アーリーリースの直し方について
ゴルフスイングの中でよく耳にする「アーリーリリース」。これは、理想的なインパクトを妨げる要因のひとつとされていますが、実はすべてのゴルファーにとって「悪い」動きとは限りません。
アーリーリリースとは何か、どんな影響があるのか、そして改善するための具体的な方法について、この記事で詳しく解説していきます。
今回は、こちらのキウイコーチのレッスン動画を元ネタにしています。
アーリーリリースとは?
アーリーリリースとは、ダウンスイングの中盤から後半にかけて、手首の角度(タメ)が解けてしまう現象を指します。アーリーリリースにより、クラブフェースがインパクト前に開きやすくなり、スライスや右へのミスショットが出やすくなります。
理想的なスイングでは、この角度を保ちながらクラブヘッドを遅らせ、インパクト直前に解放(リリース)することで、ヘッドスピードを最大化し、飛距離や正確性を向上させます。
アーリーリリースが最も確認しやすいのはP6のポジションで、スイングを正面から見た際、手元が右太ももの前に来たときにシャフトが地面と平行になっておらず、クラブヘッドが手元より低い位置にある場合です。アーリーリリースの始まりはP4からとされており、トップの位置からダウンスイングにかけて徐々にタメが解け始め、P6周辺で顕著になります。
キャスティングやスクーピングとの違い
アーリーリリースとよく似た言葉に、キャスティングやスクーピングがあります。
キャスティング (Casting):
キャスティングは、ダウンスイングの開始直後に、手首の角度(コック)が早く解けてしまうことを指します。クラブヘッドが手元より先に下がってしまい、クラブが早くリリースされてしまうため、ヘッドスピードが上がりづらいです。
スクーピング (Scooping):
スクーピングは、インパクト直前またはインパクト時に、手元が上がり、クラブヘッドがボールをすくい上げる動作を指します。結果として、インパクトではハンドレイトになり、リーディングエッジがボールの下に入りすぎるため、ボールが高く上がります。
これらはどれも一般的にスイングエラーとされますが、ゴルファーのスイング特性やヘッドスピードによっては、ある程度の許容範囲内であれば有効に働くこともあります。
アーリーリリースのデメリット
アーリーリリースが起こると、インパクト前に手首の角度が早く解けてしまうため、以下のような問題が生じやすくなります。
1. 飛距離のロス:
クラブヘッドのスピードが最大化される前にボールに当たるため、飛距離が落ちることがあります。また、アイアンの場合、ハンドファーストでインパクトすることが難しくなり、ダイナミックロフト(インパクト時のロフト)が寝やすくなります。
2. ダフリやトップ:
スイングの最下点がボールの手前になるため、ボールの手前を叩いてしまったり、逆にボールの上部を叩いてしまうことが増えます。また、インパクトのロフトが寝やすいので、ソールのバンスが露出され、硬い土壌だとクラブが跳ねやすくなることがあります。
3. 打球の不安定さ:
一般的に、アーリーリリースだと入射角がシャローになりやすいですが、体の左への移動が激しい場合など、入射角が過度に鋭角になることもあります。また、タメが解けるタイミングがバラ付きやすいので、ボールの飛び方が安定せず、ショットが左右に散らばる傾向も。
アーリーリースの原因
アーリーリリースの原因は、主にクラブに対する力の掛け方が効率的でないことにあります。「間違った力の掛け方」と言ってしまうと少し語弊があるかもしれませんが、より正確には【効率的にグリップを導けていない】ことが主な理由です。
具体的には、ハンドパスの方向や、手の中でどのようにグリップに圧力をかけているかが、理想的なスイングの動きと一致していないため、スイングのエネルギーがうまく伝わらず、結果的にアーリーリリースが発生します。
レッスン中に「右手が強すぎるからですか?」や「橈屈が解けているからですか?」といった質問を受けることがありますが、これらは感覚的なもので、個々の感覚や力加減に依存します。自分では強く握っていると思っていても、実際にはそうでないことも多く、感覚に基づく質問に正確に答えるのは難しいものです。つまり、「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」という答えになってしまうのが現実です。
アーリーリリースの簡易的チェック方法
ダウンスイングで手元が右太もも前に差しかかったとき、クラブヘッドが手元より低い位置にある場合、それはアーリーリリースが起きているサインです。
ただし、アーリーリリースが必ずしも【悪】というわけではありません。PGAの選手と比較すると、見た目は少し違うかもしれませんが、自分が理想とするショットを実現するために、インパクトでどのような数字を作るべきかを逆算して考えると、その役割が見えてきます。
たとえば、ドライバーでヘッドスピードが40ない人の場合、アーリーリリースが少しある方が、ロング〜ミドルアイアンなどで飛距離が最適化されることが多いです。自分のスイングスタイルに合ったアーリーリリースを見つけることで、効率的なスイングができるかもしれません。
