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京大こん部

はじめに

高時給、食住無料、作業は屋外だが真夏も20度前後、足腰鍛えられ就活でも有利。そんなうまい話があるだろうか?

北海道利尻町。そこにそれはある。誰しも名前は聞いたことであるであろう利尻昆布。人口5,000人の島で、日本の昆布生産量の10%を生産し、名だたる京都の料亭も利尻昆布指名買いをするという

5-6年前から、夏になると「そろそろシーズンだから」と利尻へ旅立ち、戻ればやたら昆布をくれる近所の友人がいた。ふとした縁で利尻の漁師と知り合い、人手不足と聞いて大学の後輩を募って始めた昆布干しバイト。これまで累計75人が参加、毎年応募は絶えず、もう「京大こん部」と呼んでも差し支えないムーブメントがあるのだ。ちなみにこの呼称を思いついて私は盛り上がっていたが、周囲は北の大地のように冷たい表情をしていた

取材実績も多数。私が訪問していた際も北海道新聞が取材にきていた。

出ダシが長くなってしまったが、夏休みで利尻にを訪れ、「やっぱ昆布出汁、深いぜ..」という浅いコメントから卒業し30代の深みをつくっていくべく、私も昆布干しを体験させてもらったので書き残しておきたい

朝3時スタート

昆布干しの朝は早い。2:45amに起床、3時過ぎには作業スタート。トラックが昆布をドバドバ落としていき、それを縄から切り取る。束になった昆布を1本1本掴みながら、丁寧に互い違いになるように地面に昆布を並べていく

1/ 昆布ドバドバ
2/ とにかく干す干す

day1からもキャッチアップしやすい仕事であり、それほど気遅れせずに仕事に取り組むことができる。そんな仕事はアプリを活用したネットスーパーのオペレーションと昆布干しくらいしか私は知らない

ポイントは3つ。1) 上下を間違えない 2) 表を上にして干す 3) 腰痛ケアを怠らない。大学生お手製の味のある丁寧な動画マニュアルもあるので、それも見て臨めば完璧だ

落とされた昆布は手際良く縄から切り取り、床に並べる。それを束で移動し、互い違いに並べていく。初心者の私はたまに表裏を間違えるが、一緒に作業しているベテランのおばちゃんが親切に教えてくれる。「今年初めて?来年も来るといいべ」が身にしみる

ようつーい

注意すべきは腰痛。シンプルな作業行程ではあるが、昆布を引っ張り上げて床においていく所作において、気合を入れて上下しすぎると腰が危うい感じになる。観測の結果、綱引きのように体を引きながらしゃがんでいくと負荷が低くなるといった知見が蓄積していく(足プルプルするけどね)

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ドバドバ落とされる昆布と綱引きしてる間に時間はあっという間に経つ。真っ暗だった空は気づけば明るく、6時前に作業が終わると地元のおばちゃんが用意してくれた朝食をかっこむ。これが本当にうまい。かっこむとすぐにおばちゃんの「アンタもう一杯か?」レーダーにかかり、アフターケアもばっちりだ

君たちはどう干すのか

30代の私は足プルだったが、学生は「今日の感じやったら今から利尻富士(1,700m)登れるッスね」と言ってた。Spotifyの”teen culture”プレイリストのチェックを欠かさない私もびっくりのジェネレーションギャップだった。ちなみに学生たちは何日か前に実際山登ってたらしいが、登って降りて8時間、ちゃんと15時の昆布拾い(干した昆布を回収する作業)には帰って来るらしい。健脚のプロフェッショナル軍団だ

最近は口コミで広がり他の大学のメンバーも参加し始めているそう。作業時間は3-6時なので日中は皆山登ったり、釣りをしたり、近所の高校生の宿題を見てあげたりと、健康的な生活を送っていて楽しそうだった

実は昆布の季節(7-8月)とテスト期間が重なるので、休学してる学生や、一度京都戻って利尻バックする猛者もいるとか。テスト受けようと早めに今週帰る2年生は「昆布と単位、どっちが大事なの?」と先輩に干されかけていた(昆布だけにね)

学生が共同生活する家

おわりに

こんぶ干しのメインの稼働時間は3-6時なのでリモートワークokならpc業務の方もダブルワーク可能。7月も20度前後なので、首都圏の猛暑に辟易してる方、干されるより干したい方にはお勧めである


干し場の裏にある日本最北端のバレルサウナ💯

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