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台風の目

「頑張れたほうがいいに決まってるじゃないか。」
藤崎彩織さんの著書、ふたごの中で月島は夏子に
言う。
頑張ることよりも頑張れないことのほうが
つらい、、、。

発売されてすぐに自転車でTSUTAYAに行き、
貯めていたお小遣いでふたごを買った私は、
時間がかかりながらも大切に読んだ。
13歳の夏休み。

バスケットボール部で
来る日も来る日も練習に明け暮れ、
頑張りすぎてキャパオーバーに
なりかけていた私には
「頑張れたほうがいいに決まってるじゃないか。」
という月島の言葉の真意を理解することが
できなかった。

頑張っても頑張ってもうまくいかなくてつらくなることは分かる。
朝から晩まで一生懸命練習しても、シュートが
入らなくて涙が出るし、
体力をつけるための基礎練習は、
こんなの死んだほうがましだ!
と思うぐらいしんどい。

頑張れないなんて、頑張ればいいだけじゃないか。そう思っていた。

しかし、高校生になって、さらに大学生になって、
その考えは変わっていった。

挑戦を始めるとき、最初の1歩目を
なかなか踏み出せない。
慌ただしい日々に流されて、全部中途半端になってしまう。

そんな時「頑張れていない」と感じる。
すると、「頑張れていない」ことに対しての
焦り、不安、憤り、時には諦めさえも顔を出す。

動揺する世界の中で一人夜道を歩いている時、
台風の目のように自分の心が静まり返る瞬間がある。
私の日々はめまぐるしく動き続けているのに、
ある夜、こころが止まってしまう一瞬を経験した。
無条件に私を照らす月光も行き交う
車のヘッドライトも、
傷を照らし出されるようで居心地が悪い。

私は今、何1つ頑張れていない。

頑張らないと、頑張らないと、
と自分に言い聞かせると涙が頬を伝ってくる。

私はどんな人になりたかったっけ。
どんなことがしたかったっけ。
夢は何だったっけ。
ゆっくりと自分と対話して
不安をぬぐい切れないまま眠りにつく。

そんな夜を過ごしても、朝になれば心は少し軽くなっている。
そんな日々を繰り返しながら、
少しずつでも踏み出してみることが大切だと
知った。
踏み出してみると、
同じ道を歩む仲間に出会ったり、
追い風が吹いて一歩が軽くなったりする。

新しい挑戦をすることで新しい気付きがある。
自分の弱い部分を知った私はきっと少し強くなれている。



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