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あずとまめ

小さいころ父から何度も何度も聞いた話を書き留めておこう。
もうじき完全に忘れちゃうから。



昔々あずとまめという二人の兄弟がいた。

ある日、お母さんは留守にするからあずとまめに

「夜中に誰かが来ても扉を開けちゃだめだよ」
「山姥が夜中にやってくるからね」
「山姥は子供を食べるのが大好きだから」
「子供かどうか知りたいから顔をだせと言う」
「手なら出せるといいなさい」
「その時は子供だとばれないように柿の葉を指に巻いて指を出しなさい」
「柿の葉はつるつるしていて固いから子供の指だと思われないからね」

お母さんはそう教えて出かけて行った。

夜中にトントンと扉を叩く音がする。あずとまめは扉に近づく。
山姥は言う「お母さんだよ扉を開けておくれ」
あずとまめは言う。「お母さんかどうかわからない」
山姥は言う。「顔をみせておくれ」
あずとまめは言う。「手なら出せる」
山姥は言う。「じゃあ手を見せておくれ」

あずはそのまま手を出して、まめは柿の葉を指に巻いて出す。
山姥は柿の葉の無い手をさすりながら「この手は誰の手だい?」
あずは言う「あずの手だ」


あずとまめは布団にはいるとぐっすり眠る。

とんとんと扉を叩く音がする「あずやあすや」
あずはお母さんが戻ったと大喜びする。



まめはすっかり眠っていたが、かまどの物陰からぽきりぽきりと音がする。

まめは近づいて目を凝らしてみると山姥があずの手をぽきりぽきりと
折りながら美味しそうに食べている。

まめはおどろいて声をあげてしまう。

山姥は嬉しそうに言った。「おや、もう一人子供がいたね」

まめは大慌てで家を飛び出す。
山姥は後ろからものすごい速さで追っかけてくる。

蕎麦畑を突き抜け走るが、山姥の方が足が速い。
どんどんどんどん近づいてくる。

まめは慌てて柿の木に登る。どんどん上に上るが山姥も登ってくる。


まめは枝に隠れてぶるぶるぶるぶる。
山姥に見つかりませんように。

登る途中で山姥は枝がゆさゆさゆれるのをみて「ここに居たな」


枝に足を掛けて、まめの隠れている枝をゆっさと引っ張った瞬間

どすーん。

大きな音がして柿の木の太い枝が山姥と一緒に落ちていった。

山姥の血が蕎麦の根元にどくどくひろがった。


それ以来蕎麦の根元は赤くなったとさ。






今考えるとものすごいホラーなんだけど、寝る前にする話かぁ??
怖がらずせがむ自分って・・・・。

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