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ドアの向こうへ vol.2

                           蔵 昭健 作 
まえがき
 引きこもりは蛹と同じ、じっと羽化するタイミングを考えている。だから強い衝撃を与えないでください。枝に蛹を止めている、細い細い糸が切れてしまいますから。貴方には見えないかもしれないけど、蛹はそれでバランスを保っているのだから

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NPO法人 ~引きこもり支援センター ひだまり~
                        

 ただいまもどりました、そう言って山科は、事務所のドアを冷たい外気を連れて入ってきた。ここは、S市で活動している、NPO法人《引きこもり支援センター ひだまり》の事務所だ。S市の中心部にある7階建てのビルの1階にある。
「お疲れさま、杉山さんの様子どうでした?」
美樹は手元から視線を外し彼に聞いた。
「おそらく居留守です、杉山さんの気配はしますね、ドアの向こうでこちらの様子をうかがっていたような気がしました」

 鳥谷部美樹、この《ひだまり》の代表をしている、主に一人暮らし世帯で、最近増えて来ている、中高年の引きこもりや、その傾向になりそうな人たちの支援するために5年前に設立した。そんな美樹自身も、引きこもりの経験者だった。
「例のツールは効果あるようなの?」
「あぁ・・このチャイムですね」
彼はカバンから見た目はスマホとほぼ同じ形をした、ツールを引っ張り出した。
「はい、結構、効果あるのではと、居住者の方々は自宅のチャイムの音と、似て非なる音がするので、確かめようと、ドアの近くまで寄ってくるようです」
「杉山さんも、ドアの側まで来てくれたから、まずは一歩前進なんですけど、あと少し自力でドアを開けてくれさえすれば」
「そうね、また、様子を見に出向いてみてくださいね」
「承知しました」そう言って彼は席に戻った。

美樹は、自分のあの引きこもりの頃を思い出していた・・・・・・・・

 ドアを開け、いきなり父親が部屋へ怒鳴り込んできた。
「お前は、いつまでそんな、だらだらしているつもりなんだ、会社で嫌な事があったらしいが、そんなことは社会人だったら普通にあることだ、そんなことで子供みたいにいつまでも休んでいたら、ますます差をつけられるぞ」
今にしてみると、父親の行動は、引きこもりをしている者へ、やってはいけない行為、言ってはいけない言葉のオンパレードだ。
だが、私はその言葉を否定できないでいた、父親の言う通り、いつまでも子供みたいだ、とか、仕事がなくなるとか、いざ職場へ出向いても、席があるのかどうか・・・自分が悪かったのでは、と・・・・・

 ことの発端は《上司への連絡ミス》という、良くあるこで片付けられてしまった不本意な扱いを受けたことだった。
このセンターを立ち上げる前、美樹はS市で展開している、OSOBANI株式会社に勤務していた。【身の回りでこんなのあったらいいよね】を形にしてのキャッチフレーズで量販店などへ卸販売を主としている地元の企業だ。そして彼女はそこの商品開発部に所属していた。
 入社して5年目に、自身が開発した新商品の発売チャンスが巡ってきた。そして、そのための取引先の数社を、OSOBANI(株)招いて新商品の大きなプレゼンテーションを予定していた。半年を費やしてやっと新商品の、お披露目の日を迎えることにとても興奮していた。社内デモンストレーションプレゼンでは好評を得ていたので美樹は自信があった。
「この商品は絶対にうまくいく、会社にも認められる。開発部の部長の席もいけるかもしれない」とますます意気揚々としていた。

