第9回 ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!【朽羊歯ゾーンのWoundTube】
ドラえもんはたあげ!!!!!!
ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!
ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!!!!
By the way, 人間ジュークボックスがやりたい。
私が小さいころ、父が言っていたのだ。文化祭の出し物で「人間ジュークボックス」をやった、と。
それはジュークボックスを模した箱に入って行う展示で、お客さんが指定した歌を中の人が歌うというものだという。
妙に強く印象に残っている。
やりたい。虚栄心を満たしたい。顔を出さずにウケを取れるのである。歌にはある程度自信があるし、自信の根拠は「上手に歌える」というよりは「いろいろな曲をいろいろな発声法と音域で歌える」というものだ。知らない歌を勘で歌うというのも程よい難易度の大喜利っぽさがある。
響きもいい。「ジュークボックス」というアイテムも昭和っぽくて好みだ(の割にどんな見た目かいまいちピンと来ていないのだが)。
好きすぎて、バトルマンガだったら「ジュークボックス人間」になりたいと思っているほどだ。
ジュークボックス人間の頭の中には、常に自分の知っている曲がランダムで流れている。曲に関連する能力を使えるし、同じ曲でも解釈次第でいろいろな能力になる。ただし、曲が変わるたびに別の能力(そのたびに脳内で定義し直す必要がある)が発動するため、「長時間飛行し続けなくてはいけない」「波動やビームをぶつけ合って押し合っている途中に曲が変わった」などの状況ではとっさの判断が求められるピーキーな能力である。戦闘序盤に癒し系の曲が連続で出た場合は、何とか脱構築換骨奪胎コペルニクス的転回をどんがらがっしゃんこして、守りや攻撃の能力に転化させなくてはならない。さらに、音漏れがないとはいえ常に曲が流れているため、魔力だかMPだか知らないが、とにかくそういう力の消費が激しい。あと、多分ジュクジュクの実を食べる必要があってなんか嫌だ。そんな実食べたくない。膿んでそう。(と思って調べたらもうありましたごめんなさい途中までしかONE PIECE読んでないのです。)
実際、私の頭の中には常に何か(言葉・最近の映像・音楽など)が流れている。情報量(主に音)が多いと疲弊する体質で、さらに情報が入ってきやすい(主に音と文字)体質を併せ持っているので、体力の消費も激しい。音楽は戦い(といっても、勉強など)のときに自分を無理やり鼓舞するためのものというイメージが強いので、聴くとバトルを連想する。それぞれの曲に関係する能力者になりたい。おまけに、こじつけと敷衍は大好物だ。
大人だってこういう妄想をする。
いいじゃないか、コンプレックス半分、開き直った自尊心半分で。
話を戻すが、人間ジュークボックス(ジュークボックス人間ではなく)になったら、箱の中で「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」と叫びたい。
そういう店があったのだ。
一階が雑貨屋。二階がレトロゲームコーナー。どのゲームもずっとうるさい音楽を鳴らしまくっている。
その中でもひときわ大きい声でがなる、もとい鳴るのが、「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」なのだ。
一階の雑貨屋でサブカル系デザインのメモ帳を見ていると「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」。魚の生首の鉛筆立て(売っていたのだ。弟の誕生日プレゼントにした。「俺の誕生日なんだと思ってるの」と言われたので「大喜利」と返した)を手に取ると「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」。クセ強いガチャガチャばっかりだなー、あっ、ネットで見たやつ「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」。パッチワークのぬいぐるみ怖いけどホラー好きとしては惹かれ「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」。
数分おきに鳴る。下手したら1分ごとに鳴る。
客は慣れていく。驚きはしなくなる。が、鳴るたびに脳の片隅でぼそっと「ドラえもんはたあげ……」と呟く。小さく笑う。
それがドラえもんはたあげだ。
そうなりたい。
文化祭の教室に、ジュークボックスが描かれた大きな段ボール箱がある。中には私がいる。そして定期的に叫ぶ。「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」
音の情報が苦手な人には配慮したい。私がそうだからだ。それに、私は時間の感覚があまりない。だから、3分ごとに鳴るタイマーを用意する。タイマーが鳴ったら叫ぶ合図だから、耳をふさぐ人はふさぐといい。外に出る人は出るといい。念のため常識的な声量で「叫びます!」と宣言もする。そして、喉と意識のブレーキをへし折って、「ドラえもんはたあげ!!!!!!!!!!!」
これだけ叫んでおいて、ドラえもんはたあげではなく人間ジュークボックスなのが難点ではあるが、私はこれをやりたい。
そういえば、学生ではないという難点もあった。
まあ、大人だってこういう妄想をする。
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