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いなかに移住してよかったと思うのは、自然の怖さを知れたこと。

生まれも育ちも埼玉県川口市。のちに草加市だったけれど。その後、仕事は都内だったため、いままで本気の自然に毎日向き合う機会ってありませんでした。

再婚して気づいたら5年目ですが、夫の実家のある岩手県に移り住んだのが2年とちょっと前。

「山の形や木の雰囲気で道を覚えている」なんて言ってた夫の言葉を「全部ただの緑じゃないか」なんて思っていた私も、「あの山の形は美しい……ここら辺に生えている木は独特だね」なんて言うくらいには、自然と向き合う時間を長く過ごしています。

タイトルにした「いなかに移住してよかったと思うのは、自然の怖さを知れたこと」

まあ、ほかにもいなかのよさってたくさんたくさんあるんですが。“よさ”をあえて一つに絞るなら「自然の怖さ」かなって思っています。

人間様だもの、なにかあってもなんとかなると思っていた。

まあまあ都会に住んでいたころって、どこかしらは明るい。絶対にどこかに街灯はあって、本当に真っ暗って感じたことありませんでした。

でも、いなかって違うのよね。いなか度合いにもよるけれど。わたしが住んでる地域は、夜なんか車のヘッドライトがないと道が本気でわからない。本気で真っ暗。闇。ブラックホール。一寸先に何があるかわからない闇なのよ。

車や徒歩でいろんな山にも入ったけれど、目の前に野生のシカが現れたときには「これ死んだわ。」って、本気で思った。結果、シカが逃げてくれて事なきを得たんだけれど。でかかった。とにかく怖かった。あり得ないくらいの恐怖を感じた。

「あ、人間ってマジでちっぽけで無力だわ。」

いなかに引っ越してきて一番の衝撃だったのが、これでした。

たまに「人間なんて世界のなかで本当に小さな小さな生き物」的なことは目にしたり聞いたりしていたけれど。ちょっと、ピンときてなかった。うんうん、小さな生き物よね、世界は広いもの……と、薄っぺらく思ったフリしつつも「いやいや世界の中心やろ」って、たぶん心の奥底では思ってた。

これ、実際にその場に立たされないと、ちっぽけさって心底感じられなかったと思う。

山で遭難するとか獣に襲われるとかって未知数すぎて、決してバカにしていたとかではなく「自分だったらなんとかなるんじゃないか。」って、ニュースを見るたびに、たぶんそんなふうに思ってた。

いや無理ですわ。山に放り込まれたら、道路になんて簡単に辿り着けないよ。熊?いのしし?目の前で出会ったらと思うと、恐怖すぎる。襲ってくるような習性を持っていないようなシカにすら、恐怖で全身硬直したというのに。自然の中で間違えた行動を取れば、人間なんて、一瞬であちらの世界だわ。

なんで恐怖なのに「よかったこと」なのか?

「あぁ、人間という存在に自惚れたままにならなくてよかった」そんなふうに思ったのが、正直な感想です。

わたしはジブリが大好きで、中でも宮崎駿監督が描く世界がとても好き。幼少期にはサントラなども買い漁り、曲名を覚えては劇中で流れるたびに「あ、これは『愉快なケンカ(~追跡)』っていう曲名だよ」なんて、一緒に見ていた妹や母にいちいち教えるほど、ウザめなジブリ好きっ子でした。「次のセリフはホニャララだよ」とかもね。いま思い出しても、めんどいわぁ。

それはさておき、曲名の例に挙げた「愉快なケンカ(~追跡)」っていうのは、天空の城ラピュタの曲です。すぐにピンときた方は、どうかわたしと末長くお友達になってください。

「バルス!!!」とか「目が、目がぁ……」なんてセリフがどこでも取り上げられがちですが、中でも注目してほしいのはヒロインであるシータのセリフ。

「ゴンドアの谷の歌にあるもの。”土に根をおろし、風とともに生きよう。種とともに冬を越え、鳥とともに春を歌おう”。どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんの可哀想なロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ」

──これだ……。

スピリチュアルでもなく、なんかの教祖になりたいわけでもなく。ナチュラルに「自然と共にいなければ生きられん」と、いなかに来てから思っています。自然の脅威、怖さを目の前に感じられたから。

ぶっちゃけ「生かされてるなぁ。」とまで感じるほど。水は、空気は、自然がなけりゃとっくに枯れ果ててるだろうに。動物はじめ生物がなきゃ、木は育たんだろうに。

「人間だけで生きている」。そんな自惚れを感じたままにならなくて、本当によかった。

これこそ、わたしが「いなかに移住してきてよかった」と、一番に思うことです。

ぶち|言ノ葉執筆屋


ずっと書きたかったことでした。

たまたま、しりとりエッセイのお題が「い」だったので、いなかの「い」を題材にさせてもらいましたとさ。

私信:え~っと次は「か」だね!バトンタッチだよ~

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