 プレゼンを明日に控え、最終の打ち合わせをしていた時、美樹の上司の桂木が、こう聞いてきた。
「美樹さん、新商品のモックは手配済みだわよね、いつ納品になるんだっけ、まだ見かけないようだけど?」
「えっ?」美樹は顔から血の気が引いていくのが分かった・・・・・・・
「桂木部長、モックは兼ねてより部長にお願いしてました筈ですが?」
スケジュール帳を見直すが、肝心の打ち合わせメモのところが滲んでいて読み取れない、
あ、この打ち合わせの時カップを倒してしまったんだった。
あわてんぼうだねとか言われて、こぼれたコーヒーを拭きながら、桂木と笑ったんだった。
「部長、その打ち合わせのときに、カップを倒したの事を覚えていませんか?」
「部下の、そんなこと、いちいち覚えてないわよ、それより、どうなのモックは?」
「・・・・・・私は部長、あなたへお願いして、確かPIN-ONEの吉影さんのところへ頼んでおくことになっていた筈です、それを今頃になって・・・・」
「あらぁ、そうだったかしら、私の記憶違いかしら、細かいことは、美樹さんへ任せてたから覚えてないわ、ごめんなさいね、でも、几帳面なあなたのスケジュール帳へ書いてないんだったら、勘違いじゃないの?」
「・・・・・・・」

 桂木淑子は美樹と同期入社だった。美樹と淑子はW大学商学部の同期でもあった。卒業するにあたり、淑子から
「美樹さん、実はね、今度、伯父様がね、新しい会社を始めるの、そこで商品開発などの人材を募集中で私も誘われたんだけど、もし、美樹さんが良かったら一緒にどうかしら」
「私のお父様へ、同期生にとても優秀な人がいるの、と話したら、声をかけみたらって、お父様も言ってくれたから」
淑子の実家はS市でも有名な資産家だった。父親の桂木大樹は【桂木商事】を母体に関連会社をいくつも経営していた。OSOBANI株式会社も大樹の長兄の幹夫に任せて企業することになっていた。
 美樹は、都内の商社へ面接を受けていたが、どれも色よい返事をもらえておらず、就職浪人でもいいかなと、半ばあきらめかけていたので、このタイミングでの誘いはとても、ありがたかった。
「淑子さん、私のようなもので良かったら、ぜひお願いします」
「まぁ、良かったわ、また、あなたと一緒、今度はお仕事だけど、とてもうれしいわ、お父様と伯父様へ伝えておくわね。一応面接のようなことはあると思うけど、詳しいことが分かったら連絡するわね」
「ありがとう、これからも、よろしくお願いします」
そしてほどなく07年の3月に卒業し、4月から二人そろってOSOBANI株式会社へ入社した。

 淑子は入社して4年目に《おしゃれでかわいい箸置き》をカモノハシのキャラクターをデフォルメした新商品を考案した。その《カモノハシ置き》が同年代のOL層に人気を博し、SNSの動画サイトで一気に広まりOSOBANIでの爆発的なヒット商品となった。彼女は美樹より1年早くヒット商品をこの世に送り出し、今の部長の座を射止めたのだった。
だから美樹のなかに、焦りもあった、同期入社の淑子に追い越されてしまった。私だって、いや私の方がデザインセンスだっていい、モックサンプルの製作をお願いているデザイナーの吉影だって、そう言ってくれていた。

「わかりました、自分で何とかします」
「そう、そうよね、頑張ってね、私がいても気が散るでしょうから、お先するわね」
靴音を響かせ桂木は帰っていった。美樹にはその靴音が自分をあざ笑っているように聞こえ、口惜しさと、情けなさで身体じゅうが、震えていた。

 美樹は気を取り直し、デザイナーの吉影の事務所PIN-ONEへ電話かけた。
「OSOBANIの鳥谷部です、お世話になっております実は急なお願いで、吉影さんはいらっしゃいますか?」
「あ、すみません、あ、そうですか、海外へ出張中・・・・明後日の夜まで、そうですか、承知しました。お騒がせいたしました。失礼いたします」
取引先のPINーONEのデザイナー吉影がいないとなると、これは困った、万事休すかと、ふと、美樹の視線の先に、あるものを見つけ、これだっと目がくぎ付けになった。
 それは3Dプリンターだった。わが社にも今月から導入されたのだった。まだ、誰も起動させていない。美樹も3Dプリンターは使ったことがなかった、だが、デザイナーの吉影が不在ならば、やるしかない。


 NPO法人《ひだまり》のスタッフ浅枝由美子は市内のN中学校へ出向いていた。【引きこもり】についての出前授業の為だった。
ベージュ色の建物が柔らかい色を呈しているが、ここN中の先生や生徒たちはどんな顔つき目つきなのだろう?

