter の特徴であり、今回評価された部分です。

制作の背景と人工生命のおもしろさ

現実のものであるか人工のものであるかを問わず、生命のおもしろさには観察と発見があります。
わたしはその観察可能性を求めて人工生命をつくっています。
しかし、進化的計算によって自己複製する人工生命をつくっても、最適な自己複製パターンに陥ってそれ以降進化しなくなってしまうことがよくあります。

その問題を回避するための試みのひとつが Blind Painter です。
Blind Painter では生命同士の関係を遺伝子によって定めることで、ある種が優勢になってもその天敵となる種の誕生により優位が崩れ、結果として生態系が変化し続ける仕組みを実装しました。

単純な仕組みですが、そこから生まれるパターンを観察するとさまざまなふるまいが発生していて見ていて飽きません。
繁栄している種を捕食することで勢力を広げる種や、逆に繁栄している種の食べ残しをかすめて個体数を増やす種、カニバリズムで生殖サイクルが早まることで瞬時に新種を生み出す種など、自分の遺伝子と他者の遺伝子の組み合わせの分だけ戦略があります。

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つけっぱなしにして飾ると絵になる

#404美術館 にも投稿しています。

ALife2020

出展した ALife2020 は人工生命研究に関する国際会議です。本来はカナダのモントリオールで行われる予定でしたが、今回はコロナの影響でオンライン開催になりました。
チャットベースのコミュニケーションは非英語話者としてはありがたかったです。

受賞した Art in the Science は研究過程で偶然生まれた芸術を扱うテーマで、生命性から生まれる美の探求と、人工生命研究の活性化を目指しています。
人工生命の研究を社会にどう役立てていくかは課題があるようで、大きく時間を使って議論がなされていました。

オンラインギャラリー

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表彰の様子

おわりに

Blind Painter は生命同士の関係を相対化することにより、ふるまいの複雑さと変化し続ける生態系を実現しました。
今回のALifeではそのコンセプトに対して議論ができて、また同じ専門範囲の方と繋がりをもてたのが大きな収穫でした。

ありがとうございました!


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