#18 避けますか、避けませんか
免許はあるけど運転しない、いわゆるペーパードライバーの私は、普段から徒歩か自転車で移動する。子どもの通園で3年、そのうち2年は通勤も兼ねて、それなりの時間を歩道で過ごしている。
自転車の時も歩くときも、割と遠くを見ながら、向かいからくる人を自分から避けるスタイルで過ごしている。一度だけ足元の覚束ない自転車のおばあちゃんと曲がり角でぶつかりそうになってしまったことがあるけど、それ以降は事故になりそうな経験はほとんどない。念の為追記すると、その時はおばあちゃんが右側だった。おばあちゃん曰く私の自転車のスピードが速かったそうなので、その後はカーブ時の速度にも気を付けている。
ある時、ふと思いついて、歩き同士で私が避けなかったら目の前の人はどうするだろうという実験をしてみた。結果、年配の男性には面白いほど道を譲られなかった。おばちゃんは割と避ける。もちろん避けてくれる男性も避けない女性もいるので、あくまで私調べだ。杖をついて歩くような人は老若男女問わず除外した。若い人は私が試した範囲では明確な結果は出なかったけど、歩きスマホなんかしてるとほんとにギリギリまで避けなかったりして危なかった。
私の住んでいる地域の話で、更に私の主観だけども、長い事主婦をしてるような年季の入った女性陣は比較的道を譲ることに抵抗がない。自分が決めた道を頑なに進むよりも、ぶつかって嫌な思いをするのを避けることを優先する。一方、人生の多くの時間を大黒柱として過ごしてきたような男性陣は、一度試してみてほしいのだけど、本当に驚くほど進路を譲らない。こちらが相手より小柄か、年下の女性ということも少なからず関係していると思う。
普段あまり通らない狭い歩道でかち合いそうになったとき、目の前のおじいちゃんから「左行け、左!」と怒鳴られたことがある。咄嗟に「あら知らないんですか、右ですわよ」というセリフが脳内に浮かんだけど、すんでのところで飲み込んだ。
なんでその前に避けられなかったかというと、混雑していてじいさまの左後ろにも別の歩行者がいたからだ。おじいちゃん、貴方は気付かないかもしれないけど、貴方の横にも後ろにも人がいるんですよ。もしかしたらじいさまにとっては生活道路で、日頃から通勤者で埋まるストレスが爆発しただけ、とかかもしれないけど、たまたま真正面にいた私にとってはとんだ災難だった。
そんなことを先日家族と話していたが、もしやこれって危機回避能力そのものなのでは。徒歩や自転車で事故らないように立ち回るのはもちろんだけど、それ以外の、日常や職場でどう振る舞うかという部分。あくまでイメージだけど、自分から避けるタイプは人とトラブルを起こすことは少なそう。避けられるのに避けなかったり、歩きスマホでぶつかりそうになるタイプは割といらん面倒を起こしてそう、みたいな。
流石に歩道で出会った人の追加調査はできないので真相は闇の中だけど、もし気になる人がいたら試してみてほしい。そして私は今日も、やっかいそうなおじさんを避けながら買い出しに向かうのだ。