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『アメリカン・ファクトリー』 中国とアメリカの比較文化学

by 輪津 直美

「アメリカは褒めて育てる文化だ。だから皆自信過剰だ。アメリカ人はすぐおだてに乗るから褒めろ」

中国人は賢く、抜け目がない。表向きには友好的に振舞っていても、裏では相手を注意深く観察し、常に策略を巡らせている。

それに対してアメリカ人の単純さよ。

中国のガラス企業Fuyaoは、GMの工場が撤退してからというもの寂れてしまったアメリカの街に、巨大な工場を建設し、アメリカ人を大量に雇った。

もちろんアメリカ人は大歓迎だ。Fuyaoはアメリカに溶け込む努力をし、米中のコラボレーションはうまくいっていた。

上海のFuyao本社に招かれて中国式の派手な歓迎を受けたアメリカ人幹部には、感激のあまり涙ぐむものもいた。

しかし蜜月は長くは続かなかった。アメリカ人が「組合」を結成し、中国人幹部がこれに激怒したからである。

不可解なのは、労働組合というのは資本主義に対抗するものであり、共産主義の根幹をなすものであるのに、共産主義国家がこれを否定するということだ。中国の会社は自由なように見えて、実は中国共産党の支配下にあり、Fuyaoの本社にも、毛沢東、鄧小平、江沢民、習近平の肖像画がデカデカと飾られている。

最終的に組合は潰され、大量のアメリカ人が解雇され、社内では自由に物が言えなくなった。ミニ中国の誕生だ。

しかしもっと怖いのは、人を解雇した後に、次々とオートメーションの機械が導入されていることだった。もう、中国人もアメリカ人もいらないのだ。



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