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大腸の乱

ここ一か月ほど胃腸の調子が悪く、クリニックに行って薬を貰っているが今一つ良くならない。元は胃の具合が悪かったのだが、今は腸のほうが悪い印象で、起床後や食後に驚くほどの腹鳴が聞こえる。ほぼ毎日下痢をしているという事実が受け入れがたく、トイレに行くのが怖くなった。 原因は不明である。消化器というのはそういうものらしい。最悪の可能性は癌であるが、年齢からすれば考えにくい。その次に悪い潰瘍性大腸炎であるとすれば、下痢は更にひどく、粘血便になるらしい。そのあたりを踏まえると、過敏性腸

    • 正常性バイアス vs. 心配性

      最近、どうも胃腸の調子がよくない。いわゆる「健康的な便」には二週間ほどお目にかかれていない。腹にガスの溜まった感覚がある。食事量が七割くらいになった。 よく胃腸の不調と精神面の不調が相互に影響するといわれるが、そのせいだろうか、病気への不安が日に日に増している。だいたい胃腸の具合というのは自分の目で見てわからないから困る。大腸に至っては痛覚神経がないから、何か問題があっても腹痛すらほとんど生じないらしい。未病も軽い病気も癌も、よく中を見てみない限り区別がつかないそうだ。

      • こわがり

        僕はとにかく怖がりだ。一般に人は怖がりであると思われるのを好まないので、そのことを口にする機会は少ない。しかし、誰にも見られていないときは常に恐怖に支配された行動をしている。 例えば長いリードで散歩している犬を見かけたら、遠回りしてでも道を変える。子供のころ珠算塾の先生の犬に追い掛け回されたり、友達の犬に甘噛みされたりしたことが原体験になっているのかもしれない。 蜂も怖い。スズメバチやクマバチを見かけたらすぐさま来た道を引き返すだろう。正直なところ、ミツバチ程度でもビビり

        • 石田徹也の「飛べなくなった人」

          中学生のころの僕はいわゆる「おたく」だったから、イラストを描く同好会に所属していた。絵は下手だったが、美術室で「おたく」仲間と駄弁りながら気楽にお絵かきをするのは、そこそこ楽しい放課後の過ごし方だった。 この生活は楽しかったけれども弛緩していたので、僕がこの同好会活動について記憶しているできごとは二つしかない。一つは先輩の一人が錯乱して僕の同級生に棒ヤスリを投げつけた事件で、もう一つは表題の、石田徹也の画集のことである。 ある放課後、僕たちがくだらないお喋りをしながら"中

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          宇宙人の電話番号

          小学校高学年の頃、僕は都市伝説オタクだった。僕の通っていた小学校には、(当時にしては先進的なことに)パソコン室のようなものがあったので、暇を見つけては、そこで都市伝説のまとめサイトを読み漁っていた。テケテケ、ひきこさん、紫の鏡といった子供向けの都市伝説の定番から、くねくね、アガリビトなど、掲示板由来のものまで、いろいろな物語を蒐集したものだった。 しかし、怖い話を集めるのは大好きなのに、ホラーへの耐性は全くないから困ったものだ。学習塾からの帰路、雨が降っていると、ひきこさん

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          旅記録① 長篠城と馬場美濃守墓のこと

          長篠城遺構と長篠城址史跡保存館豊橋からJR飯田線に一時間ほど乗ると、長篠城駅に着く。長篠城駅は、無人駅であるどころか、改札口さえ用意されていない。あらかじめ有人駅で買っておいた切符を、乗務員に渡さなければならない。長篠城の遺構を訪ねるためには、駅を出て目の前にある道路を、西に向かって歩く。 初めに発見できる長篠城の痕跡は、搦手門の跡であり、乱雑に積み上げられた石の傍に、「搦手門趾」と書かれた碑が立っている。要するに、この辺り一帯は、既に長篠城の中なのである。そういった視点で

          旅記録① 長篠城と馬場美濃守墓のこと

          多摩民話「るさんちまん太郎」

          桃から生まれたのが桃太郎なら、劣等感から生まれたのがルサンチマン太郎かと言われれば、それは誤りだ。というのも、桃太郎は桃から出てこられるが、ルサンチマン太郎は劣等感の中に引き篭もったままだから。どんぶらこ、どんぶらこと世間に流されて行きながら、ただただ怨恨と嫉妬の層を厚くするばかりだ。彼がいつも頭を抱えるようにして丸まっているのは、人生に思い悩んでいるためではなくて、彼をすっぽりと覆っている外殻の臭気に耐えられないからだ。 彼は天稟の才を持って生まれた(と彼がみなしている)

          多摩民話「るさんちまん太郎」