スリープモード

ラジオを聞き終わり、さて今度は何をしようか。
そう思って、はっと気付くと2時間が経っていた。
最近よくある。

寝てるわけでもなさそうだし、かと言って何かしていた記憶もない。
ベッドに入ってるわけでもないし、机に突っ伏してるわけでもない。
はっと気付くと普通に座って、暗い画面を睨んでいる。

たまたま連絡を取った中学からの友人に何気なくこの話をしてみたら
『前からじゃん、それ。』と言われて驚いた。
そうだ、そういえば中学高校も同じようなことがあった。

友達のうちに泊まりに行った時の事、
じっとテレビを見つめて動かない僕にまわりが声をかける。
けれど僕は何も返さない。
おかしいなと思ったまわりが目の前で手を振ったり大きい声を出したりして
しばらくしてやっと反応する。

『パソコンのスリープモードみたいな感じでさーなんか面白いよねww』
彼女はそう言って笑った。

あの頃も、特に大きな悩みもなく疲れているわけでもなかった。
むしろ楽しい事がたくさんあってずっと遊んでいたいと思っていた時期だ。

何となく、先生にこの話をしてみる。
いつも通り淡々と話を聞き、

『原因だとか病気だとか、僕にはわからないけど
 心と体の求めるものが違っているからそうなったんだ、
 くらいに思っていればいいじゃないかな』
彼はそう言って笑った。

遊んでいたい、起きて楽しい事をしていたいと心は思っているけど
寝たい、体を休めたいと体は思っていて。
僕の頭はスリープモードという結論を出した、ということらしい。

『・・・でもそれじゃ、どっちの希望も通ってないですよね。可哀想。』
僕がそういうと
『キミは僕の予想の外を行くから、本当に面白いよ。』
彼はそう言ってまた、笑った。

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