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#NFTアートのステートメント を考え始めてみようという会:第3回議事録(前篇)

・日時:2022年1月12日(水)21時〜23時
・参加者:加藤明洋小林茂高尾俊介高瀬俊明永井幸輔(50音順)
・議事録作成:小林茂

導入

高瀬:NFTアートのステートメントを考える会の第3回、よろしくお願いします。いろいろな方とディスカッションを深めていきましょうということで、永井さんにお越しいただいてます。永井さんよろしくお願いします。初めての方もいらっしゃるかもしれないので、自己紹介をお願いします。

小林:情報科学芸術大学院大学[IAMAS]の小林です。本日も参加されている高尾さんと加藤さんに登壇していただき、昨年11月19日に「〈NFT アート〉の可能性と課題」というイベントを開催しました。その中での議論が発展して、ここにいるメンバーでステートメントを起案するに至っております。Twitterの投票機能などで寄せていただいたみなさんのご意見も反映させつつ、議論していけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

高尾:高尾俊介といいます。普段はクリエイティブコーダーという肩書きでプログラムを使ったアートの活動を日々やっています。本日ホスト的な感じでお話いただいてる高瀬さんと、《Generativemasks》という〈NFTアート〉のプロジェクトをやっています。幸いにして、昨年8月に公開した《Generativemasks》の一次販売が成功して、それ以降〈NFTアート〉に関する様々な課題の部分で自分が考えてることを今回のステートメントに盛り込んで発信していけたらと考えながら活動をしています。

加藤:加藤明洋です。よろしくお願いします。普段はスタートバーン株式会社というところで、ブロックチェーンで発行する証明書をアート作品につけるプロダクトを開発しています。個人の活動として昨年の9月に《WAN NYAN WARS》という、犬派と猫派の戦いを、NFTと物理の作品の融合で楽しむ〈NFTアート〉のプロジェクトを継続しています。そろそろシーズン3をと考えておりますので、もしよければご参加ください。

永井:永井と申します。弁護士をやりつつ、直近ではメルカリの子会社のメルコインというところでブロックチェーンとNFTを使った事業開発をやってます。メルコインではリーガルではなく事業開発をやっているのですが、今日はどっちかというと弁護士的な話で、お呼びいただいたのかなと思ってます。2010年ぐらいからArts and Lawというチームで活動していましてクリエイターの方のご相談などにアートマネジメントとして関わってきました。また、クリエイティブコモンズという、今思うとWeb 2.5的な、著作権をオープンに開放していろんな人に使ってもらうことでより大きな経済圏やコミュニティを作っていこうというライセンスを普及させる活動をずっとやってきました。権利、クリエイティブ、金融、ブロックチェーンと一通り接してきているというところもあって、そういう知見から何かお話できればということで参加させていただきました。よろしくお願いいたします。

高瀬:永井さんは #NFTアートのステートメント のスペースの中でも、積極的にツイッターを通じてご意見をいただいていたのでぜひお話をさせていただきたいなと思って、お声がけさせていただきました。今日お話できて嬉しいです。僕は高瀬俊明と言います。NFTの発行支援などをアーティストさんとご一緒してやらせていただいてまして、アーティストさんの表現の幅が広がるように、皆さんの創造性を高めて持続可能になる方法をブロックチェーンを通じて提供したいということでNFT発行支援を中心にさせていただいます。直近では、高尾さんからもお話のありました《Generativemasks》でご一緒させていただいているものでございます。どちらかというとアーティスト目線というよりは、技術者視点、事業者視点的なところから、NFTアートのステートメントについて考えている立場になります。今日は、今まで議論してきた中の延長でGitHubやTwitter のアンケート等で皆さんからご意見をいただいているところを踏まえて少し議論を深めていく回になるかと思っています。小林さんの方でTwitterのアンケートの集計結果を共有していただけますか。

小林:先程集計が終わりましたので順に補足しながら説明していきます。まず、「ステートメントで第三者にコミットを求めるべきか否か」について。この点について、永井さんからはWeb3の文化には反するのでは、というご指摘もいただいております。20票のうち、そのまま残すが45%、修正して残すが20%、削除すべきが25%、その他が10%という結果で、一番多いのは「そのまま残す」ですが、多数決で決めようというものではありません。あくまで、この件に興味を持ってくださっているみなさんがどう考えているのかを知るのが目的です。これが一つ目の論点になります。

