半分の山食パンにバターとたまごペースト、それからミルクコーヒー。
食事は生きる力の源だ。
そう思うものの、ついおざなりになってしまう。食べたいものも思いつかないし、用意するのも面倒くさい。食べたくない。そんな日々をもうどれくらい繰り返したのだろう。
思い出をなぞって、過去に通った店に行くことはあった。そして思い出の味を食べた。
けれど私は、その料理が食べたかったのではなく、ただ友人との思い出に浸りたかっただけだ。食欲というのとは、少し違ったのだろう。
しかし、ふらっと立ち寄ったチェーン店で、久しぶりに食べたいと思った物があった。用事までの待ち時間を過ごすのに丁度いいと思って入った店だ。その日は昼時には早くて、飲み物を頼むと無料でパンがついてくるモーニングサービスの時間だった。
私は、そのおまけのパンを食べたいと思った。
メニューの写真にこんがり綺麗な焼き目を付けて写っている、半分の食パン。トッピングを選ぶことが出来て、さらにバターも無料で頼めるらしい。
甘いものが得意では無い私は、あんこは遠慮してたまごペーストをつけた。そしてもちろんバターも。たっぷりサイズのミルクコーヒーが主役のはずなのに、手元に届けられたらもうパンに釘付けになった。
表面がカリカリで中はふわふわもちもち。自宅でもこんな風に焼きたいものだ。見た目もいいし香りもいい。
そんな魅力的なトーストに、これまた素敵なたまごペーストをたっぷり贅沢にのせてかじる。
ああ、美味しいなあ。
甘さを抜いてもらったミルクコーヒーも、よく合うなあ。
値段にしたら1000円以下の、優しい贅沢だ。
それでもこのパンとコーヒーは間違いなく私の心の栄養になった。
自分の欲しい物を知って、選びとる。人は疲れると、この行動が出来なくなることがある。それでもまた、出来るようにもなる。
当たり前が当たり前では無くなったことを知っているから、その取り戻せた当たり前に喜ぶことが出来る。
コメダ珈琲のモーニングに、人知れず救われた話。
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