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#NFTアートのステートメント を考え始めてみようという会:第3回議事録(後篇)

前篇から続きます)

論点2

高瀬:草案はコミュニティという言葉を使っていたんですけど、1対1的な作品の場合にはコミュニティとは呼ばないので、どういう表現を盛り込んでいくべきなのかが論点2で議論をされたんですけど、ここは何かありますか?

小林:アイデアとして出していただいたものを共有します。この部分はステートメントの中で「コミュニティと誠実に向き合う」と書いた部分なのですが、GitHubでお二人からアイデアをいただきました。一人目の方からは、コレクター、ホルダー、サポーターという三つがあげられるのではという提案があり、二人目の方からは、それを受けてコミュニティ/ホルダー/サポーターと併記するやり方はどうだろうかという提案がありました。

高瀬:個人的にはこの併記する形で今想定される関与者を書くのが割とシンプルでいいかなとは思いました。どうでしょうかね?これは、誰が誰に向けて署名するのかという話ですよね。アーティストが署名する場合はコミュニティと向き合うよと言うことになると思うんですけど、いろいろな方たちが態度の表明をするときには…。

加藤:例えばこのステートメントに署名するは誠実に向き合うと主張する人たちとなると作り手側になると思うんですけど、作り手側という読み方でいいんですよね?

永井:今聞いていて思ったのは、アーティストとコレクターはNFTでは特に双方向的な関係性になる気もするので、一方向でいいのかという視点もあるでしょうか。例えば、クリエーターではない僕が、〈NFTアート〉のコレクターやサポーターとして、これに署名することはできないのか、という点はもう解決済みですか?

高瀬:解決済みではないですよね、まだ。

加藤:以下のことに努めます、求めます、となっているのでクリエイターtoコレクター/ホルダーみたいな視点になっていて、つまり署名するのはクリエイター側になると思うんですよね。ただクリエイター視点のfrom/toだけでなく、例えばコレクターとしてもそういう(このステートメントに背くようなクリエイターの作品)のは買いませんとか、そういうのを見かけたら自分は積極的に参加しない、みたいなことを表明するという意味でのステートメントみたいなものもあり得るのかなと。

小林:一番最初のあたりで永井さんが指摘されたことだと思うんですけど、一体誰が発信するかを整理すると、今回は広い意味でのクリエイター側ですよね。アーティストも含め、〈NFTアート〉を送り出す側の人たちの議論からスタートしていますので。そういう人たちが発信するんだと整理すると、送り出す側としての署名と、「そういう考えでやってるんだったら支持します」という人々による支持表明という、二つのレイヤーに分けるという方法もあるのかなと思ったんですね。でも、一般的に使われる「消費者」という用語と同じで、あるメーカーに勤めている人は、勤務時間中は生産者側だけど、コンビニに行ったら消費者になる、みたいな問題と同じように、〈NFTアート〉も、自分が出品するだけでなく、他の人の作品を買うこともあると思います。そうすると結局1人で両方に署名することになっちゃうのか?みたいな問題が起きますよね。両方になりうるという想定で署名する方が現状には即しているのかなと思ったのですが、そうすると一体どう文言を整理すればいいか、良い案がないのですが…。

永井:話を少し拡散させてしまってすみません。行動の自由度という意味において、やはりミントする側の方が詐欺的な行為を選択できることも含めて明らかにいろいろな可能性があると思うので、そこは不均衡があるし、コントラクト上も著作権法上も発する側と受ける側を区別するというのは一案かな、と話を聞いていて思いました。両面性を、というのもあり得るなと思いました。

高瀬:作り手の人に対してもこうあってほしいよね、賛同します、という意味で多様な人たちがここに署名するのはあり得るんだろうなと僕は思いました。そういう意味で、ステートメントの文言としては、作り手側、送り出す側の人たちの態度として「悪いことをしないよ」と書きつつ、「それを応援するよ」というのをみんなでやって、NFTの空気としてそういう方向に持っていこうというのがいいんだろうなと感じましたね。

永井:文言レベルでいうと、メインは送る側で書きつつ、最後の2行ぐらいでコレクターとしての立場としても賛同します、という形で補足的に入れるというのは、最終的な調整としてあるかもしれないですね。