 由美子は一時、落語家を目指していたことがあった。このセンターへ入る時の面接で、落語を一席演じたことで、由美子は講話が上手いと認められ、【引きこもり】についての説明会やシンポジュウムなど人前での講話を任せれた。そして、ここ最近は市内の中学校への出前授業が増えていた。
訪問して、いつも感じることは、学校長の人柄がそのまま中学校の【色】に反映されるということだった。

 由美子は親の反対を押し切って、高校を卒業したその日に半ば家出同然のように、電車に飛び乗った。背中の軽いリュックサックに反比例している不安も一緒に背負って午後の人影少ない車両に揺られていた。
電車を乗り継ぎ、都内のK駅で由美子は電車を降りた。駅ビルの時計が午後3時になろうとしていた。ここから徒歩で30分ほどのところに目星をつけていた咄家の家がある。
先ずは、今日の、いや、これからの居所を探さなければ、駅前のビルの地下に24時間営業のネットカフェへ下りて行った。ここも前もってリサーチしていたネットカフェの一つだった。何よりも駅前という立地条件で最優先に選んでおいた。  
受付で宿泊出来るのかを確認してから、連泊の予約を澄ませ、指定された部屋へ入る。完全個室で施錠もできる。
さて・・・・と、椅子に座り、オーダーしたハンバーガーとカフェオレの、遅い昼食を食べながら、携帯で咄家の場所をマップで確認した。
行けるか?門をくぐれるのか?声をかけれるのか?・・・・もうここまで来てしまったのだから、後がない、やるしかない、行くしかない。
食べかけのまま、その部屋を出た。

 「女のやる仕事じゃねえよ、悪いことは言わねえから帰んな!」
けんもほろろに門前払いを喰らった。
由美子は咄家の三章亭勝平の家の前にいた。
「師匠の演目は全て拝見、拝聴して【大工調べ】、【道具屋】、【死神】古典から新作まで大方噺は出来ます。そして師匠の十八番の【井戸の茶碗】も出来ます」と、応対で出てきた弟子らしき人物へ、引き戸越しに食い下がる。そこで弟子が勢いよく引き戸を開けた。
おぉ、ひょっとしたらと思った顔へ、ばらばらと塩を撒かれる始末。
ぴしゃりと引き戸を閉められ、施錠する音までした。
「くそ~~~~」由美子は口惜しがった、解ってはいたが、面と向かって、言われると、ますます口惜しさが、込み上げてきた。
女のやる仕事じゃねぇ・・・か。・・・・・
そんなことだれが決めたんだ!
怒りがこみ上げるが、その思いを抑え、引き戸の前に正座した。
「え~~~毎度バカバカしいお笑いにお付き合いくださいまし・・・・」
「先日の幼稚園での落語研究会での事、この世の中、男と女しかおりませんな・・・・といつものように始めたら、落語家のおねいさん、そんなことは無いよ、ワンちゃんもいるよ、と、こーんなかわいい子に言われまして、そうよ、ねこちゃんだっているよぉ~と、あちらのほうからも、こちらのほうからも、そうよね、フェレットだって、メダカだって、カメさんだって、とだって、だっての合唱が、はじまっちまいましてね。そこへ、ママがね、ぼくの家には、宿六もいるよって・・・・・年長くらいの男の子・・・いやはや、子供は正直ですな・・・」と、由美子は引き戸の前で、一席始めたのであった。

