想像

想像する
自分の想像が現実になる想像をする
想像の中の私は何でも出来る
現実とは違うから

地下鉄に乗りながらそんな事を考えていた。
あれ?私は今ベッドの上じゃなかったっけ。
ああ、きっとそれも想像だったんだろう。
早く帰りたいから、そんな想像をしていたんだろう。

そう思ったけれど、何となく帰る気分じゃなくなって地下鉄から降りたくなくて
もう降りなきゃいけないような気がするけど、降りるのをやめて窓を見る。

すると外が見えて、雨が降っていた。
あれ?私は地下鉄に乗ってたんじゃなかったっけ。
ああ、きっとそれも想像だったんだろう。
外が見たい気分じゃなかったから、そんな想像をしていたのだろう。

そう思った時、乗換案内が車内放送で流れて
あ、じゃあ降りなきゃと思い扉を見る。

すると家にいて、パソコンの前に座っていた。
あれ?私は電車に乗っていたんじゃなかったっけ。
ああ、きっとそれも想像だったんだろう。
ふらふらしたい気分だから、そんな想像をしていたんだろう。

そう思い、ふと目の前の箱を見る。
「ここに、青い顔した不気味なこびとがいっぱい入っていたら怖いな。」
そんな事を想像する。
そしてその想像が現実になる想像をする。
想像の中の私は何でも出来る。
現実とは違うから。

想像の中では、にーっと笑った青い顔のこびとが箱にいっぱい入っている。
その想像の中では、これが現実だ。
けれど私は、これが想像だと知っている。
知っているけれど、これは想像ですら手にしてはいけないものだと思った。
箱を閉じ、テープを貼る。
中からはぎーぎーと鳴き声がする。
その声が何だか憎らしくて、箱の横を何回か針で刺してみる。
鳴き声が大きくなった。何だか不快だった。
針の穴をテープで塞ぎお風呂へ持って行き、水の溜まった湯船に沈めた。

これでいい。
そう思った時、聞こえていた断末魔が途切れ
・・・ここにはいたくない
そう思い風呂の扉を見る。

すると部屋にいて、パソコンの前に座っていた。
あれ?私はお風呂にいたんじゃなかったっけ。
ああ、そうだ。それも想像だった。
それにしても変な妄想をしたものだ。

そう思い、ふと目の前を見る。
そこで気付いた。
私の部屋に、こんな箱があるはずがない。
あれ?どこからが想像で、どこからが現実だっけ?
今は想像?現実?
わからない。私はおかしくなってしまったんだろうか。
混乱する。
混乱しながら部屋中を確認する。
あの本がない。
テレビの大きさが違う。
ベッドが違う。
壁の色が違う。

おかしい、おかしいおかしいおかしい。

混乱が恐怖に変わる。確認をやめる事は出来ない。
扉を見る。
その先にはさっきの想像を同じ、ミニキッチンとトイレとお風呂、そして玄関が見える。
そこで気付く。
ああ、これは想像だ。
だって私は一人暮らしじゃないもの。
恐怖がすっと消え、「ああよかった」と呟く。
すると、聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。
ぎーぎーと、ちいさな鳴き声。

「まさか」

そう思い、再び目の前の箱を見る。
にーっと笑った青い顔のこびとが箱にいっぱい入っている。
私は、これが想像だと知っている。
けれどその想像の中では、これが現実だ。

対処方法はわかっている。
箱を閉じ、テープを貼る。
中からはぎーぎーと鳴き声がするけれど、
それをそのままお風呂へ持って行き、水の溜まった湯船に沈める。
それだけだ。

「さっきもやったんだから。」
「これも想像なんだから。」

言い聞かせるように呟き、さっきと同じように箱を閉じ、テープを貼る。
あとはお風呂へ行ってこれを沈めれば・・・
そう思い、箱を持って扉を見る。

立ち上がろうとした瞬間、ちくりと手に痛みが走った。
箱を見る。
何本か針が飛び出している。そのひとつが刺さったらしい。
驚いて箱を落とす。
衝撃でテープが剥がれ、中からこびとが出てくる。
ああ、どうしよう。これじゃ想像と違う。
どうなるかわからない。また針で刺されるかもしれない。
捕まえなきゃいけない。でも怖い。

そう思っていると足の裏を針で刺された。
もう逃げるしかない。
傍にあった上着とバッグを手に取り、扉を開け、その先にある玄関を見る。

するとベッドの上にいて、部屋は暗くて
あれ?さっきこびとが・・・それで私逃げようと・・・・
・・・・・ああ、そうか。全部夢だったんだ。
普段いろんな事を想像し過ぎて、そんな夢を見てしまったんだろう。

そう思い、ふと窓の外を見る。
暗いはずのそこにはさっきのこびとと同じように手に長い銀色の何かを持った、青い顔がにーっと笑っていた。

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