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青春

以前勧められたアニメをふと思い出して今更見ている。
オープニング可愛いなぁと思ったり、とか
あの時のやりとりを思い出しながら歌詞を見て勝手な想像をしたり、とか
そんな事をしていたら、ふと中高生だった自分とそのまわりを思い出す。
僕もそのまわりも、例に漏れずそれぞれなかなか痛々しい青春だったと思う。
派手に痛さをひけらかしていた奴、
普段は普通の振りをしているが、ひとりこっそり痛さを楽しんでいた奴、
・・・まぁ他にもいろんな奴がいたけれど、
今思えば一番タチが悪く怖いとさえ思う、ある女の子を思い出した。


彼女の第一印象は『パシリの人』だった。
知り合いの知り合いの知り合い。
第一印象が出来る前に挨拶をしたかもしれないが、全く印象には残っていなかった。
それくらい、興味のない相手には印象を残さない人だったので、
その彼女が突然僕のクラスへ来て僕の名前を呼び
『すみません!師匠の為に教科書を貸していただけませんか!』と叫ばれた時初めて
『なんて楽しそうにパシられる人だ!』と感動した。
それが、多分中学1年の秋。
彼女が、2人目のついていく人を見つけた時期だ。

僕はその時から彼女に興味をもち、彼女やそのまわりに近付く為、その時仲の良かった人たちと距離を取った。
そして、彼女に少しでもつながる相手との交流を始めた。

彼女のまわりはキャラがしっかりしている奴ばかりだった。
多少濃淡に差はあれど、それぞれ被る事なくしっかり悪目立ちしていた。
既になかなかの痛々しさを持っている奴らばかりで、これは自分にぴったりだと思った。
そして初めて心から友達だと思える人たちに出会った、と思っていた。

彼女のまわりとの交流が深まった頃、やっと彼女は僕を認識し始め
互いにあだ名で呼び合うようになった。
当時の僕はそれで完璧だと思い、満足し、
彼女と彼女が師匠と呼ぶ『ついていく人』とそのまわりの痛々しい奴らとたくさんの思い出を作っていった。

が、途中で飽きた。
飽きてしまった結果、また違った方向で痛い事になってしまった。
この結果が、彼女に僕自身を見るきっかけを与えたと、今は思う。

本筋に関係はないので、割愛。
彼女が僕を『友人A』から『他と違う痛い人』という認識に変わった、という事だけ伝わればいい。

やっと本当の意味で彼女が僕を認識するようになった頃、僕らは高校1年になった。
その頃彼女は、師匠と呼んでいた人にも飽き、ぼんやりと日々を過ごしているようだった。
僕はというと、痛さが暴走して本当におかしな方向へ行ってしまっていた。
彼女はそんな僕を見て初めて興味を抱いたらしく、気付いたら傍にいるようになった。
僕の話を聞きたがり、自分の話を聞いてほしがった。
たくさん話して、いろんな彼女を知った。
けれど、先ほども書いたように僕は既に彼女や彼女のまわりの人間に飽きていた。
だからずっと彼女の喜びそうな相槌を打って、聞き流していた。

これがよかったのか悪かったのかは、今でもわからない。
ただわかっているのは、

『その時の僕は彼女に選ばれなかった』
これだけだ。

これまで彼女とは2度距離が離れた。
1度目は僕が高校を中退した時。
2度目は僕が長く付き合った人と別れた時。
離れたはずだったが、いつのまにか彼女とは年に何度か連絡を取り合う関係に戻っていた。
たいした付き合いではない、それこそ出会った頃と変わらない関係になった。
これくらいが丁度いいなと感じた。

何故なら彼女は自分1人では前に進まないから。
『この人についていけばどこかに行ける』、そう思える相手を決め、その人の為に生きているから。
どれだけ玩具のように使われようと、パシリにされようと、人として扱われていなくとも
自分がついていけると思った相手が近くにいれば、それで幸せなのだ。
近くにいてもらう為なら何でもする。
コスプレだろうと、記憶をなくす事だろうと、・・・性的な嫌がらせ、であろうと
自分は平気、という顔をして、楽しんでいます、という顔をして
相手の気を引く為に興味のない事したくもない事をしているのだ。
そして、ついていく対象・もしくは候補になった人に、それをそのまま笑顔で話すのだ。

僕はそれに気付くまでにすごく長い時間がかかってしまったけれど、
彼女のまわり、何より彼女自身は何も疑問を持っていない様子なのが気持ち悪い。
そのくらい、興味のない相手には印象を残さない人だったのだから。


久しぶりに彼女に連絡をしてみる。
『最近はどう?今も前話してくれた人と仲良くしてるの?』
彼女からの返事は早かった。
『いいえ、疎遠になってしまいました。』
『ところで最近は如何お過ごしですか?』
『また以前の、いえ、今まで以上に、仲良くしていただけたらと思っております。』
『これからは皆ではなく、ふたりで。』

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