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【書籍】よくわかる浄土宗

私は特定の宗教に対して全く関心がない(いわゆる無宗教)のだが、話しをしていてちょっと気になったので、さわりだけでもと思い手にとった本書。

「極楽」といえば、人々が求める快楽の限りを尽くしたという意味に解される。しかし、その真の意味は快楽が尽きた世界、つまり、世俗的な快楽にはまったく興味がなくなる世界なのである。

p26

そもそもの前提から間違えていた。。極楽に行くために念仏(南無阿弥陀)を唱えるのは、なにもなにの苦もない快楽の世界へと行けるためではなく、欲にまみれた現世(娑婆:しゃば)で特別な修行をせずに煩悩をなくし、悟りの世界で安住することであったのだ。

なお、浄土とは「悟りを開いたブッダの住処で、悟りを目指す菩薩の住処でもある(p32)」とのこと。さらには「浄土は極めて荘厳な美しい世界であるという(p33)」とあるように、

絶対的に正しい道を知っている釈迦は、絶対に迷うことなく目的地に達することができるというのだ。(中略)仏教の教えに従って生きれば常に正しい方向に向かって進み、決して迷うことはないのである。

p16-17

人生は分岐点はすでに決められて、そこまでに進む道順の選択を私たちはしているだけにすぎない、という考え方もある。一方で、迷いが生じたとき仏教の教えに従っていれば、正しい方向へと進めるという。それ(正しい道)が楽しいかどうかは別にして。


『般若心経』は「仏(陀)が説いた智慧の完成(到彼岸)のための偉大な智慧を説いた経典」となる。
『般若心経』の「色即是空」というフレーズは有名で、この経典は大乗仏教の思想の根幹の一つである「空(くう)」の思想を説いたもの(中略)、「空」とは世界に存在するすべてのものに固定的な実体(特定の物質)がないことである。

p143

仏教でいう「色」はすべての存在のこと。それが固定的な実体がないというのが「空(くう)」の思想である。

p144

実体がない=すべてのものはいずれ消滅する。

『般若心経』は世の中の存在の本質は「空」だから、それにとらわれるな。とらわれなければ、すべての悩みや苦しみから解放されて平穏な日々を送ることができると説くのである。

p144

色即是空 空即是色。特に「空(くう)」の説明としては、以下が理解しやすかった。

上記にもあるように、あらゆる物質(=色)は、特定の物体として存在している訳ではない=ある状態によって保たれている=固定的なものは存在しない(=空)。

錬金術では、あらゆる物質は四大元素(風、土、水、火)で構成されているとあったように、現代においてあらゆる物質は原子によって構成されている。

自性がないからこそ世界にはあらゆる姿をした物体が存在できているとみることができる。

https://www.zen-essay.com/entry/sikisokuzeku

また、色即是空だけでは空の概念は不十分であり、「空即是色」とセットで扱うことによって意味を成すものであると上記の記事では指摘している。


固有に定まったものなどこの世には存在しない。しかし、定まっていないからこそ、さまざまな存在になり得ることができる。

信仰心はなくとも、アート的に仏教的思想は面白いかもしれない。ほかの宗派だと、また違った側面がみえるのかもしれない。

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