加藤:〈NFTアート〉のいろいろなコミュニティに参加しつつ、僕の知りうる範囲では悪さをしている人は目立ってはいません。どちらかというと、見てくれている人、買ってくれてる人、コミュニティに参加してくれてる人、今こうやって興味を持って聞いてくれている人たちがこの空気を作り出していると思うし、その人たちに「私達はこういう態度でやっています」と表明したときに、その態度を表明したということを応援してくれるのかどうかは気になるし、それがまた〈NFTアート〉の盛り上がり、熱みたいなものになっていくのかなというのを想像できる気もするんです。そのあたりも含めて、双方向というほどいろいろ求めたいわけではないんですけど、「態度の表明に対しての態度の表明」みたいなのもこれで描けると面白いのかなというか、盛り上がりみたいなのができるのかなと。扇動ではなく、誠実さというのを支持します、みたいな。

高瀬:すごく共感できますよね。アーティストだけが書くというより、全体として一生懸命向き合おうとする人たちと、それを支持する人たちによって、〈NFTアート〉のアートの業界が成長していくのが見えた方がいいと思うので。さっき永井さんがおっしゃったように、補足的な文章を付けることで賛同を表明しやすくするとよさそうですね。

加藤:今のこの取り組みでもある種そんな感じで、作っている僕とか高尾さんに対して、ステートメントをまとめてくださってる小林先生、高瀬さん、いろんな方々のおかげで、こういう態度を表明しようと思えるんだみたいなことができるし、それもやっぱりすごい大きなコミットだと思っているので、そこにの署名を着けたいなという想いなんですけど。

高瀬:いいですね。論点の方に少し戻っていくと、コミュニティと誠実に向き合うというのは一つの側面としてはありうる、態度としては皆さんと一緒により良きものを作っていきたいというような気持ちだということなので、コミュニティというよりも広くNFTに関わる人たちに対しての向き合いだということを表明する言葉を書いた方がいいなと思います。何がいいんでしょうか?併記するのか、コミュニティに代わる言葉を発見するのか…。

永井:誠実に向き合うというのは、具体的にどういうことを想定されているのでしょうか?例えば、クリエイターの考え方として、作品を作るところまでが自分のやるべきことであって、それ以降どうなろうと関与しませんといういう態度もありうるのかなと。それは誠実に向き合うことになるのか、このステートメントとの関係ではどうなるのかが気になります。NFTって新しい取り組みだとは思うんですけど、現代美術との関係でいうと、フィジカルな作品との関係ではオーナーシップ的なことは昔からあって、それほど大きな変動ではない面もあるのかもしれないと思ったときに、コミュニティと誠実に向き合うというのがどのくらい一般的なことなのかが気になったので、もしコメントがあったらいただけると嬉しいです。

小林:ちょっと補足すると、コミュニティと誠実に向き合う、という文言を入れたきっかけは、昨年11月にやったイベントの中で高尾さんや加藤さんが話していたことだと思うんです。自分たちの作品を買ってくれた人がいると認識した瞬間に、この人たちと誠実に向き合っていかなきゃいけないんだっていう感情が芽生えたという話があったと思います。というのと、NFTは一次流通だけじゃなく、二次流通やその後のn次流通も起きるということがあると思います。普通だったら、売ったらそこでおしまい、作品を作るところまででそこから先は関与しないというアーティストのスタンスは十分あり得るなと思います。自分たちが作ったものがどんどん広がっていく、多くの人たちの中で流通するところまでちゃんと想像して取り組もう、というところを伝えられると良いのかな、というので入れた文言ではあります。確かに、これがすんなり伝わる文言なのかっていうと、ちょっとそうでもないのかもしれないな、とだんだん弱気になってきました(笑)。

高尾:まさに今小林先生がおっしゃったことは、《Generativemasks》を販売した直後とか、今も売買がずっと続いていって、関係性がどんどん複雑になっていくというか、広がっていくところでまさに感じていることでもありますね。

