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備忘録38 始まりの街、下北沢

何かを思い出して、追い風の時の徒競走のような思いきりで、私は今日下北沢という街に向かった。

最近は近所に古着屋ができた事によって、あまり下北沢へ出向かなくなってしまっていたが
久しぶりにあの街に足を踏み入れて、私も下北沢の一員になりたかったのだ。

土曜日の下北沢はひどく混んでいて、前を進むのもやっとだった。
おまけに人々は店をきょろきょろと探しながら歩いているので、やたら歩くのが遅い。

私はこの下北沢の古着屋は、どこに何があるか大体把握しているから、お目当ての店めがけて一直線に歩く事ができる。
加えて私は人よりも歩くのが早いので、そんなゆったりした周りの人に心の中でケチをつけながら下北沢という街を闊歩した。

最近部屋を掃除したついでに、いらない服を売りに出そうと思った。私が今日下北沢に出向いた理由の一つでもある。

結果的に着なかった服たちが3500円くらいになって、思わぬ儲けをしたと笑みをこぼしながら帰る事になる。

大学生の時は下北沢が定期範囲内だったため、よく大学の昼休みに授業をサボりながら下北沢を練り歩いていた。

そして無論友達ができなかったので下北沢で美味しそうなお店を見つけては入り、知らない店で知らない人たちの空気を吸いながら、一人でご飯を食べていた。

そのせいなのか、やたらと私は一人で街を彷徨くことがあり、ご飯も一人で食べるのがかなり好きである。

一人で、誰も知らない私として街を歩くことが好きなのである。
だから今日下北沢で二人ほど知り合いを見かけたが勿論無視をした。
"そういう時"の私は誰も知らない私になっている。私しか、私のことを知らない。
つまり今私が持っている繋がりとは全て遮断している状態なのである。

具体的にいうと、私は一人で出かける時と友達といる時では、服装が大きく違ったりする。
一人の時にとびきりの洋服を着ている私は、知人が誰も知らない「私」なのである。

そんな暗い話は置いておいて、私は下北沢がとても好きなのである。
古着屋が多いとかそういう単純な理由ではない。

人々がごった返していたり、歩けば歩くほど、知らない道が増えていく。まるで道が生きているみたいに、知らない道が沢山あり、それぞれの道が違う顔を持っている。そして新たな建物が頻繁に建つし、喫煙所も多い。

下北沢は生きていて、私は若い年齢をずっと下北沢と一緒に生きてきた。

私が初めてこの地に足を踏み入れたのは、確か中学2年生の頃だった。
人と違うものが好きだった私は、当時親友だったもっちゃんを連れて下北沢へ遊びに行った。

そこから洋服を好きになって、数々の恋人や友達と一緒にこの街を歩いた。
そういえば今の恋人と初めてデートした時も下北沢に行った気がする。飲めもしない酒を飲んだ気がする。

ある恋人と、数えきれないほど下北沢に行った。
本当に、数えきれないほど。
二人して大して金もなくて、服なんか沢山買えやしないのに、なんとなく下北沢へ行った。

これが可愛いだのあれがいいだの、買いもしない服を散々査定した。買ったときもあった。
それが私は好きだった。
ウインドウショッピングをして、この人の好きなのはこういうのなんだって、知ることが好きだった。

私も、いつかその人になれる気がしていた。

その人と最後に遊びに行ったのも確か下北沢で、帰り道、泣いて帰った気がする。
この街は、最悪と最高が混じり合った街なのだ。

だけれど私はこの街が好きだ。
一人で来ることが、特に好きだ。
当てもなくふらふら歩いて、優柔不断なものだからすぐには買うものを決められず、今日だって下北沢を何周もした。なんなら三軒茶屋まで行って下北沢へ戻った。

好きに歩いて、知ってる店はもちろん、知らない店に入って、新しい下北沢を知る。

そんな散策を、私は飽きもせず何年も続けている。

今日の音楽のお供は、天国旅行、midori、川本真琴、BiSHだった。

今日で9月が終わる。終わる。やっと。
長いようですぐに流れていく年月に、最近驚きを有り余らせている。

こうやってすぐに人々は老いてシワシワになっていってしまうのね。
甘いものとか脂っぽいものを、食べれるうちに食べとくんだ。

10月の目標は節約です。
新しい季節を、楽しもうね~

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