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ロバート・キャパ 写真展を見て思ったこと

優れた報道写真は、強い説得力を持って、われわれに迫って来る。

甘いマスクの風貌のロバート・キャパの顔写真を、どこかでご覧になったかたも多いだろう。
没後70年を記念して、写真展が開かれた。

ロバート・キャパは、本名はフリードマン・エンドレ(Friedmann Endre [ˈfriːdmɒn ˈɛndrɛ])1913年生まれ、ハンガリー ブダペスト出身のユダヤ教徒だ。

スペイン内戦
日中戦争
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線
第一次中東戦争
第一次インドシナ戦争
に従軍カメラマンとして戦場に赴いた。

ロバート・キャパの活躍については、すでに多く語られているので、ここでは、今回の写真展を見ての個人的な感想を話してみたい。

上質の絵画のような構図の素晴らしさを感じたのは、日本の風景写真だ。

著作権が没後70年を経て切れたので、一部を除いて撮影可能で、会場の説明によると、写真を広めてほしいとのことだ。多少見にくい写真もあるが、ご紹介したい。

ピクニックする家族 大阪城内
岩の上で写生する学生たち 大阪城内
赤ちゃんをおんぶする女 焼津


第一次中東戦争・イスラエル建国当時の写真もあった。写真に添えられた説明文には、疑問を感じるものもある。写真そのものは、その時代の貴重な記録だが、パレスチナ人側の視点は、いっさい感じられない。そこがユダヤ教徒のロバート・キャパの限界かもしれない。

小さな男の子を連れて荷物を運ぶ女
イスラエル建国の無謀さには
眼が行かなかったのか?
母親と赤ちゃん
キブツが作られたのは事実だけれど、
パレスチナ人の土地を奪った事実に
全く触れていない。
この説明文ではもともと住んでいた
パレスチナ人の被害を
知ることが出来ない。
新移民のためのシャール・アーリア
一時滞在キャンプの子ども
「入植」するユダヤ教徒は、
ナチの被害者から
パレスチナへの加害者になることに
気づかなかった、
あるいは気づこうとしなかった。
集団農場で働く女たち
パレスチナ側の視点は、一切無し
イスラエルの蛮行が続く今、
一方的な説明文になっている。
目の不自由な移民とその家族のための村で、 
共同食堂へ案内される3人の男たち
「これがイスラエルだ」「イスラエル・レポート」
逆の立場からのパレスチナ・レポートも
読んでみたい。

その時代の有名人の写真も多い。
まるでその場にいるかのような臨場感がある。

アンリ・マティス
アンリ・マティス
アンリ・マティス
パブロ・ピカソ
パブロ・ピカソ
パリ解放後のピカソのアトリエ
蒋介石総統 漢口 中国
マルクスの肖像画の前に立つ周恩来


映画「汚名」撮影中の
イングリット・バーグマンと
アルフレッド・ヒッチコック
エリザベス2世の戴冠式を見学する
ハンフリー・ボガードと
ジョン・ヒューストン
小川を渡るゲーリー・クーパー
映画「凱旋門」撮影中の
イングリット・バーグマン
芝生に座り酒を飲む
アーネスト・ヘミングウェイ
鏡を通してジョン・スタインベックを
撮影するロバート・キャパ



戦時下の庶民も撮影している。

空襲を受けて地下鉄構内に避難する市民たち
マドリード
パリ解放を祝うパレードを見守る男と
肩車の少年
パリ解放を祝う人々
第一次世界大戦のヴェルダンの戦い20周年を
記念する平和集会に参加したドイツ代表団は
1936年この時、鉤十字の旗を振っている。
ドイツ兵との間に子供をもうけた罰として
髪を剃られ通りをゆくフランス女性
オマハ・ビーチに上陸するアメリカ兵
ドイツ軍が去った方角を
アメリカ軍将校に教える
シチリアの農民
オランダのウィルヘルミナ女王の訪問に伴う
パレードを見る少年
寝具に座る男と椅子に座る少女
ツール・ド・フランスに出場選手のひとり
ピエール・クロワレックが経営する
自転車店の前でレースを見物
ツール・ド・フランスに出場選手のひとり
ピエール・クロワレックが経営する
自転車店の前でレースを見物
空襲警報が響く中、避難所に急ぐ人々
難民避難センターでの少女 バルセロナ1939年
フランコ反乱軍の空襲で破壊された
建物の瓦礫の中に立つ女


ロバート・キャパは日本での撮影のあと、インドシナ戦争の取材中、地雷で命を落とした。

ロバート・キャパ 最後の写真
インドシナから母に宛てた手紙


「わたしの夢は永遠の失業である」
と語った戦場カメラマンのロバート・キャパ。残念ながら、戦場カメラマンを失業する日は、訪れていない。

しかしもしいま生きていたら、イスラエルだけでなく、ウクライナやガザやヨルダン川西岸に行くに違いない。いやそう思いたい。

彼なら、きっとこの戦争は決して宗教対立ではなく、富める者が生み出した矛盾の果ての悲劇だということに、気づくと思うから。

愛溢れるロバート・キャパの写真を見れば見るほど、そう思う。

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