加藤:これがステートメントの良いところでもあり悪いところでもあると思うんすけど、これが機能するかどうかみたいな話で言うと、これに署名する人たちが想いを持って署名して内面化している場合は機能すると思うんですけど、広がってきたときに誠実さがぶれてくることはあるのかなとか思いました。

高瀬:ちょっと気になってるところとしては、コミュニティと誠実に向き合うというときに、Discordを運用し続けろみたいな話とは違うじゃないですか。誠実さというのは、売った後の値段が上がることにコミットしなきゃいけないっていうことではなく、集めてくれた人、支持をしてくれた人など、何らかの関わりを持ってくれた人に対してできるだけ向き合うということだと思ってて。そういう意味で、売った瞬間に消えるとか、寄付をするといったのに寄付しない、とかそういうことは不誠実だよねということはありつつ、Discordで毎日発言して盛り上げることをしなきゃいけないというニュアンスはそこには含まれてなくて。作り続けることができないということもあり得るだろうし。流通し続けている以上、メタデータのデータを消すみたいなことは、規約上守られてるかもしれないけど、道徳的、倫理的にはありえない、感情的には許容できないみたいなところもあって、そこを精いっぱいやったのかみたいなところとか、そういうケースの中でちゃんと向き合いましょうねということなのかなと思ってました。

永井:おっしゃる通り、万人に受け入れられる必要はないと思うので、色があるというか、スタンスを表明するということでいいのかなとも思います。公共性というよりは、私に寄っていく部分もバランスとしても出てくるのかなと思いつつ、私たちが思うコミュニティへの誠実さでよいのかなと思いました。そういう意味で言うと、この誠実さとは何か、誰に対する誠実さなのかという観点では、これまでの話を聞いてると、サポーターというよりはホルダーかもしれませんね。コミュニティという言葉でもう少し抽象的に表現すべきかというところに少しディテールが見えてくるといいなと思ったところなんですけども、どうでしょうか?

高瀬:ホルダーとサポーターをまとめてコミュニティと言えて、一対一の関係であっても、支持をする人とか鑑賞をする人も含めて、その〈NFTアート〉に関わるコミュニティだと言えるかもしれないし…。

加藤:Discordなどで作られているコミュニティで、売った後もそこにいる人がいますよね。持ってなくても、場の空気を感じて買う人もいるかもしれないとなると、薄い繋がりみたいなものとかを入れたいのかなっていう感じを、コミュニティっていう言葉から僕は感じていて。スラッシュの厳密さみたいなのをどこまで言うべきなんだろうなとかっていうのは、誰から誰にというのもありますけど…。

高瀬:先ほど永井さんがおっしゃったように、現代アートでも作品を作るところで終わりですという人がいるし、NFTの投機性やマーケットのプライシングみたいな話と関係なく、〈NFTアート〉の作品を作って社会に問うているので誰とも向き合う気はないという態度があるかもしれません。そうした態度の表明はこのステートメントには内包されてないので、署名しにくい人もいそうだなと思いましたね。

小林:そうですね。これは4名が起案者として進めているプロジェクトですので、4名としてはこう考えていますというものを出しつつ、この項目があると自分は駄目だという人がいれば、forkしてそれを取り除いて使うということがあってもいいのかなと思うんですよね。もしそれをGitHub上でやってくれれば、どこを変更したのかが追えるので、違う態度表明をする人たちがいることもある意味可視化されるかなと。ありとあらゆる人々のことを想定して何とかうまく丸く収めようというよりは、「起案者としてはこう考えているんです」というところで1回線引きをした方がいいのかなとは思うんですよね。

高瀬:そうですね。確かにそれで解決できそうですね。加藤さんはサポーターに向き合っているという感覚はあるんですか?

加藤:自分のプロジェクトで言うと、NFTのWANとかNYANとかを買ってくれた人は勿論大事ですし、WANとかNYANを持っている人がそのシーズンに1回寄付すると、寄付権みたいなのなくなってしまうんで、そのNFTを売って違う人に渡すとまた復活するみたいな仕組みになっています。ですので、売った人もサポーターですし、もっと言うと寄付先ですら何かサポーターになりうる可能性があって、薄い繋がりみたいなものがいろんなところにちょっとずつ出てくるので、より複雑になるかもしれないんですけど、個人的な感覚としてはあるかなとは思っています。この議論自体をサポートしてくれてる人が署名を、みたいなところを言いたいのも、そういうのがあって、作り手だけじゃない、いろんな人たちがこれを見ているっていうことを何か残したいなっていう気持ちだったりするのかもしれないですね。

高瀬:そこは高尾さんも、同じような感覚だったりしますか?

