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あのとき。

私はたった一度だけ、お笑いのライブを見に行ったことがある。
コミュ障で対人恐怖症の私が、勇気を振り絞って、インパルスの板倉を見るためだけに足を運んだ。
余すことなく鑑賞しようとオペラグラスを持参することを怠らなかった。
ライブ中、2回ほどオペラグラス越しに目が合った。

「……」という表情であった。

大して広くもない会場で、さほど遠くもない座席からそんなもん使ってるのは私だけだったので目立ったかもしれない。
しかし私はひるまなかった。
どれほどの覚悟でここに来たと思っているのだ(知らんがな)。

何事もなく舞台は終わり、私は帰途についた。迎えを呼ぶためにメールしていたら、信号が赤になって目の前にタクシーが止まった。
見ると、さっきまで舞台にいた芸人が乗っていた。そして、彼が。

彼はぼんやりと天神の街を見ていた。私の姿もとりあえず視界に入っているだろう。オペラグラスの女だと気づいてるかしら。
気づかなくてもいいよ。
そんなことはどうでもいい。

ミラクルな瞬間をもらった。
頑張った私に神様がご褒美をくれたんだと、今でも思ってる。

つらい毎日の記録