アーリーリリースの修正方法
⑴ 橈屈をキープし続けながら打つ
スイング中、理想的なインパクトに向かう過程で、両手首は自然に尺屈しますが、これは実際の【リアル】な動作です。しかし、現状を改善するために、その尺屈を意識する必要があるかどうかは別問題で、ここが【フィール】の部分になります。
アーリーリリースが起こる主な原因は、尺屈が早すぎたり強すぎたりすることです。したがって、橈屈をキープし続ける感覚でスイングすることで、アーリーリリースを防ぐことができます。スイング中に橈屈をキープする意識を持ちながら振っても、重力や遠心力が働くため、実際にはヘッドは自然と地面に向かって下がっていきます。
このアプローチでは、空振りを心配するかもしれませんが、実際には、橈屈を意識してスイングしても空振りするケースは非常に稀でしょう。
⑵ ハンドパスの方向を見直す
ここでのハンドパスとは、ゴルフスイングを正面から見たときに、手元が描く軌跡の円弧を指します。このハンドパスの軌跡が適切でないと、アーリーリリースが発生しやすくなります。
下の画像は理想的なハンドパスの例です。P6からP7にかけて、手元の円弧は小さく、シャープに体の正面へ戻ってきます。
一方、アーリーリリースがある方に多いパターンは、手元を体の正面に引き込むのが遅れるケースです。この遅れにより、クラブヘッドが適切なタイミングでリリースされず、結果的に体を起こしてヘッドを体の正面に無理やり持ってくる動きが見られがちです。
この体の起き上がりが、結果的にアーリーリリースを助長する要因となっている可能性が高いです。ハンドパスを意識して改善することで、アーリーリリースを抑える効果が期待できます。
⑶ コツは引いて押す
ハンドパスのパターンを改善するためには、P6前後でグリップに与える力の方向をしっかりと変化させる必要があります。ここで覚えておきたいキーワードは「引いて押す」です。
具体的には、P6の少し前から左手でグリップを体の前に引き込み、その後、右手でクラブヘッドをターゲット方向へ押し出すような動きが重要です。この動きに左サイドの伸展と胸の回転を加え、スムーズにフィニッシュまで振り切ります。
さらに、右踵をしっかりと持ち上げ、靴裏が見えるまで、あるいはつま先で地面をトントンとタップできるまで上げることがポイントです。右踵が地面からしっかりリリースされないと、フォロースルー時に胸や腰の回転が制限され、左肘が抜ける原因にもなります。
この「引いて押す」感覚を身につけるためには、P6からP8やP9までのハーフスイングでの練習が効果的です。慣れない場合は、最初にスプリットハンドで練習し、その後、通常のグリップに戻して交互にボールを打ってみましょう。この練習を通じて、クラブヘッドの利かせ方やリリースのタイミングのコツがつかめるはずです。
※注意点
「引いて押す」という感覚は、個々のスイングスタイルや身体の動きによって異なるため、一度自分に合った感覚を見つけることが大切です。また、この練習はあくまで感覚を掴むための補助的なものなので、必ずしも全てのゴルファーにとって効果的とは限りません。実際のスイング中での効果や変化を確認しながら進めることをお勧めします。
⑷ 障害物を使った練習
効果的な練習方法として、障害物を使ったドリルがあります。例えば、YouTube動画で紹介されているように、正面に向かい合って座り、アライメントスティックを使う方法です。これを練習パートナーと一緒に行うと、より実感が湧きやすいでしょう。
練習パートナーがいない場合でも、P6のポジションで椅子の上にクラブヘッドを置き、そのままスイングする方法があります。この練習は、クラブを「引いて押す」感覚を身につけるのに非常に有効です。
私自身、アメリカでトレーニングをしていたときに、この方法をよく取り入れていました。室内練習場のイスを使い、P6ポジションで座面にヘッドのネックが軽く乗るくらいの位置に椅子をセットして、そのまま打つ練習をしていました。椅子を利用することで、クラブの軌道やヘッドの位置を意識しながら「引いて押す」動きを自然と身につけることができます。
この練習を続けることで、スイングの精度が向上し、アーリーリリースを修正するのに大いに役立つはずです。
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おわりに
アーリーリリースは、スイングの中でよく見られる現象ですが、必ずしも悪いわけではありません。特にヘッドスピードが低めのゴルファーにとっては、適度なアーリーリリースが飛距離向上に役立つこともあります。
修正には、橈屈のキープやハンドパスの見直し、「引いて押す」感覚を取り入れることが効果的です。ただし、自分に合った方法を見つけることが重要です。練習を通じて、自分のスイングの特徴を理解し、適切な改善を目指しましょう。
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