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猫科の肉食獣

1.猫科の肉食獣たち

かっこいい。とてもかっこいい。
しなやかな体つき、精悍な顔立ち、これぞ肉食獣という身のこなし。
かっこいい。覚えられない。
アイドルグループのそれとよく似ている。
かっこいいのはわかる。ただ、区別がつかない。

ライオンはわかる。たてがみがあり、比較的手足がどっしりとしている。相手の喉笛に噛み付いて窒息死させるので、足の速さより重さ・強さが必要なのだ。

トラ。他に比べて大型で、顎も発達している。ライオン同様相手を窒息死させる狩りをするが、単独でというとことがライオンより推せる理由の一つである。

チーター。言うまでもなく動物界最速の生き物で、初速から数秒で時速100キロに達するという。持久力はないらしいが、そうでもなければインパラというインパラは彼らが食べてしまっているだろう。顔が小さく、某スポーツメーカーのロゴそのままといった感じである。

ヒョウ。「ヒョウ柄」は結構見かけているはずなのだが、見ないで描ける自信がない。が、あるところでは豹柄を「梅花紋」というらしく、それを聞いてなんとなく描けそうな気がしてきた。木登りが得意なので、脚が発達しているのも特徴といえる。

ジャガー。笛は吹かない。ヒョウより黄色く、模様が大きい。また、体格もジャガーの方が大きく脚が短いらしい。泳ぎが得意という、めずらしい猫科動物だ。

やっぱりアイドルグループな気がする。
センターはライオン。実力派のトラ。スマートさが売りのチーター、ファッションリーダーのヒョウ、異色のジャガー。
名前は「にゃらし」、「TOKINYO」などどうだろうか。

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2.猫科の肉食獣とわたし

虎が好きだ。高校2年生の時の山月記の授業は、今でも忘れられない。
先生は2時間かけて山月記を朗読し(先生はすごくいい声の持ち主である)、「何故虎か」とだけ問いを出した。
わたしたちは進学校に通う自負と、無鉄砲な若さに満ち溢れた高校生だったので、したり顔で中国における虎の役割や、肉食獣としての虎の悲哀などをああでもないこうでもないと議論した。こんなに深い議論ができるだなんて、うちらすげくない?と言わんばかりの態度だったと思う。

先生はじっくりとわたしたちの議論に耳を傾け、うなずき、一言、
「虎は美しいからだよ」
と言い置いて授業を終えられた。

ひとより国語ができると思い込み、虚飾でごてごての回答を堂々と提示した自分が恥ずかしくて仕方がなかった。

そうじゃないか。虎は美しいじゃないか。それ以外になにがあるというんだ!!!

わたしたちはお互いの顔を見合わせた。制服を着た虎同士が、どうする?これ、といった視線を絡め合わせたあの授業を、わたしは未だに忘れない。

その後、自分の名前を漢和辞典で引いたところ、「彪=あや。虎のまだら模様。美しい模様」というのを見つけて、ひとり高揚して何度もノートに書き綴ったことも、今思い出すと顔から毛が生えてきそうな思い出ではある。

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