論点2は投票形式にはしていません。草案でコミュニティという言い方をしている部分に対して、必ずしも該当しないという指摘がありました。例えば、1対1に近いような状態で作品をNFT化するような場合で、コミュニティに代わる言葉としていくつかの提案をいただいています。

次の論点は、このステートメント自体のライセンスです。今は何も設定していないのですが、今後本格的に使われる際には設定した方がいいであろうということで、これについても意見を求めました。CC0という著作権を全部放棄するものと、CC-BY-SAという誰が作ったかを表示して同条件で配布するという、GitHubでも推奨される二つを例として挙げました。投票結果は、CC-BY-SAが6割弱、CC0が4割弱です。

続けて最後の論点です。〈NFTアート〉と一口に言っても、例えば油絵のような有体物、物理的な作品に結びついて発行する場合と、デジタルが起点にあるものだと条件が違ってくると思います。有体物に紐づいてNFTを発行したときに所有権的なものをどう考えるかは、まだ慣習も定まっていません。この辺も含めて、どういう条件を提示するのかを、アーティストやクリエイターが正確に表明するのはかなり難しいんじゃないのかと思います。それに対して、デジタルだけに絞ってしまえば結構シンプルになるのでは、ということで意見を求めました。投票結果は、どちらともいえないが4割強、限定することに賛成が4割弱、限定に反対が2割でした。以上が論点として挙げたものに関するTwitterでの投票結果です。

論点1

高瀬:ありがとうございます。論点1から順に進めていきましょう。論点1、ステートメントで第三者にコミットを求めるか否について、「そのまま残すべき」が多数派ではあったんですけども、めちゃめちゃ優位かというとそうでもありません。ここにいらっしゃる皆様はいかがですか?

永井:Web3的には第三者に求めない方がいいのではと直感的には思いますが、このステートメントがどこを目的にしているか次第かな思います。今回のステートメントのゴール、何を達成したいのかは既にある程度固まっていますか?僕の雑感だと、NFTは例えば投機的なイメージがあって参入しづらいアーティストの方々もいるという認識があり、その障壁を下げるというところが一つ目的としてあるのかなとか思っていました。そういうことなのか、それ以外にあるのかというところを教えていただけますか?

高瀬:これは僕自身の観点からになりますが、NFTの盛り上がりで投機的な側面も含めて多様な人たちが入ってきている中で、詐欺的というかあまり誠実ではないプロジェクトが横行したり、何らかの事件的なものが発生しうるという観点で、ネガティブな印象なんかが流布されたりっていうところもあったりとか、あるいは実態と乖離していてよくないぞっていうところがある中で、でもNFTって悪いものじゃないよね、というところで私達としては誠実に、きちんと向き合って、NFTに取り組んでいますよっていうことを態度として表明をしていきたい。それによって健全な成長や多様な人たちの参入を助けてあげたい、あとは本当に何か問題が顕在化してきて、大きな事件があったときに、私達としてはこういう態度でやっていますということを、その際にちゃんと表明できたりとかっていうことで守っていくようなことができたりってことがそのための準備でもあるのかなみたいなところが目的だったりしますかね。何か補足があれば他のみなさんもお願いします。

加藤:基本的にその通りだと思っています。とはいえ、全ての〈NFTアート〉に対してこのステートメントを適用しようとかっていうつもりでもなく、今こういう態度を持ってやってる人たちがいるんだということを示すっていうのがあるかなと思っていました。かつ、僕としてはそのやっぱり《WAN NYAN WARS》を始めるときもそうなんですけど、どういう形でライセンスとか考えればいいのかなどについて、その時に全員がやってる方法ならやろうみたいな感じでやったところとかもあるので、やっぱりそうすると外側から見たときにわかりづらい、何かその詐欺的なものみたいなふうに見られてしまうのもわからなくもないなと思っていましたした。なので、例えば僕の作品や高尾さんの作品を例示をすると思うんですけど、こういうやり方をすればいいんだという例になればいいのかなとも思っていました。

