俳句幼稚園　400円

子供心に田舎なのにヤクザがいるのが謎だった。
TVチャンネルは確か3つしか無いし、
お店もメインのせいぜい20軒が関の山で
ど田舎にどんな魅力があるのかと
謎ではあったけど、お祭りになると
どこからきたのかテキ屋が山ほど並ぶ。

山車も子供から見たら大きくてお祭りとしては
規模が大きいんじゃないかな。
地元のヤクザと言うよりお祭りだけに
やってくる、そんな感じだった。

彫物の大量で、龍とか虎とかそんなのが
背中や腕をぐねぐねしているが、不思議と
テキ屋の店主には彫物が見える人は記憶が無い。
まあたこ焼きなど熱もすごいからきちんと洋服を着ていたのだろう。

「出目もいるよ！」の声に釣られて覗くと
ゆらゆらと出目が確かにいた。
店番のおじいちゃんは薄気味悪いすきっ歯で
満面の笑みで自分に声をかける。
「お嬢ちゃん、ほうら出目もいるよ！」
「ちゃ〜んとした金魚だよ？釣ってご覧？」

割と強引にポイを渡そうとするが手はゲンコのまま。第一ちゃんとしてない金魚って何？と思うと引っ掛かるから黙る。

代わりと男の子がひったくろうとすると
「クソガキやめろ」と声が変わる。

自分の口から出た言葉は「幾ら？」だった。

ニヤニヤしながら
手のジェスチャーはパー✋だった。

「400円？」と言う私の返事に
相手はこんな馬鹿かよコイツ！と言う顔をする。

私は2本詰めた指を差し
「ここは50円ね？」と言うと先程のクソガキや
周りがけたたましい笑い声を上げた。

袖の影かわす箱釣りせかい揺れ
そでのかげ　かわすはこづり　せかいゆれ