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備忘録53 久しぶり

久しぶりに、高校の時付き合っていた恋人に夢で会った。

彼はたまーにあたしの夢に遊びに来てくれて、古い記憶の通り、くしゃくしゃな笑顔で微笑みかけてくれていた。

なんだか、あたしのことが心配で様子を見に来てくれているようだった。

別れの原因は、彼のせいなんかじゃなかった。
大学生になって、何と無く心が離れてしまって、他の人が輝いて見えてしまった。あるあるな理由で別れた。
でもそれを彼に、自分の幼さのせいだと思わせてしまっていた。
あたしが一番幼かった。純粋な彼を傷つけてしまった。

優しくて、純粋で、頭がよくて、穏やかで、猫がとても好きだった。
私の黒い部分を包みこんでくれる、そんな人だった。

ずっと彼のことを尊敬してた。
彼は先生みたいだった。
彼が頑張っているから、あたしも頑張れる。
私のことを上に上に引っ張ってくれる存在だった。

初めてちゃんと恋をして、自分で掴み取りに行った恋愛だった。
『大豆田とわ子と三人の元夫』で石橋静香が
「あたしは、勝って恋に落とすタイプ。」と言っていた。
あたしは真逆で、「負けて恋に落ちるタイプ」。

負けて恋に落ちるというより、
恋に落ちて負けるタイプ。

でも彼のことがどうしても愛おしくて、恋に落としたくて、あたしはその勝負に勝って彼と付き合った。

ありえないくらいいい思い出だ。
五年経った今でも、何にも色褪せず、胸を張っていい人だったと言える。

別れてから数年経って、このnoteを見てくれた彼から一度だけ連絡が来たことがある。

細かい内容は省くが、とにかく「幸せでいてほしい」と言ってくれた。
その連絡に下心なんてなくて、やましい気持ちが一ミリもないことは、私が一番よくわかった。
本当にそんな人じゃないからだ。

大学生・社会人を経て、色んな男性を見てきた。
彼みたいに純粋に人を愛せる人間は、本当に稀である。稀有である。絶滅危惧種だ。

彼は高校の頃から何にも変わっていない。
周りの人を大事にして、自分のことも大事にできる。そんな人だ。

お別れの時、彼はあたしに幸せになってほしいと言った。別れたくないよりも、あたしの幸せを優先してくれていた。
これは彼と私の最後の約束だったのだ。
そのことをまだ彼は覚えていて、というよりかは多分今もそう思ってくれているのだと思う。

そして、自分勝手で最低なあたしに向かって、「いつでも待っている」と言ってくれた。よく覚えてる。
いつも笑っている彼の、見たことないくらい悲しそうな顔も、あの時の空気の湿っぽさも。
あれは確か5月末だった。

こんな良い人を大事にできないあたしに、人を愛する権利なんてないと今は思う。

そして、彼との約束を果たさねばならないと思った。
彼があたしの心配をしなくていいくらい、あたしはあたしを大事にして、幸せに楽しく生きないと。
彼を傷つけた罪は、そうやって償わないといけないと思う。

あたしは彼から大事な感情を教えてもらった。
教科書みたいな人だった。
人を大事にすること、人を愛おしいと思うこと。
全ては彼から教わったものだと思う。

今あたしは元気だよ、上手くやってるよ。
彼に胸を張って言えるように生きねばならない。
一人でも、誰かとでも、あたしは幸せだよと彼に言える生き方をしなければならない。

優しい彼にもう心配をかけないように。
彼に久しぶりに夢で会って、穏やかな気持ちになった。

別れてそろそろ五年経つし、きっと心配してみにきてくれたんだろうな。
ありがとうね。君も元気でね。

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