見出し画像

自分の心がわからなくなってしまった時は


普段の私は急がないし、怒らない。


信号が点滅していたら「次にしよう〜」とのんびり歩くし、電車で割り込みをされたら、そんな時もあるよなあと思うだけ。


そんな自分の穏やかさが好きだし、なるべくならそんな自分のままで生きたい。


だけど現実は「穏やかではいられない時間」の方が多かったりする。

その顕著なものが仕事だ。


週に5日、1日平均8時間。
日々細かく区切られた締め時間は、私を早く早くと責め立てる。


週に2.3日のテレワーク生活も、気付けばもうすぐ1年になろうとしている。


環境には慣れたけれど、普段と変わらないどころか増えた仕事をこなすのに、最近は毎日がタイムトライアルみたいだなと感じている。

やってもやっても降ってくる仕事、夢の中でもタスクをこなす日々。



と、ここまで書くとただの愚痴みたいだけれど、仕事の面白みややりがいみたいなものもちゃんと、ある。


むしろここ1−2年でようやく自分の役に立ちたいという思いに、自分の出来る事が追いついてきたように感じている。


だからこの仕事がどうしても苦痛で、今すぐにでも辞めてしまいたい!というわけではないけれど、普段の「穏やかな自分」の時間が減っていくにつれ、本当の自分が薄れていくんじゃないかと思う時がある。


私だけど、私じゃない。




この感覚をうまく言葉にできたらいいのに、出てくるのは「もやもやする」というような抽象的な言葉だけで、自分のことなのに、自分の心の状態を言葉にできないもどかしさが募る。


そしてそのもどかしさがピークに達すると、私は本屋さんに駆け込む習性がある。



ふうっとひと息ついて心を落ち着かせ、興味のあるなし関係なく、本棚1つ1つを隅から隅まで見て回る。



そうして先入観なく、散歩するように歩いていると、たいていどこかの棚で「なんだか気になる本」に出会う。この本はタイトルが心に刺さったとか、カバーの写真に惹かれたとかそんな本で、「購入に至るかわからないけれど私の心に触れた本」だ。


さっそく手に取ってぱらぱらと見て、それがピン!とくるものだったら買って帰る、そうでなかったら本棚に戻す、なのだけど、この「なんだか気になる本」に出会うことがとっても大切なことだと思っていて、



「気になる本は、自分の心に触れた本」



だからこそ、その本を見つけることで私は自分の心の一部に触れることができるように感じる。言葉にできない、よくわからない心の状態のヒントをその本が教えてくれるのだ。

もちろんピン!とくる本と出会って、買って帰った時の、なんだか心がほくほくする感じも大好きだ。
そんな本と出会いたくて本屋さんに行くこともある。

けれど、もう一歩踏み込んでみると、私はこの「気になる本」との出会いを通して、自分の心を知るために本屋さんに駆け込むのだろうなあと思った。


だからもし今、自分の心がよく分かんないなともやもやしているのなら、少し時間をとって本屋さんに行って見てほしい。


そして1つ1つの棚をじっくり見て欲しい。


きっと、その棚のどこかに自分の心を表す言葉が見つかるから。



***

ここからは、私が最近手にした本の紹介を4冊ほど。


フランスの小さくて温かな暮らし365日

フランス在住で、トリコロル・パリという情報サイトも運営されているお2人が書いた、フランスの365日がぎゅっと詰まった本。

実はフランスにそこまで憧れが無いので、普段はフランスのガイドブック系はスルーなのだけど、これはパラパラと見て思わず買ってしまった。

フランスの魅力はもちろんのこと、豆知識やちょっとへんてこなところまで、フランス在住だからこそ分かるあれこれが詰まっていて、表面をなぞったような綺麗なとこだけじゃなくて、リアルも知れる。そこにものすごく惹かれた。


自分の心がわくわくするのは、「異国の地の、新たな魅力を知ること」だったなあと改めて感じさせてくれた1冊。


自由というサプリ

作家兼クリエイターのいとうせいこうさんと、ミュージシャン兼精神科医の星野概念さんによるトークイベントを書籍化したもの。

事前に募集したお悩み相談に答えるというもので、全てが会話形式で進んでいくから臨場感があって、実際にイベントに参加しているような感覚になる。
本なのに、その場の空気感が伝わってきて、心があったかくなる、まさにサプリのような本。

今、ちょっとだけ心が荒んでいて、ほっこりさせてくれるような物を求めていたんだなあと気付かされた1冊。



累々

元アイドルで、女優・作家としても活動されている松井玲奈さんの本。

ある時は私、ある時は結婚相手、ある時はパパ活のお相手などいろんな視点で描かれる5人の女性の物語。

読み進めるにつれて、5人の女性の関係が繋がっていく感じが秀逸で、伏線を確認しに何度もページを巻き戻した。

きっと誰にでもこんな顔はある。綺麗なところばかりじゃなくてちょっとダークなところも含めて「人」なんだなと感じさせてくれた。

嫉妬したり、人と比べたり、自分の嫌な部分ばかり見えて苦しいなと思っていたけれど、私だけじゃないんだと肩の力をゆるめることができた1冊。

ここじゃない世界に行きたかった

文筆家の塩谷舞さんが書かれたエッセイ集。

「バズライター」という異名を持ち、書いた文章は必ずバズると話題になった彼女が、バズる文章でも、大衆に受け入れられる文章でもなく、彼女自身から湧き出る思いを言葉にした、ありのままの魅力が伝わる本。

彼女が紡ぐ文章は、どこか繊細で、儚げで、静謐で。

家族の前での私、職場の人の前での私、友達の前での私、と誰かに見せる私だけじゃなくて、自分しか知らない私のことも、同じくらい大切にしたいと思わせてくれた1冊。


***

それぞれの本が、それぞれの視点から私の心の声を時に代弁し、時に慰め、時に励ましてくれた。
これから先も、きっと私は何度も本屋さんに駆け込むのだろう。
その度にどんな出会いがあるのか、今からとても楽しみだ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?