窓を開けると外は雪が積もっていて、軒先には氷柱が出来ている。
吐く息は白くなってからそっと溶けた。
「・・・寒いから窓しめて」
彼はこちらに目も向けず、少し不機嫌そうに言った。
『えへへ、ごめんごめん。』
私はそう言って窓を閉めてこたつに戻る。

彼はこたつで仕事をしている。
私にはよくわからない何かを作り、時折パソコンと睨み合い
こちらに目を向けようとせずただただ難しい顔をしている。
私はその隣で編み物をしている。
バッグを作ったり、あみぐるみを作ったり、マフラーを作ったり
時折彼の顔を盗み見てこっそり笑ったり、冬の歌を口ずさんだりしている。

ふと、隣から視線を感じたのでそちらを見ると、彼がこちらを向いていた。
「な、何?」
『いや、すごいなと思って。』
「何が??」
『それ。』
私の作っているものを指差して言う。
『ただの糸がいろんな形になるって、魔法みたいじゃん。』
真面目な顔をしてそんな事を言う。
「私は、キミが作ってるものの方が魔法みたいだけど。」
『そうか?』
「だって、出来るまでは本当に何がどうなるのかさっぱりだけど、完成した時はすっごい事になってるじゃない。」
『? 最初から見たまますぐわかるじゃん。』
「えーわかんないよ。」
『俺はお前が作るものの方がさっぱりだ。』
「そんなもんですかね。」
『そんなもんなんだろうな。』
互いに目を見て、笑い合った。
けれどすぐに目をそらして彼が話し始める。
『でもさ、ほんとすごいと思うよ。』
「そうかなぁ」
『ただの糸が、っていうのもだけど、心があったかくなるからさ。』
「人の心をあっためて、変幻自在な魔法?」
『そうそう。』
「・・それはキミの作るものの事でしょう。」
『?』
「キミの作るものは、人の心を自由自在に操って・・なのに最後は幸せな気持ちになる。」
『そう言っていただけると有り難い。』
「いえいえ、こちらこそ。」
『誰かを想って作るってことが魔法なのかもな。』
そんな事を言いながらこっちを見る彼に
「そうかもね。」
そう言って意地悪そうに笑ってみたら、少し不貞腐れたような照れたような顔で出ていってしまった。

私はね、キミを想っていろんなものを作ってるんだよ。
寒いのが苦手なのに雪の大好きなキミが、少しでも冬を楽しめるように。
そして春になったら、大好きな桜を楽しめるように。
キミやキミと私の大切な人たちが、少しでも幸せになれるように。
この気持ちが魔法だったら、それはなんて・・・・

『おい。』
「・・・!! コーヒー・・?」
『指冷えたら編めないだろ。』
「えへへーありがと。」
『・・で、今度は何つくってんの。』
「バッグだよ。」
『それは・・あまり冬らしくないような』
「いいんだよ、これで。」
『?』
「これはね、春用のバッグなんだ。」
『今から春用?』
「そうだよ。」

これは、キミが幸せな春を迎えるための魔法だよ。

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