永井:ありがとうございます。よく理解できました。何をするかというところにいくつかレイヤーがあると思います。第一には今おっしゃった「こういうふうに考えています」、「そういう人たちが入って活動してます」というのを示すこと。第ニに知識の共有みたいなところまで考えているのか、第三にガイドラインなどを提示してコミットするところまで参加者に求めるのかっていうところで、いくつかグラデーションがあるような気がします。提案者としてもどこまでコミット可能なのかも含めてスタンスがあるといいのかなと思います。知識の共有だと、暗号資産の業界団体のJCBAというところで、NFTに関するガイドラインの作成に参加したことあるのですが、そこでは具体的な法的な論点と考え方などをガイドラインという形で提供して、それに従えばある程度安全に参加できますという具体的なツールとして提供しました。このレベルまでやれば役立つと思いますけれども、多分今の段階ではそこまでやらないですよね。そうすると、自分たちが何者で、どう考えていて、今こういう範囲で活動していて、もし何か知りたいことがれば知識を提供しますとか、仲間がいることとか、あるいは何かインシデントが起こった時に、我々はガイドラインを設けてやっていますので同じことは起こりません、とスタンスを示すやり方が近いのかなと思いました。

加藤:そうですね。〈NFTアート〉というか、そもそもアートっていうもの自体が定義しづらいものでもありますし、その表現の幅とか、それこそライセンスみたいな形に作りづらいというかこの、何か議論が最初に会ったときにクリエイティブコモンズができたときのような感じで、〈NFTアート〉を従来の著作権や所有権に沿わせようとすること自体がもはや難しいんじゃないかとか、新しいその間何かを創り出さなきゃいけないんじゃないかみたいな、という話がやっぱりあって。とはいえ、今すぐに作り出せるかって言われるときっと難しいだろうし、そもそも例も少ないし、たとえつくったとしても何かの権利や強い強制力を持つわけでもない。例えば、コントラクトレベルでコードを書いてしまえばコードという法律になるわけですけど、それもきっと全てに適用することは無理だし、となってくると、現状。難しい何かに対してでも何かは言わない何かを言わないといけないというか何かそういうそうですね永井さんの最期おっしゃっていたあたりに主張しておいた方がというか主張したいみたいなところになってきたのでステートメントっていう形になっているのかなと。〈NFTアート〉 のそれぞれのプロジェクトって、ツイッターとかで関係性としてのその例えば僕と高尾さんであったりとか他の方だったりとかっていうところはあると思うんですねなんかあのプロジェクトのこの人知ってるとか、この人はこういう思いでやってるとか何か。あの人は顔見たことあるとか、何か何かそういうレベルであると思うんですけども、じゃあ、それが何か横の繋がりが何かで表現されているかっていうとそうではなくて、個々人の主観みたいなところになっているのでなので、例えば今回のステートメントを署名みたいな形でできるようにすることで、ある種横の繋がりをブロックチェーンに刻むみたいなこともできれば「こういう態度に署名しているこの人たち」というのは表現しうるんじゃないかなと。

永井:せっかくなので法律の専門家的にフレームを作ってみて考えてみます。Lawrence Lessigという憲法学者によれば、規制には法律的な規制、倫理・道義的な規制、マーケット的な規制、アーキテクチャの規制の四つの原理があります。何が今できるかというと、ライセンスの形でソリューションを提供することも可能だと思います。例えば、デジタル所有権のような権利をライセンスの形で定義して、それを共有することでより安定的な取引をできるようにするとかですね。いつかはそういうものが必要かなと思います。さらにラディカルにやる場合は、スマートコントラクトで実装して、仕様としてそれしか選択肢がないような形でルールを決めて、取引に参加した人はもうそれしか従えないような強制力の強いやり方も可能かもしれない。逆に柔らかい方法で言うと、ステートメントみたいな形で、強制力が必ずしもあるわけじゃないけど、それに従うことがある種の倫理規範というか、関わる人たちにとって正しいことと認知されて空気的にそれに逆らいにくくなるようにするやり方もあります。そうしたグラデーションがある中で、どれを選んでいくかという話なのかなと思います。このうち規範というのはプログラム的なものと違って、聞いた人が内面化しないと従えないという、インタラクション上の特徴があると思うんです。参加するには読み込んだ上で同意しないと従っているとは言えないと思います。そのため、ステートメントで出すとすると、参加を表明するという仕組みは何らかの形であった方が、効果的なのかなという気はしています。何かしらNFT上で表現できる方法があるかもしれないですし、Webサイトに名前を書いて署名する方法もあると思います。そこが仕組化すると、参加してる人にとっても、見ている人にとっても、このルールが見えやすくなると思いました。論点1に帰ってくると、何かしらコミットする人には表明を求めるのが一つの解決かなと思った次第です。