高尾:そうですね。関係性が何かじわじわ構築されていくというか、浸透していくというかそういう感覚はあったし、今までのアーティストと作品の所有者とか、それを応援してくれる人たちの関係のあり方とはまたちょっと違う感じだし、違う速度でそういったものが作られていくというところもあるなと感じてて。あと、自分の場合はジェネラティブアートの作品を作ってるというか日々コーディングをしてるので、コードを書いたりそれを公開したりすることを応援してもらってるとか、それを続けていくことがコミュニティに何かしら返すことでもあるのかなと思って活動してます。

小林:GitHubのイシューでwildmouseさんがコレクター、ホルダー、サポーターという言葉を定義してくださってるんです。コミュニティ、コレクター、ホルダー、サポーター、あとはアーティストやクリエイターと言われるような人たちで〈NFT アート〉に関わるアクターが表現できるのであれば、用語の定義ではないですが、そういうものを何か示せるといいかなと思ったんですね。そうすることによって〈NFTアート〉と一口に言ってもいろんな関わり方があることを伝えられそうだというのが一つの期待かなと。ステートメントに用語の定義があるのは、あまりスタンダードなやり方じゃないのかもしれません。でも、載せることによってそういうアクターがいるんだなっていうことが示せると、正確にもなるし、認識を広げることにもつながるのかもと。どんどん、収束しない方向に行っちゃってるかもしれないですけど…。

永井:あり得るなと思いました。というのは、例えば漏れなく言おうとして「ステークホルダー」にすると体温があまりにもなさ過ぎる気がします。法律的な文章作成技術の話になってしまうんですけど、例示するという形でいくつかのケースを具体的に記載するという方法自体はあり得るのかなと話を聞いていて思いました。

高瀬:ありがとうございます。なんかすごくいい気がします。個人的に、〈NFTアート〉の特性として、1万点の作品を買っていただいた人たちが集まるっていうのは独自なところで、従来の現代アートとかと比べてもかなり特異な性質のところだと思ってて。その中でステートメントを書いて態度を示すときに、コミュニティっていう言葉がある方がなんかいいなと思ったし、そこに関連するホルダーやサポーターなど、NFTならではのニュアンスがそこに入るような気がしていて。なのでそれらを定義するというか、補足することで態度の表明の助けになるのであれば、そういう形はいいんだろうなと思いましたね。コミュニティっていう単体の言葉ではなく、ステークホルダー的な言葉を列挙しながら補足する形を少し考えてみるという方向性でよいでしょうか?ありがとうございます。既に10時半ですけど、まだ大丈夫ですか?

論点4

小林:論点3のステートメントのライセンスは公開直前ぐらいとかでもいいのかなと思います。論点4だけ話して今日は終われたらいいのかなと思ったんですけど、どうでしょうか?投票もかなり分かれていて、どちらとも言えないが多かったのですが…。

高瀬:論点4を説明すると、デジタル作品を起点とする〈NFTアート〉として、ステートメントの対象を限定するかどうか、有体物の扱いをどう考えるかということですよね?

加藤:例えば、途中の議論で、この起案者的な話でこれをとらえるとしたら、限定しないとか、特に言及しないとかの方がいいかなと思いました。《WAN NYAN WARS》はどう含まれるんだろうと考えて、どちらとも言えないにしちゃったんですけど…。

