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パッと光って咲いた

画面の向こうには、日本語を話す彼らが居た。
「お久しぶりです!!!」
その一言は、このイベントが遠い海の向こうではなく、今私が居る場所と地続きの小さな島国で開催されていることを証明するに充分すぎた。

約一年前、私は一度もまともに触れたことがなかった隣国の音楽の世界へ突然突き落とされた。
それによって私の世界がどれだけ広がり、人生がどれだけ豊かになったかはここにも何度も記した通りだ。

しかし、きっかけとなった同年代の七人組グループばかりを私は追いかけており、それ以外については名前や楽曲はなんとなく存じ上げているものの、ほとんど知らなかった。
というより、そこの供給量と情報量が多すぎて、正直他グループの開拓までいかなかったという方が正しい。

そんな私に、この春好きなアーティストが一組増えた。
第一印象はグループ名と構成人数の差に混乱した記憶しか無いのだが、音楽に関して私とほぼ同じ感性を持つ妹が先に夢中になっていた時点で、私も遠くない未来、同じ道を辿ることになるのは自明だった。
明るく前向きでキラキラした世界観、多人数だからこそできる多彩なパフォーマンス構成、メロディや歌詞、編曲も含めた楽曲そのものの魅力、極めつけにそれらをすべて自主制作しているという事実。
逆に今まで好きにならなかったのが不思議なくらい、彼らの音楽とスタイルは私の嗜好ど真ん中を貫いていた。
代表曲のパフォーマンスを数曲観ただけで、初見でほぼすべてを「好き!!!」と思えるこの感覚はかなり久々だ。

そして私は、なぜかいつも非常に良いタイミングで新しいアーティストを好きになる。
五月の初めに、なんと日本でファンミーティングが開催され、それがオンライン配信されるという。
この一年間、リアルタイムはもちろん、円盤でさえも私はいわゆる「イルコン」を一度も観たことがなかった。
だから、せっかく日本でのイベントをリアルタイムで観られるのなら、という軽い気持ちですぐに配信チケットを購入した。

そのノリは正しかった。

彼らが、日本に居る。
言葉から、歌詞から、画面越しにも伝わるその事実がとてつもなく嬉しかった。
せっかくだからと観てみた「日本でのイベント」は、自分自身の予想をも遥かに超える大きな多幸感に包まれており、それが少し不思議なほどだった。

もともと私は、特定の邦楽アーティストのライブを毎年生き甲斐にして生きるような人間だ。
だから私にとっては、好きなアーティストが日本語を話すことも、日本語の楽曲を歌うことも、年に何度もライブ会場でそれを浴びることができることも当たり前だった。
しかしこの一年間、自分の音楽ライフの中でのそんな当たり前はことごとく覆された。
新しく大好きになった「推し」たちは、私が理解できない言語を話す画面越しにしか会えない人々だ。

いや、別にだからどうというわけでもない。
言語が理解できないこともライブができないことも、誰が悪いわけでもないのだから、少しずつ彼らの言葉を勉強したり、YouTubeやオンライン配信で彼らのパフォーマンスを楽しんだり、それだけで私は充分に満足していた。

でも、リアルタイムで日本語を話す「推し」のパワーはすさまじかった。
画面越しにも関わらず、彼らが今生きてここに存在していることがダイレクトに伝わり、字幕に頼らなくてもその言葉はまっすぐ私の心に届く。
それがどれだけありがたく素敵なことか。

ちょっと人口が多いだけの隣国の島国にわざわざ来てくれてありがとう。
わけのわからない言語体系の言葉を一生懸命話してくれてありがとう。
私たちの言葉でたくさん歌って伝えてくれてありがとう。

もちろん、ライブはいつでもどこでも楽しい。
その日、その瞬間にしか見ることができない彼らにたくさん会って、彼ら一人ひとりがもっともっと愛おしくなった。
それだけでも充分なのに、それが「日本で」行われることの偉大さを、私は今回身をもって知ってしまった。
単なる「好き」では終わらない、海外のライブでは味わえない感慨がそこにはあった。

そして困ったことに、その実感により、今まで夢としては持ちつつもどこか現実味の無かった「推したちに会いたい」というぼんやりとした私の願いが、明確な輪郭を持ってしまった。
困った、会いたい、会いたいよ、みんな。

「推し」に会える世界が、もうそこまで近付いてきている。
世界は確かに、前進している。

約一年前、私は同年代の七人にこの世界に突き落とされた。
あのときの衝撃を「転落」と私は表現しているが、それとあえて比較するなら、今回の出会いは「いざない」と呼びたい。
少し歳下の十三人に導かれるように手を引かれ、今、私の目の前に新しい扉が開かれた。

まだ私は、彼らのことを何も知らない。
私が見ている彼らなんてまだまだ一部で、きっと各方面から「それだけじゃないんだよ!」と言われてしまうだろう。
だからこそ、これからまた素敵な発見がたくさんできることがとても嬉しく、本当に楽しみだ。

はじめまして。
こんにちは、十三人の輝くダイヤモンドたち。
これからどうぞよろしくね。

そんなことをのんびり書いていたら、本日17日に、なんともタイムリーに彼らのワールドツアーが発表されてしまった。
また少し前進した世界に、私も飛び乗ってもいいですか。

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