 次の日も、また次の日もと、食い下がる。
寒い日、雨の日、春一番が吹いた日と、ともかく、がむしゃらに通う、居留守を使われる時もある、また別の強面の弟子に凄まれる時もあった。途方に暮れ、疲れた足を引きずって、ネットカフェの場所を変えながら寝泊まりする日々が半月以上続いた。
男と女しかいないのに、男のやる仕事や女のやる仕事なんて分け隔てること自体もう、古臭いのに、「女に負けたくない」っていういわゆる男社会のいつものアレだな、劣等感だな・・・・・などと正論をぶったところで、事は進展なんかするはずもなかった。女の私が出来る噺だってあるはず。
 落語は元々の男の物と知っている、晴れて弟子入りしたとしても15年以上、下済み経験を要する。声色だって習得しなければならない。男が女を演じるのは綺麗だが、女が男を演じるには、それなりの修行を積まなければならない。気持ちが悪いと言われる事もあるらしい。

 翌朝、目を覚ましたが、ネットカフェの椅子に座ったままの寝不足状態、あぁそろそろ高校時代にバイトで貯めたお金も底を付きそうだな。住み込みのバイトを探さなくては、と、心細くなっていた・・・・そんな時、背負っているバックの外側のメッシュ状のポケット、白い封筒に目が止まった。今の今まで全く気が付かなかった。
それは、父親からの手紙だった。父からというのが更に驚いた。
すっかり目が覚めて、手紙を読み始めた。

由美子へ
どうだい、お目当ての噺家さんへは、もぐりこめたかい?
由美子の咄家になる、ということを聞いて驚いた。男社会だし無理だとも思った。
由美子は小さいころから、お話するのが、本当に上手かった、お前がまだ小さいちいさい3歳ころだったかな?お前がいつも眠る前に父さんが絵本や童話を読んであげていたころだけど、急にお前が
「今日はゆみこが、おとうさんに、おはなししてあげるね、ちゃんと、ねんねするんですよ」って、かわいかったなぁ・・・・・
で、どうするのか見ていたら由美子、お前が
何も見ないで、いつも読んであげていた、白雪姫のお話をしゃべり始めたんだよ。覚えてないだろうね・・・・・
そりゃもう驚いたのなんのって、慌てて母さんを呼びに行って、二人で由美子を間にして寝っ転がって聞いていたんだよ。
そんなこと父さんもすっかり忘れちまっていて、お前が家を出るために少しづつ片付けていた部屋、お前がバイトへ行ってる時覗いた部屋、机の横の本棚で白雪姫に目が止まってね。まだ持っていたんだと驚いて、このことを思い出したのさ。
実は、俺も咄家になりたかったんだよ。母さんへも言ったことはないけどね。だから、由美子が咄家になるって聞いた時は、うれしくも、ちょっとくやしくもなった。それで反対したのかもしれない。すまなかったね。
子供が羽ばたいて行こうとするのに、なぜ親たちは、反対するのだろうって思っていただろうね。自分もそうやってやりたいことを見つけて反対を押し切って進んで来たのに、忘れちまうんだね。
思っているほど簡単には弟子入りは出来ないかもしれないけど、由美子の気が済むまで挑戦しておいで、当面のお金、現金は物騒だからバンクカードと父さんの実家のカギを渡すよ。実家は何度か行ったから、場所は分かっているよね?
今は、誰も住んでいないから、気兼ねなく使いなさい、そこは、たまに都内へ仕事に行ったときに様子見がてら帰っていたから、必要なものは全て揃っているからね。
長くなりました。体に気をつけてね。応援しているよ。
そして、いつでも帰ってきなさい、待っているから。

                      咄家を挫折した父より

追伸
由美子、落ち着いたら電話頂戴ね、体に気をつけて、無理しないでね。

                             母より

 最後の方は泣きながら読んでいた。そして周りに憚らず、声に出して思いっきり泣いた。
分かってもらえた、うれしさと、両親の愛情と明日からの住む場所とお金のあることの安心感からか、こっちへ出て来てから初めてネットカフェで熟睡が出来た。


