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#71 妹とおばちゃんと私

少し年の離れた妹がいる。
私はすっかり40歳を超えているので、妹ももう立派なアラフォーだ。

私は3人きょうだいの一番上で、上から私、弟、妹という並びだった。
姉で良かったと思ったことは正直、ない。

昔、おばあちゃんが旅行のお土産で家族全員にお箸を買ってきたのだけれど、私の分には「お姉ちゃん」妹の分には「わたし」と書いてあって、それをひどくうらやましく思った記憶がある。
私は確かにお姉ちゃんだけど、私だってわたしなのに。
そんなつまらない子どもの妬みを今でもずっと覚えている。

私には娘がいる。
娘は弟と妹のことを、それぞれ「○○おじちゃん」「○○おばちゃん」と呼んでいる。
弟は娘や私からおじちゃんと呼ばれることに特に抵抗がないらしく、呼び方が変わってもいつも通りだった。プレゼントをもらったり遊んでもらったりするたびに「○○おじちゃんにお礼しなきゃね」となどと教えていた。

その感覚で「○○おばちゃん」と娘に言っていたら、苦虫を噛み潰したような顔の妹から苦情が来た。
『(娘)ちゃんからおばちゃんと呼ばれるのはいいけど、お姉ちゃんから呼ばれるのは嫌』
はあ、そうですか、と、目からはうろこが、口からはため息が漏れた。
この私の対応を、冷たい、心がないと思うひともいるかもしれない。


妙齢の女性が「おばちゃん」と呼ばれていい気分にならないのは、私だって百も承知だ。
ただ、そしたら娘の前で私は妹をなんて呼んだらいいのか。
○○ちゃん?
いやだ、気持ち悪い。
いまさらあなたにちゃん付けなんてできるもんか。
お子がいたら「○○ちゃんのママ」で通せたが、あいにく彼女は悠々気儘な独り身だ。


逆に、自分は弟や妹からどう呼ばれているか思い返してみた。
弟も妹も、私を「姉さん」「お姉ちゃん」と呼ぶ。
名前で呼ばれたことは、この歳になって気づいたが一度もなかった。年上のきょうだいだとよくあることだろう。

それが今になって功を奏すなんて!
「姉さん」だったら、いくつになろうとも呼び方を変える必要はない。
いや、別に呼び捨ての名前だってそのまま通せばいいのだけど、なぜか娘の前できょうだいを呼び捨てにしたくないのだ。
「○○おじちゃん」「○○おばちゃん」は、私なりの丁寧な表現だったと後から気付く。呼ばれた当人にしてみればそんな風には思わないだろうけども。


しかし、思い返せば私の母も、自分のお姉さん、つまり私の伯母を呼ぶときは「○○さん」と呼んでいた。
普通、自分のきょうだいを、おじちゃん、おばちゃんとは言わないものなのだろうか。
娘がもう少し大きくなったら、おじちゃんではなくおじさん、おばさんと呼ぶようにはなるだろうけど、そのくらいの違いしか今は想像できない。


まあでも確かにね、おばちゃんと言われていい気分になる人はいないでしょう。それは理解しているのに、身内のこととなるとその辺のフィルターが甘くなってしまう。よくないね。自分がおばちゃんと呼ばれる機会があまりないせいもあるし、自分のことをいつまでも若いままでいると思い込んでいる妹の気持ち悪さを見てしまったのかもしれない。それで少し意地の悪い考えになってしまった。妙齢の女性をおばちゃんと呼んだことを反省して、これからは娘の前でだけ○○おばちゃんと呼ぶことにする。


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