高瀬:この論点1のところで、さらに第三者にコミットを求めるべきかというところでいうと、ステートメント自体に賛同してコミットを表明するという点と、さらにその内容の中に「私たちの〈NFTアート〉に関わる全ての人々に以下のことを求めます」として、オーナーシップに伴う権利だけではなく責任を理解すること、盗用とかしないでね、の2つが書いてあります。今の議論で言うと、ちょっと求めてもコミットを得られないのではないかというところが見えてきたんですけど思うのですが、何か意見はありますか?この部分は結構強い表現で、やっぱり気になっています。GitHub上のコメントで「剽窃や盗用の部分は個々のNFTの適用ライセンスの範疇として切り離しても良いと思います」というご意見をいただいてる方もいらっしゃいます。ここの切り分けや、第三者にどのぐらい強めに求めていくのかっていうことが論点になっているかなと思いますね。

小林:永井さんに整理していただいたレイヤーは、1番目が自分たちの態度を示す、2番目が知識を共有する、3番目が参加者にコミットを求める、だったと思います。ここで書いてることは、2番目をすっ飛ばしていきなり3番目まで行ってしまっています。自分たちの態度を表明するという目的で言うと、ニュアンスとして「みなさんにもこういうことを期待しています」というのを入れるのはアリなんでしょうけど、それはやっぱり態度とは言わないかなと思います。これを草案として作ったときには、そういう議論を呼ぶことも役目だと思って入れました。あくまで今回はレイヤー1の態度を示すところに留めるということであれば、なくした方がいいのかなと思ってます。

高尾:僕も、当初は今回のステートメントは当事者意識を持ってる自分みたいな存在が、今の状況に対してメッセージを発したいと考えていました。ですので、第三者に求める部分は記載しなくてもいいのかなと考えていました。

高瀬:知識の共有のレイヤーすっ飛ばしているというところは確かにと思ったところもあって、みなさんの意見に賛同できるなと思いました。

永井:ちょっとだけ補足をすると、誰がこれを作っているのかっていうことも関係すると思います。これが業界を代表する団体だったり、ある種の権威みたいなものがある場合、代表者として振る舞ったり参加者にコミットを求めることはあり得ると思うのですが、今回はそうではなく、納得してもらえる根拠が必要かなと思います。他方で、二個あるうちの、「剽窃や盗用はしない」というのは、法律に反しないというレベルの話かなと思います。法律を守るというのは社会的なコンセンサスだと思うので、これは多分書いても問題ないかなと思います。しかし、もう一方の「オーナーシップに伴う権利だけでなく責任も理解する」というのは、人によって考え方が違い、一義的に解釈できないかなと思います。ですので、これに納得していただくのは少しハードルがあるのかなと。逆に前者は可能ではないかと思いました、というのを補足させていただきます。

加藤:僕は、1番目の「オーナーシップに伴う…」は、このステートメントに署名する人たちの意思表示としてあってもいいのかなと思います。この部分だけを消してforkすることもできますし。というのも、今の状況に対してはこの強さを持っていてもいいのかなと思うんです。ですので、何がオーナーシップなのかという知識レイヤーのところを少し書き加えてあげれば、このステートメントとして求めるものを、読んだら理解できるものになる可能性もあるかなと思っていました。賛同するかどうかはおいておいても、そういう意識があるんだっていうことを伝えることとしてはあり得るのかなと思ったんですよね。〈NFTアート〉に限らず、NFT一般においてもオーナーシップは大事なものだと思いますので、そこを強く伝える手段としても、これを表明する立場はあるのかなと思っておりました。

永井:僕もそこは同意です。NFTにとってオーナーシップはすごく大事で、リスクを取るからリターンがあるという先行投資のような側面があることで、いろいろなアップサイドが生まれていると思います。ブロックチェーンという新しい技術でもあるし、メディアとか場が生まれるということでもあるし、新しいマーケット、コミュニティ、カルチャーが生まれるかもしれない。ゆえに、アートの素材というか可能性として非常に魅力的だというのは総意とそんなにずれてないのかなと。ですので、その核心であるオーナーシップについて触れたり説明することはとても意味があると思います。逆に、ダウンサイドとして、詐欺や盗用がある。オーナーシップがあるゆえに、投資やお金が集まりやすいから、そうしたことが起きやすいというところがあります。アップサイドとダウンサイドの両方を説明すること自体にはすごく意味があるし、知識の共有にも繋がると思うので、僕も書くことについては賛成ですね。それに対して、どうあるべきかという規範を示す部分は、人によってスタンスも異なると思うので、両者は違うレイヤーで考えてもいいのかなと、これまでの話を聞いて思いました。

