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第21回 「根菜」という英単語【朽羊歯ゾーンのWoundTube】

こんちくしょーーーー!!!!

これを! 私は! 知っていたんだ!

友達から教わって本を買ったんだ、「試験に出ない英単語」って本を! 

読んだ! そして自然と覚えた! クリボーはgoomba、カルピスはcalpico、頻尿はfrequent urination! 最初に挙げた「根菜」は、root cropsだっ!

それなのに私は……!
外国人にゴボウの説明をするとき、「This is a kind of root crop.(根菜の一種です)」って言えなかった!


あれは、ゲストハウスで働いていた頃の話。仕事はいろいろあったが、その一つがまかない作りだった。希望すれば、宿泊者も有料で食べられるシステムだった。

その日、冷蔵庫にはゴボウが入っていて、まかないの予約は外国人。クセがあるけど大丈夫かな、でも日本に来たから日本のもの食べたいかもな、と考えを巡らす。キッチンを出たところに座っていたので、聞いてみることに。

「ゴボウ、食べられますか?」
「ゴボウって何ですか?」
「根っこみたいなやつで、苦いけど日本ではポピュラーです」
「わかんないけど、まあいいや、食べてみようかな」

という会話を英語でして、キッチンに戻った。そして記憶が蘇った。高校時代、「試験に出ない英単語」を読んだ記憶が。

喉から絞り出すように声が出る。

「root cropsじゃねえか……!」

コンロに両肘をついて嘆いた。「試験に出ない英単語」が役に立つ機会なんてそうそうない。絶対に使わないだろうけど、いつか使える機会があったら面白いだろうな、とかねてから思っていたのだ。そのチャンスを、みすみす逃した。

私はあのとき、「root」と言った。惜しいところまでいっていたのだ。でも、脳内に「根菜」という単語が出なかった。日本語ですら出ていなかった。

「ゴボウって何だろう、根っこ? あれ根っこだよね、見た目もそうだし実際に何かの根っこだろうし。よし、rootって言おう」

そう考えての「root」だった。食べられるなら「根菜」と呼ぶ、ということを思い出せていれば、「root crops」も出てきただろう。

英語のテストなんかより、ずっと悔しい失敗だった。


ちなみに「burdock(ゴボウ)」はすっと出た。どこで知った単語?


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