Jesse Prinz, Emotion and Aesthetic Value
PrinzのEmotion and Aesthetic Valueを読んだのでメモ
The Aesthetic Mind: Philosophy and Psychologyの5章に収録されている。
https://www.amazon.com/Aesthetic-Mind-Philosophy-Psychology/dp/0198705921
また、下記からも読める。
本稿の目的
美的評価(aesthetic appreciation)がどのような心理状態なのかを議論すること。
方法論、議論の進め方
議論の進め方は次の2ステップ。
方法論的な注意点としては、次の二つ。
これは、Prinzの専門性と時間的な限界があるから。
まず、第一章で情動が美的評価に関与しているということを示唆する。
ここでは、自分の内観(introspection)と神経画像処理分野の研究を使いつつ実証していく。
そして、第二章では、具体的にどのような情動が関係しているのかについて検討していく。
第二章は、第一章に比べて推測が多めの内容になっている。
美的評価の候補として挙げられる、快(pleasure)、称賛(admiration)、興味(interest)を検討していき、最終的に驚嘆(wonder)ではないかと結論づける。
結論
美的評価とは情動的な状態であり、驚嘆の一形態(appreciation is a form of wonder)であること。
美的評価は次のようなプロセスで進む。
美的評価の反応段階と評価段階をもう少し詳しくみる。
反応段階
作品を知覚し、その特徴に反応する段階
多くの場合、全く意識していない知覚的な要素によって引き起こされる
より美しい顔はより平均的な顔であり、他の物質についても同じである(Hekkert and Van Wieringen 1990; Langlois and Roggman 1990)
知識や信念によってトップダウンで影響を受けることもある
その絵が特定の方法で作られた(例えば、人間の髪の毛で作られた)ことを知っていたなら、より興奮するかもしれない
時代によって、人々がどのようにモナリザを見るのかが劇的に変わったことがある(Boas 1940)
評価段階
作品から引き起こされる反応を、自分の美的価値観に照らしあわせて考える
Prinzが考える美的価値
長期記憶に保存され、図式化されるもの
もし作品Wが特徴Fを持っているなら、その限りにおいてWは程度Nに良い (if a work W has feature F, then, to that extent W is good to degree N)
評価の段階でより多くの背景知識を取り込む
「その作品はオリジナルなのか?」「美術史上の他の作品と関連があるのか?」など
評価は情動的なプロセスだと考えている
作品の良い特徴と悪い特徴は、情動という単位で集計され、その総合値や強度が作品との出会いから受ける全体的な情動を構成する
自分がどういう立場をとるか
目的
美的評価とは何かを考えるのに、評価対象の特徴ではなく、評価それ自体の特徴から検討したのは面白い
方法論、議論の進め方
疑問が残る部分もある
Prinz自体も指摘しているが、美的反応に関わる情動と美的評価に関わる情動はどう違うのか
情動が美的趣味(taste)と関係していることを説明している部分があるのだが、下記の3.4の流れは本当か?と思う
1. たとえば、ある絵画に感動したとき、「もし他の人がそれに反応しなくても絵画は美しいままですか」と尋ねられたとする
2. そのケースを考えると、私たちは絵を想像し続けることになり、絵を想像している限り、私たちは良い気分になる
3. 良い気分になると、その絵画は本質的に良いものだと考えるようになる
4. そして、もし作品が本質的に良いものであれば、客観的な美的事実が存在するかもしれないと考える
結論
驚嘆が美的評価を構成しているという結論は有望そう
すごく良いなと思う絵をみたときの、胸がじわーっと温かくなる感じや、口がぽかっと開いてじっと絵をみてしまう感じが驚嘆から構成されているのは実感がある
驚嘆は「生物学的に基本的な情動を、文化的に精巧に拡張したものだ」という考え方が面白い
「絵をみたときの感動」を研究していくときに、感情からのアプローチは良さそう
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