高瀬:ありがとうございます。オーナーシップの概念について今の議論の中で僕は自分の中でも少し気が変わってきてるところあるんですけども〈NFTアート〉に個別に紐づいたオーナーシップの概念が存在してくるだろうなというときに、多様にあり得そうなオーナーシップの概念を、ここの中で説明し切って理解が求められるだけの知識情報をここで載せて届けられるか、それを踏まえてそれらの責任を理解しなさいというのは、ここのところだと不十分というか、逆に個別のプロジェクトがやるべきことなのではないかという気がしていて、このステートメントの中にその知識情報も含めた情報を織り込んでいくのが適切なのかっていうと、ちょっとどうなんだろうなっていうふうに感じました。ですので、賛同しつつも、加藤さんの立場とは少し違うのかもしれないと思います。

加藤:僕も、どう説明できるのかについてはさっきもいい淀んだというか、どう言えるんだろうか…と思ったところでした。

小林:この草稿を昨年末に公開してから、自分自身でもオーナーシップという言葉の意味を調べてみました。当たれる範囲の辞書を調べてみましたが、所有権以上の意味は出てこなかったんですよね。だからそこに対して、権利だけでなく責任もあるんだと言われても、一体どういうことなのかわからないだろうなと思いました。具体的に、どういう場合に所有権だけでなく責任が出てくるかというと、例えば誰かの剽窃や盗用をした〈NFTアート〉に、短期的に売り逃げたら儲かるからと関わった時です。確かに自分が持っている権利を行使しているだけかもしれませんが、そういう履歴が全部残っている以上、その後そういうふうに見られますよ、みたいなところがあるのかなと思うんですね。でもそれは相当複雑な話にもなってくるので、かなり詳しく書かないと、短い文だと難しいというのがあらためて思ったところです。いま、オーナーシップ経済だと言う時には、プラットフォームが持つのではなく、自分が所有するんだというところが着目されていると思います。自分が所有するということが起きたらどういう責任が生じてくるのか、という議論はまた次の段階ですよね。2021年末から2022年の段階で、そこまではコンセンサスができていないと思うので、いまこの短い文でというのは難しいかなと。

永井:そこは同感です。責任までいってしまうと結構ハードルが高いなという気はします。オーナーシップについて詳しく説明するのは無理だと思いますので、オーナーシップというものの先にいろんな可能性がありますという話と、ゆえにその可能性を捨てるのはもったいないので、一つの場とか素材として向き合っていくことがアートのポテンシャルの開拓になるのではという話かなと。ただし、剽窃など違法なことはすべきではないし、投機性の評価は一定ではないので距離をとって慎重に考えていく、くらいが落とし所かなと直感的には思います。これは小林さんがおっしゃったこととそんなにずれていないのかなと思います。

高瀬:加藤さんはどうですか?

加藤:確かにな、と思ってました…。落とし所を探っていく感じですよね…。

高瀬:今ここにいらっしゃる皆さんとして、方向性がついてきて落としどころを見つけられそうですかね。

加藤:個人的に気になっているのは、ここでぱっと発言して賛同できるかどうかとかっていうのが結構気になっていて。このメンバーが署名するのはできると思うんですけど、態度を表明する横の繋がりがどのくらいできるかなと。やっぱり作る側の話も結構大きいので、聞いてみたいと思います。

(リスナーとして参加していた方より「自分はインターネット上に公開したものに対して責任を持つのは当然だと思う。ウォレットなどで証明する仕組みが必要だと思う。どう証明するかが課題では。」という趣旨のコメント)

高瀬:このステートメントに対してどう意思表示したのかの署名の方法についてはまだ細かく話ができてないと思いますけど、より近い形で本人がそれを表明していることが示せることが望ましいですよね。

加藤:何か例えばクリエイターであればOpenSeaならアドレスを入力すればどのアカウントかわかるんですが、そういうレベルなんですかね…。この署名をしておいてこの人はこの行動なのかみたいなのは、確かに突っ込まれそうになるみたいな。それがクリエイターサイドなのか、コレクターサイドなのか、サポーターサイドなのかは分からないけど、みたいな。コミュニティに代わる表現のところで少し議論はありましたけど、署名する主体の話はまたそれほど議論されていないですよね。

高瀬:確かに。署名の方向性や態度の表明の仕方の議論というのはまた別の論点としてとっておいて、話すべきところなのかもしれないですね。ありがとうございます。加藤さんが頭出ししてくれた論点2に移っていきたいと思います。

(後篇に続く)

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