小林:もう少し補足しますね。例えば絵画とか彫刻のような有体物に紐付いてNFTを発行するというタイプのものは実際あると思いますが、その場合を含めると実は話が非常に複雑になるんじゃないかと思ったんです。「所有権および著作権に関する条件を明示する」となったときに、著作権だけであればクリエイティブコモンズライセンスから選んで明示することで、多くの人々にコンセンサスが得られると思うんです。それに対して、所有権を含めると、NFTを送り出す側が条件を正しく設定するのは相当難しいのではと。であれば、著作権の話だけに限定しておいた方が、お互い正確に扱えるのかなと。《WAN NYAN WARS》はどうなるかという話で言えば、デジタルデータが基になっているので、デジタルデータを起点とする〈NFTアート〉に該当するという想定でした。でも、これは考えすぎて逆に話を複雑にしている可能性があります。実はそんなに考えなくてもいい論点なのかもしれないんですけど、どうなんでしょうかこの論点は…。

永井:そうですね…。所有権と著作権について記載するっていうふうに書いている趣旨としては、いわゆるNFTにおけるデジタルの保有権がどうなっているか、著作権について許諾するかしないか、などを販売するときに書いて欲しいという想定なのでしょうか。または、例えばNFTをオンラインで展示することが厳密には著作権法に触れる可能性もあるので、SNSでの掲載可否を書くべきか、とか。ただそれは、それなりに難しい作業でもあると思ってまして。一般的なクリエイターの方が販売しようとする時に事前に学んで欲しいというような話になるんですかね。どこまでを求めているのかなっていうのが気になったんですけれども。

小林:おっしゃる通りで、これはかなり複雑な話なんだと思うんですよね。考えていたのは、著作権の譲渡を実際にやろうとすると相当複雑ですよね。それに対してクリエイティブコモンズライセンスの場合には、著作権を譲渡するわけではなく、許諾するというところで整理されているので、非常に理解しやすいものになっていると。と考えると、権利を譲渡するというケースを除いて、あくまで許諾するだけに留めれば、正確に理解した上で条件を設定することが現実的にできるのかなと思ったんです。なんでこんなことをわざわざ書いたかというと、〈NFTアート〉を買うと著作権も移転されたんだと誤解する方はやっぱりいると思いますし、物理的なものに紐づいていると所有権が移転したんだと思う人もいるでしょう。それによって、騙すつもりはなかったんですけど、相手からすると騙された、と思うようなことも起きうるのかなと。なので、権利は移転しないというのがデフォルトで、ライセンスを明示することによって、NFTを送り出す側が許諾する範囲を明示するとお互い安心できますし、誤解も防げるのかなと思ったんですね。

永井:ありがとうございます。落とし所としては、「努める」「努力する」くらいがいいかも知れないですね。あとは、何かトラブルが生じたときにきちんと対応するなど。それを踏まえて、フィジカルな作品にNFTをつける場合って、具体的にどういうケースを想定しているんですか?フィジカルな作品の場合には所有権がおのずとあるので、その権利の移転については法律で扱えると思います。ただ、NFTを紐付けた場合に、NFTの移転に伴って所有権も移転するとは限りません。その場合、フィジカルな作品と切り離されたNFTにどのような価値があるのかとか。

加藤:スタートバーンが発行しているシール型やカード型のICタグがあって、額縁に入れたファインアート作品の裏にシールを貼って、そのシールのシリアルナンバーがERC721で表現されたトークの中に紐づいていてデジタルの証明書みたいな形で描くケースが考えられるのかなと思っていて。例えば僕の《WAN NYAN WARS》もICタグを有体物の中に埋め込んでいるんです。所有権を移転するときにICタグに紐づいたNFTに作品規約を設定しておいて、移転するときに移転先の人にこういう規約があるので守ってくださいという同意を取ってから移転するみたいなふうにしているんです。ただ、おっしゃる通り、ここも結構実態に促せるかどうかはかなり微妙で、NFTだけが移転するとか、逆に有体物のみが移転するみたいなケースも全然ありうると思います。このあたり、実際のケースという話になると、現状としては特例になっちゃうのかなとは思うんですけど。それ以外だと、例えばDamien Hirstの作品(《The Currency》)とかですかね。

