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明日死なないために、「書く」を始めました

はじめまして。korosukeと申します。

東京の出版社で粛々と書籍PRをしている25歳。しがない出版人の端くれが、この度noteを始めてみました。

始めてはみたものの、noteの1発目ってみなさん何を書いてるんですか? 自己紹介とか? わたしの自己紹介なんて書いたところでロクなことがないですが、ひとまず今回はnoteを始めようと思った理由を書いていこうと思います。

「明日、死なないために」

突然ですが、朝井リョウさんの新刊『正欲』は読みましたか?

あってはならない感情なんて、この世にない。それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ――共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か? 絶望から始まる痛快。あなたの想像力の外側を行く、作家生活10周年記念、気迫の書下ろし長篇小説。
(新潮社HPより)

朝井リョウさんファンでありずっと作品を追いかけ続けてきた身としては、「朝井さんは作家人生10年間ずっとこれを……」と勝手ながらに感じる1冊でした。

その『正欲』のなかでこんな一節が出てきます。

世の中に溢れている情報はほぼすべて、小さな河川が合流を繰り返しながら大きな海を成すように、この世界全体がいつの間にか設定している大きなゴールへと収斂されていくことに。

その“大きなゴール”というものを端的に表現すると、「明日死なないこと」です。

「明日死なないこと」

この言葉を読んだ時、わたしがぐずぐずと長い間抱えてきたわだかまりを言語化してもらえた気がしました。

***

今回2回目の突然の話をします。

わたしは今の出版社に転職する前、都市銀行(何色かは想像にお任せします)に勤めていました。就職活動をしていた当時、その銀行は毎年1000人近くもの新卒を大量採用していました。

手っ取り早く内定がもらえそう……就職活動を早く終わらせたかったわたしは、それだけを理由にさっさと銀行員になりました。

心の奥に感じていた「自分はこんな大きい銀行でやっていけるのだろうか……」という不安は「就活終わった〜みんなあそぼ〜っ⭐︎」という目先の天国に完全敗北。

その結果、待っていたのは苦痛の日々でした。体育会系特有のセクハラ・パワハラもありましたが、それよりもつらかったのは「お金に対して興味・関心がわかない」ことでした。

毎日毎日どこかで動いている見えないお金を調達し、貸し付けては回収して、利息を回し続ける──1度たりともミスが許されないプレッシャーのなかで目を光らせて仕事を全うしても「それでもわたしは何も持っていない」と、虚しい気持ちだけが残りました。

「このままだと死ぬかもしれない」。働き始めて1年が経った頃、漠然とそう思いました。

(誤解しないでほしいのが、銀行の仕事をディスりたくてこの文章を書いている訳ではありません……銀行員でないと学べないことはたくさんあったし、なにより視野が広がりました。ただ、自分は銀行員として働き、生きていくという見通しがあまりにも甘かったのです)

新卒1社目で入った会社を辞めようかな…と打診すると、どこからともなく「仕事ってそういうもんだよ、あなたはまだ慣れてないだけ」「好きなことを仕事にするなんて幻想だよ」「みんなそういう中で折り合いをつけてやってる」という声が聞こえてきます。

これについてはわかるようでわからないと思うんです。というか、わかりたくないと思ったから、わたしは「仕事を辞める」という選択肢を取りました。

(てかそもそも自己分析をしなかったお前が悪いという大前提があるけれど……もし就活中の学生さんが奇跡的にこのnoteを読んでたら二の舞にならないように参考にしてください)

***

「あ、このまま働いてたら死ぬ」という衝動に任せて仕事を辞めた時、同時に「書きたい」という欲が浮かんできました。

本を執筆した経験もなければライターとしてのキャリアもないくせに、なぜか「文章を書く仕事がしたいな〜」と思いつき、根拠のない自信でえいっと出版業界に飛び込んできました。

ただ、わたしは「書く」を通じて自分が何をしたいのか、今のところ見当がついていません。誰かの言葉を「編みたい」のか、自分の言葉として「綴りたい」のか、はたまた言葉を使って社会にメッセージを「伝えたい」のか……。

それを探すために、まずはnoteで自分の言葉を綴る練習を始めることにしました。このnoteは「書く」への冒険です。

こうしている今も「書く」ことが本当に楽しい。顔を突き合わせて人と向き合い、自分の声で誰かと話をするのが本当に苦手な自分が「書く」ことで社会の輪のなかにかろうじて入っていけるような気がする瞬間、たまらなく「自分は生きている」と感じるのです。

「明日、死なないこと」を毎日のノルマみたいにこなして生きている人は実はこの世に多いのではないでしょうか? 自分だってまだその内の一人かもしれません。でも多分生きていることのゴールってそこじゃない。「生きているだけで万々歳」なんて丸くなるにはきっとまだ早いはず。

同じような気持ちを抱えるどこかの誰かにこの文章が届いたらいいなと思います。頑張って生きていこうね!


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