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忘れ物をする仲間たちへ

わたしは今まで、何度も忘れ物をしてきた。
そのたびに、たくさんの知らない人たちが届けてくれた。
そのおかげで、わたしはここまで生きてこれた。
と言うと、だいぶ大袈裟に聞こえるかもしれないが、でもほんと、実際そうだ。

最近だと、リュックのサイドポケットに入れた折り畳み傘を電車もしくは駅のホームで落としたらしい。
自分では気づかなかったが、気づいてくれた人がいて、階段を上るわたしの後ろから「落としましたよ」と渡してくれた。
わざわざ追いかけてくれたのだ。
その折り畳み傘は、ナナナ(テレビ東京のキャラクター)のケースに入っていた。

(この子が無事でよかった)

中に入った折り畳み傘はぶっちゃけなくしてもいいけれど、ナナナは絶対になくしたくない大切なものなので、気づいて声をかけてくれた人がいて、ほんとうによかった。
あの人に助けられなかったら、わたしはどこでなくしたのかわからず、ナナナとお別れをすることになっていたかもしれない。
ほんとうに、ありがとうございます。

他にも、過去にわたしはスマホを何度も忘れている。
タクシーでも、バスの中でも、駅のトイレでも、ライブ会場でも。
ありとあらゆるところで、スマホを置いてきてしまった。
でもそのたびに、親切な人たちのおかげで、自分の手元に無事に戻ってきている。
ほんとうに、ありがとうございます。


自分は、街中で誰かが落とし物をしたところを見かけると、反射的に体が動いて声をかける。
最近だと、電車で隣に座っていた人がスマホを座席に忘れて降りていったので、自分のリュックは電車に置いたまま、そのスマホを片手に「すみません!すみません!!!」と言いながら電車を降り、無事に渡すことができた。
そして、電車に戻った。

この話を2人に話したところ、
ふたりとも、「わざわざ降りてまで、えらいね」というような反応だった。
え、そうなの?と思った。
自分は今まで数々の忘れ物をしてきてそのたびに救われてきたから、
忘れ物が自分のところに戻ってくることのありがたさを知っているから、
忘れ物をした人に声をかけるのは、自分の使命だと思っている。
たくさん救われてきた身として、届けてくれた人たちへの恩返しというか…。
そう言うとなんかいい人みたいに聞こえちゃうかもしれないけれど、ただただ、忘れ物仲間としてほっとけない。
それに、忘れ物を渡すことで、周り回って、わたしが忘れ物をしたときに届けてもらいやすくなる気がする。
だから、これは自分のための行いだ。
(それでその人も助かるのなら、わたしもうれしい。)


「えらいね」と褒めてくれたことで、
「“そこまでできない”という人もいるのかもしれない」ということに気づいた。
そう思う人は、わざわざやらなくていいと思う。
無理をするのはよくない。

自分は、忘れ物を渡すことはできるが、
少額のお買い物なのに1万円札しかないとき、レジで「大きいのしかなくて…すみません」と言うのは、ものすごく苦手だ。
申し訳なく思うけど、なんだか恥ずかしくて、相手に聞こえないくらいの小声で「すみません…」と言ってしまう。
ほんとはハッキリと言ったほうが、レジの人も「しょうがないな〜」ってなると思うのに。
これは改善していきたいことだけど、やっぱり毎回モジモジしてしまう。

こんなふうに人それぞれに、ものによって
すんなりとできてしまうこと(反射的にやってしまうこと)と、頭ではわかっていても行動になかなか移せないことってあると思う。
だから、忘れ物に反射的になれないならなれないでいいと思うのだ。
その仕事は、わたし(のような人)に任せておくれ。


忘れ物をしやすい人は、忘れ物を減らすよう気をつけるのも大事なのかもしれないが、気をつけたってしちゃうんだから、そんな自分を責めなくていいと思う。
無理をするのはよくない。

人にもよるとは思うが、忘れ物をしやすい人は、他の人の忘れ物に気づきやすいような気がする。
だから、自分の忘れ物を減らすことよりも、他人の忘れ物に気づくことに力を注いだほうがいいのかもしれない。

忘れ物界隈(?)では、届けてもらったり、届けたりという循環が生まれていると思う。
「届けてもらったから、自分も届けよう」という気持ちが連鎖して、忘れ物をする仲間たちが少しでも生きやすくなればいいと思う。

忘れ物仲間のみなさんで、忘れんぼうさんに優しい世の中にしていきましょー!!と思う。
大袈裟に聞こえるかもしれないが、でもほんと、実際そうだ。

わたしも忘れ物仲間の一員として、これからも
忘れ物をしたり、届けてもらったり、忘れ物に気づいたり、届けたりしていこうと思います。
というか、しようとしなくても、そうなってしまう運命なのです。たぶん。

忘れ物をあまりしない人からしたら、忘れ物をしょっちゅうする人の気が知れないかもしれないし、届けてやる気にもならないかもしれません。
それならそれで構いませんので、
もしよかったら、忘れんぼうさんたちのことを温かく見守ってくださると嬉しいです。

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