「師匠、ね、師匠、また、あの娘、来ていやすよ。水でもかけて来ましょうかい」
「よしとくれよ、翔平、そんなことしたら、近所でのあたしの評判が悪くなっちまうよ」
「どれ、あたしが行って、諭して来ましょうかね」
そう言って、どっこらせと立ち上がり、師匠の三章亭勝平は玄関まで出てきた。
引き戸越しに、そこへ座っている姿が見えた。おや、おや、何か言ってるよ・・・・・

「これ、そこの屑屋、そうそう、お前さんのことだよ、傘を上げて、そなたの顔を見せてもらえぬか」
「ひえ・・・・・どうか命だけは、ご勘弁を、命だけは・・・」
「な、何を申しておるのだ、おぉおまえか、ずっとお前を探しておったぞ」
ん?この娘【井戸の茶碗】を演じておるのか?
 勝平は玄関の上り板間に座り直して由美子の噺を聴いてみることにした。

噺は進んで、いよいよ、下げになった。
「いや、磨くのはよそう、また小判が出てくるといけない」
話し終わるとその娘は
「ありがとうございました。今日お聴きくださったかは分かりませんが、私の覚えている噺はこれで全部です、もう後がありません。それでも、明日また伺います」と娘が頭を下げ、立ち上がった影が見えた。
 三和土に足袋のままおりた勝平は、引き戸を勢いよく開けた。

「ちょいと、お前さん、俺がやってい副業をやってみないか」と試すように声をかけてみた。
ちょっと間があったが、娘は直ぐに
「それなら知ってるよ、あたまにドの字が付くやつだろ」
「なんだ知っていたのか」と勝平。
「うん、泥棒!」と娘
「バカお言い、道具屋だよ・・・」
勝平はにやりと笑い、そして
「お前さん、名前は、なんてんだい」と目の前の娘に聞いた
「は、はい 浅枝由美子です」直立不動で応えた。
「あさえだゆみこねぇ・・・・何だかスズメでもとまりそうな名だねぇ、ま、さ、こっちへお入り」

「さぁて、なんでまた、こんなお若い娘さんが、あたしのところを訪ねたんだい?」
勝平の問いかけに、由美子はずっと咄家になりたくて半ば家出同然のように出てきたこと、その後どんな思いで、ここへ通っていたのか、そして、父母からの手紙も見せた。

「由美子さん、いい、ご両親に育てていただいたわね・・・
でもね、やはり、それとこれは、別よ、お父様の言う通り、噺家の世界も、まだまだ古臭くてね、しかも、一人前になるには15年もかかるのよ、そしてね、女性のお弟子さんを取ると、師匠や本人はいいんだけれど、今度は弟子達が、嫉妬したり、恋愛感情抱いたり、挙句に駆け落ちしたり、といろいろ面倒な事が起きるのよ、その辺りの事は分かるわよね?」
「だけど・・・・」といって由美子の顔を勝平は覗き込んだ。
「その、あなたの心意気いいわね、関心したわ。由美子さん、明日から、家においで」

「えっ、ほ、ほんとうですか?」由美子は驚いたと同時に、涙があふれてきた。
「まずは、3年間弟子になってみるかい?ほら、何事も昔から『石の上にも三年いれば暖まる』と言うしね」
「しかしまぁ、よく今まで通ったわね、今日で何日?え?二十と・・・え?五んち、あらそう」由美子が、泣きながら答えるから、よく聞き取れない。

 勝平は由美子の話から察するに、由美子の父親と同年代と思った。あたしに娘がいたらこんな感じかねぇ、などと、そのうれし泣きなのか安堵して泣いているのか、ともかく涙でぐちゃぐちゃな顔をしている由美子を見てそう思っていた。



《続く》


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