永井:今の話を聞くと、先程のお話のように複雑だなというのもあるんですけれども、フィジカルなアートは元々オーナーシップがあるので、NFTが仮に証明書になったとして、実態として何か変化があるのかないのかよくわからないなと。フィジカルからデジタルに至るグラデーションの中で、どこまでを射程にするのかというところなのかなと思います。あくまで、万人がというよりはこれを書いているメンバーでどう考えるかだと思うので、その範囲でどこに結論を置いてもいいのかなと。グラデーションのどこで切るかが難しい話もあるとは思うので、デジタル作品に限定するのももちろん一つあり得るのかなと思いましたし、逆に、これを機にフィジカル作品についても権利関係をしっかりしようというところまで踏み込んで広げていくのも一案かなという中で、どこまでの作品を我々として対象にしていくのか考えるといいのかなと。

高瀬:有体物を含むか含まないかみたいなものが文言としてステートメントに載るかどうかというのはあると思うんですけど、仮に載らなかったとしても、〈NFTアート〉と呼ばれるものを出すときにそこに有体物載せようという場合に何も条件を示さないってことはあり得ないだろうし、今の状態で有体物も含んで複雑性にチャレンジしようとする人たちだと思うので、その人たちがこのステートメントに署名できないかというと署名できるような気がするなと思って。なので、ここで何かあんまりそれらについて言及するよりも〈NFTアート〉としておけば良くて、それが無体なのか有体なのかというのはここであまり気にしなくても、結果的に含まれてるし、いいんじゃないかなと感じました。

永井:今回のステートメントの起点になっているのはなっているのはNFTという新しい技術であると考えると、「NFTに関するアート」っていうようなくくりでいいのではとは確かに思いますね。NFTによっていろんな動きが生まれたとして、そこに関わるものは全て対象だっていうふうに、ちょっと緩やかですけど考えてもいいかなと思いました。

小林:そうですね。そもそもNFTアートに括弧を付けて〈NFTアート〉(=NFTアートと呼ばれるもの)とかなり広く取っています。そう言っておきながら、有体物の場合には?みたいに限定するのはちょっと考えすぎだなと自分でも思いました。あえて限定しない方がよさそうですね。ありがとうございます。

永井:逆に、これ、拡がる方にはどこまで拡がるのかなと思いまして。つまり、いわゆる現代美術の範囲に限定されるのか。今の〈NFTアート〉ってかなり広い範囲になり得ると思ってまして、従来はイラストやビジュアル的な表現だとされていたものも全て〈NFTアート〉かなとも思えるところで、それも全て範囲内で、ステートメントに賛同したり署名するということは、受け入れるのでいいんですかね?

小林:〈NFTアート〉とはこういうものです、と定義した上で話をしようというのはかなり難しいところがあると思うんですね。逆に、それぞれ〈NFTアート〉だと考えて活動する人の中で、これに賛同する人が署名することで、それらの集合体として「そうか、こういうスペクトラムが〈NFTアート〉にはあるんだな」ということが可視化されると、拡がりを見せられるかも。みんなバラバラに見えるけど、実はこういうところは共通で賛同しているんですよ、という図が見せられるといいのかなとは思うんですよね。

永井:定義ありきじゃ無い方がいいというのは、おっりゃる通りですね。

小林:あと5年とか10年とか経ったら、定義できるところまで熟成してくるのかなと思うんです。今定義し始めてしまうと、「話題になっているものはこうだけど」みたいな話に収束してしまって、それをトレースすればいいんだ、みたいな狭くなる方向というか、陳腐化する方向にいってしまう気がするんですよね。なので、定義自体が定まってないものを自らがそう名乗って、そこにはしっかり送り出す側の責任を持って関わるよという態度を、このステートメントを通して示してもらえると、広がる方向に行くのかなと思いました。

永井:納得しました。ありがとうございます。

加藤:その方がWeb3っぽいですね。

高瀬:そうですね。それでなんかこう見えてくるものがあると〈NFTアート〉ってこうなんだっていうのは気づきがあったりしそうですね。ありがとうございます。論点としては、ライセンスは別途定めていったり、オンライン上で皆さんからご意見があれば求めつつ定めていけばよさそうですね。今日の中で論点として挙げたものについては、ある程度方向付けはされてきたのかなと思います。署名の方法は残っていますが、今日の段階のディスカッションとしては充実したものになったと思います。

加藤:すごい学びが深かったです。一番難しい回だったかも。だんだん細かくなってくるというか、誰がどの態度とか、どういう言葉遣いで、みたいなとかが出てくると、難しいですけど、やっぱりこれが、大事な作業なんだなと…。あとはこれをどう署名していくか。署名のための仕組みのところはまだまだ進められてないんですけど、やっていかなきゃってと思いました。署名する人を分けるのか、はまだ残っていますよね?

