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珈琲にスポットライトを。


トムネコゴ | 東京都 井の頭公園


井の頭公園。
東京にいる気がしない場所。

ホッとしたい時は、ここに来てみる。


ふらふら歩いてると、
公園の南っ側に出た。


築50年くらいのアパートが出現。
そこの一室に、
素敵な街灯がぶら下がってる。
しかもドアが開けっぱなしじゃないか。

バルコニー下にはわれた排水管に
うまい具合に看板も設置してある。
アナログ的フィット。

トム
ネコゴ

もしかして。


カフェか、
美容室か、
何だろか。


そろり近づいてみると、
でかいボコボコ仕上げの壁に、
メニュー表がかけられていた。

うさぎが描いたかのような
白くて小さくてかわいい文字。
ガンガンに焼けた真夏の少年の肌のような
焦げ茶色の木板。


喫茶店だ。


迷いなく、突入。

ストーブの匂いと青い炎、やかん。
あちこちに不揃いのランプ。


存在すべき最低限の光と音と色彩。

ノスタルジック界の
極上スウィートルームだと言われても
秒で納得できる。


物静かそうな店主の男性が
厨房から顔をのぞかせた。

「 お好きなお席へどうぞ。」


右奥の席には、
いかにも常連さんのようなおじさま、
その前の席には、
かの有名なリンゴマークのついた
銀色の薄っぺらいパソコンを開く若男。


人のいない、
左奥の席に座ることにした。


ブレンド珈琲とチーズケーキを注文。

始めて行くお店では、
なんとなくだいたいブレンドを選ぶ。



待つ。



心地よすぎて眠くなる。

目の前にある窓の奥は、
植物の気配はなく絶壁コンクリート。
この無機質さがまたたまらなくいい。


しばらくすると、
珈琲とチーズケーキをお盆に乗せた
店主さんがきた。
机に広げていた
方眼用紙とシャーペンを、
丁寧を装ってガサゴソよけた。

ネルドリップで淹れられた、
ピシッと襟を立てて
姿勢を正した紳士的な珈琲。

丸じゃなくて
四角い型で焼かれたであろう、
珈琲にそっと寄り添う
ふかふかチーズケーキ。

装飾は一切されていない、
素朴で、
自然体で、
シンプル。

写真の撮り方なのか、
スポットライトあびてやがる。
小さな喫茶店のひと席で、
小さな舞台ができあがっている。

チーズケーキは脇役。
主役はあくまでも珈琲。

たぶん。



そしてここに入ってきた時から
ずっと感じていた、

圧倒的静寂。

聞こえるのは
珈琲豆を挽く音、
珈琲を淹れる音、
静かな音楽。

音は存在してるんだけど、
身体におのずと吸収されて、
静寂的感覚に陥っているのかもしれない。


そこでいただいた珈琲とチーズケーキは
私の味覚に残り続けている。


帰り際、
店主さんとボソッと立ち話をした。
それもなんとも心地よかった。

また来よう。
また行こう。





「珈琲にスポットライトを。」


トムネコゴ

◯ 東京都三鷹市井の頭3-32-16
セブンスターマンション 1F
◯ 080-6502-0406
◯ 平日12:00-21:00 / 土日祝9:00-21:00
(日月祝は19:00まで)
◯ 火曜休み