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起きると、特に変わらない朝だけれど妻のゆかりさんが慌てて準備をしていた。おはよと挨拶をすると、寝坊しちゃったんだよね、アラームの後に眠ってしまったと、慌てている理由を聞いていなかったが教えてくれた。ばたばたと、妻が準備をしている中、僕はSNSをチェックした。特にめぼしい情報はないが、インスタグラムで平賀さち枝さんが初日の出を生配信していて、歯を急いで磨いているゆかりさんに初日の出だよ、と教える。ほほほんだ、と本当だを歯ブラシをくわえたまま言う。
家にいても、初日の出を見ることができるので、もう外に出る必要がないのではないかと思ったけれど、最後に初日の出を見たのは、高校生の頃に友人と集まって公園で見たのが最後だった。ずっと見てない。その時、この光景はずっと忘れないんだろうなと友人の誰かが言っていたことだけは覚えている。忘れなかったけれど、ほとんど覚えていない。
ゆかりさんを見送り、止まれの標識で止まっているゆかりさんを撮って、僕も準備を始める。ゆかりさんは仕事、僕は両親とお墓参りに行く。その前にブックオフに寄る。

外に出ると一気に年明けの空気が風と一緒にやってくる。家族連れとすれ違いながら駅に向かう。駅前には人がいない。いつもはたくさんの人がいるはずなのに。24時間営業のお店でも休んでいるところもある。これが働き方改革か。
電車に乗る。もう福袋を持っている人がいた。早い。最速の初売り。電車に乗って本を開く。
読書日記をつけたいと去年から思っていたのに、どう自分の日記と読書を結びつけてよいかわからず、読者日記の本を読む。
柿内正午「プルーストを読む生活」を読み始める。文学フリマで絶対欲しいと思っていた本。ようやく読む。読みたい本はいつも取っておいてしまう。今年はそれをやめたい。いつも消費のようにミステリばかり読んでしまう。
「プルーストを読む生活」を開く。読書日記の本は普通の本より分厚い気がする。家にある読書日記本がただ分厚いだけなのかもしれない。2.3日分の日記を読み始めて、あ、好きだと思った。そして僕が読書日記をつけようとしているのは、まだ読んでいないこの本の影響だと思った。
「小説とは、それが読まれる時間の中にだけ立ち現れる時間芸術だ。」
この文章を読んで、好きだと思った。僕はあらゆる芸術の中で好きなのは生きている今にどれだけ影響を及ぼすことができるのかということで、小説を読んで気づき、景色が変わり、演劇を観て感受性が過敏になっていくような瞬間を大切にしていきたい。
早めに着いたのでブックオフへ向かったが、開店が12時だった。なんと…。

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