高瀬:そういうところも含めて、どう署名するかですね。今日は議論としては以上にしつつ、この〈NFTアート〉のステートメントを考えるムーブメントとしては、いろんな方とお話をしながら、今回も永井さんに来ていただいてディスカッションさせていただいたんですけど、広く皆さんと連帯をしながら賛同していただけけるものになっていけばいいなと思います、というところでまだまだ議論は続いていきますね、という感じですかね。

小林:いい感じのところまでたどり着いたと思います。今日の議事録もまた起こそうと思うんですけど、それをまとめて、草案2みたいなものを出しつつ、最終版に向けていくというような作業になるのかなと思っています。それと並行して署名のところの仕組み。仕組みの話と、どうあるべきかという話の両方が同時になっていくんじゃないのかなと思いますので、その署名の仕組みがある程度準備できたあたりで4回目があると、いよいよ最後にむけてという感じになるかなと思います。

加藤:そこまでには、技術的なところもある程度進めておかないとなという感じですね。がんばります。

高瀬:今日は70名近くの方に聞いていただきました。ご意見があれば #NFTアートのステートメント というハッシュタグで出していただけると見やすいですし、この議論に関わるDiscordのサーバーにも通知されます。気軽に意見を表明いただいたり、Discordに来ていろいろお話していただければなとも思っています。引き続きよろしくお願いします。今日は以上になります。ありがとうございます。

第3回の結論

  • 論点1:ステートメントで第三者にコミットを求めるべきか否かについて

    • ステートメントで第三者へのコミットは求めない。まず、第1項の「オーナーシップに伴う権利だけでなく責任を理解する」は、オーナーシップに責任まで伴うという社会的コンセンサスが醸成されていないため、一義的に解釈できない。次に、第2項の「剽窃や盗用をしない」は、法律に反しないというレベルの話であり、法律を守ることについては既に社会的コンセンサスが得られている。さらに、「私たちの〈NFTアート〉に関わる全ての人々に、以下のことを求めます。」はかなり強い表現であり、ステートメントへの賛同を得にくくなることが懸念される。以上の理由により、第三者にコミットを求める部分は削除する。

  • 論点2:「コミュニティ」に代わる表現について

    • コミュニティよりももう少し広い、それでいて「ステークホルダー」よりは熱量を感じられる言葉に置き換え、アーティスト、クリエイター、コレクター、ホルダー、サポーターなど関与するアクターを例示する。これにより、〈NFT〉アートに関わる人々の具体像を提示できる。なお、ステートメントはあくまでNFTを発行する側の立場で書きつつ、それ以外の立場の人々も賛同を示せるよう、2つの部分に分ける。

  • 論点4:デジタル作品を起点とする〈NFTアート〉に本ステートメントの対象を限定するか否かについて

    • デジタル作品を起点とする〈NFTアート〉に限定しない。まず、有体物の所有権については既に法律で規定されている。次に、有体物とNFTを紐付ける複雑なプロジェクトを実行する場合、自ずと詳細な条件をプロジェクト個別で設定することになるため、そうしたプロジェクトを実行しようとする人も署名できるステートメントである方がよい。そもそも、本ステートメントではNFTアートに括弧を付けて〈NFTアート〉と表記し、NFTアートと呼ばれるものを広く対象としている。〈NFTアート〉とは何かを誰かが定義するのでなく、〈NFTアート〉だと考える作品を制作する人々がこのステートメントに署名することにより、〈NFTアート〉のスペクトラムを可視化する方がWeb3の文化にも馴染む。以上の理由により、本ステートメントの対象をデジタル作品を起点とする〈NFTアート〉に限定しない。

  • 署名について

    • 次回までに、署名の具体的な実現方法を検討する。

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