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扉のとじた世界

台風の上陸に季節の移ろう気配を感じたので
少し早いが夏を閉じようと思い、
米澤穂信さんの『さよなら妖精』を読んだ。

あまりにも衝撃的な結末に胸が苦しい…
とても尊くて気高い命。生きていてほしかった。
生々しい余韻はまだ消えない。
きっと風化されない作品だろう

日常と非日常、不一致の一致。
読み終わった今、"4つの謎" の矛盾から、
『哲学的な意味とは別の意味をもつこと』自体が 
本質の隠喩だったのだろうと思う。

わたしが一番ちかく感じたのは文原だった。
「手の届く範囲外に関わることが嘘」であるように
そして
「その手が暗喩でなくそのままの意味」あるように
なにかを守るということは、じぶんの存在をかけて証明していくことだと思っている。
そういう意味で、わたしも解ったフリをして
失うことから逃げていたのかもしれない…

マーヤにとって守屋の存在に名前があったのか
今となってはわからないが、
彼女は彼自身よりも先に
彼の《想い》に気づいていただろう。
それは彼にとって《道標》だったのかもしれない
けれど マーヤが守屋を想うあたたかい感情に
読んでいて涙がとまらなくなった。
もし「連れて行ってくれ」ではなく、
「自分も7つめを一緒にみつけたい」だったら。
どんな未来だったのだろうと想像して切なくなる秋。

結局 マーヤは自分の人生を使命に捧げているので
(守屋が望んだ)救済自体 存在しないのかもしれない
それでもあの2ヶ月間に意味があったことを
守屋とわたしたち読者は証明しなければならない。

そして手の届かないところにいってしまっても
残されたものがあることを、
わたし自身も受けとめなければならない。

消せない想いごと前を向けるように…

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