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「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」感想

先日「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」というアートイベントに参加してきた。普段からよくアート系のイベントや展示には出向いているのだが、今回のは驚くほど残念な体験だった。

このイベントとは、横須賀沖の猿島という無人島に夜に行き、五感を研ぎ澄ませて自然とアート作品に向き合うというものである。Rhizomatiksの齋藤精一さんがプロデュースし、主催は横須賀都市魅力創造発進実行委員会という組織。コンセプトが面白いなと思ったし、齋藤さんなら面白くしてくれるだろうと期待して参加してみた。

詳細なコンセプトはこちら(公式ホームページより)

人は昔から自然と共生してきた。そこから文明は生まれ、文化となり発展し続けている。
しかし、ときに人は人自身の進化の速度が遅いがゆえに、自分たちの環境を強制的に変化させ、その行為によって、ときに自然を滅ぼし、
沢山の過ちを引き起こしてしまった。
今の時代は「人間中心」を再定義する時だとも言われている。
Sense Island - 感覚の島- では、唯一無二の存在である自然島猿島だからこそ、知らずのうちに人工的に作ってしまった感覚を取り払い、テクノロジーや時間を取り払い、猿島やそこに有る自然の文脈を、そしてその文脈を感じるために自分自身と向き合うような作品や体験を置くことで、我々が失ってしまった感覚をもう一度取り戻す試みを行う。


# 残念だったところ

1. 参加コストが高すぎる

大人の場合、横須賀市民は1850円(早割1600円)、非横須賀市民は3500円(早割3000円)という値段設定だった。東京からだと往復の交通費も合わせると合計6000円近くの出費になる。時間的にも、片道1~2時間かかる。悪天候で中止の場合でも払い戻しがないそうなので、週末に雨や台風が多い昨今、早割で買うのは得策でもなさそうである。

普通の美術館の特別展なら入場料が1000-1500円なので、アートイベント一回にかかる金額としては高すぎる。そういえば去年のフェルメール展が強気の値段設定で騒がれていたが、入場券が2500円、図録が3500円だったので、図録まで買うと似たような値段になる。せめて参加費は1500円以下にするべきだ。 

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2. 自然や作品にまったく集中できなかった

出発前に軽い注意説明があり、上述のコンセプトの都合上「懐中電灯は一応配布するがあまり使わないように。また静かに周ってください」と言われていた。にもかかわらず、皆懐中電灯は使いまくっていた(これは後述するが仕方ない側面も大きい)。また何より、皆普通に喋りまくっていたのが気になって仕方がなかった。ほどんどの参加者が家族連れ(子供も含む)やカップルだったこともあり、例えば波の音がよく聞こえる海辺の場所でも皆ワイワイ話していたが、当人も周りも五感を研ぎ澄ますことなどできやしない。コンセプト的に子供の参加は禁止してもいいと思うし、喋っていたらスタッフが注意する、香水など強い匂いを発するものを控えてもらうなどの努力はすべきだろう。

3. 暗すぎて歩きにくい

一応フットライトが設置されていたが、結構階段もあり道も入り組んでいて、足元を懐中電灯で照らさないと進めなかった。懐中電灯を使ってほしくないなら、もっとライトを増やすか明るくするべきだ。

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4. 作品がどこにあるか分かりにくい

やはりせっかく来たからには全部のアート作品を見たいと普通は思うだろう。しかし、注意して地図を見ながら歩かないと普通に通り過ぎることもあるし、曲がり角でどっちに進むべきかも分からない。そもそも地図も今どこにいるのか、作品がどこにあるのかがわかりにくい。できれば順路標識を丁寧に設置して(一見自然に手を加える人工的な作業に見えるが、参加者の地図を見るという雑念を除く方が重要だと思う)、地図も分かりやすくして、さらにアート作品がある所に作家と作品名のプレートなどを置くべきだ。ちなみに齋藤精一さんの作品は、地図によると海上にあったらしいが、行きの船でも帰りの船でもわからなかった。灯台みたいなのが途中にあった気がしたけどあれなのかなあ...

5. 待ち時間も結構長い

まず乗船15分以上前に集合しなければいけないし、島についてからも順番に案内するとのことで結構待たされた。帰りの船も45分おきぐらいしかないので、場合によっては結構待つこともある。

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もちろん、安全面を考慮するとこういう暗闇でのイベントをするのは大変だと思うし、コストも結構かかってると思う。しかし総じてオペレーションが雑なために、雑念が入りすぎて、コンセプトにある「自分自身と向き合う」「失ってしまった感覚をもう一度取り戻す」ことなどまったくできなかった。難しいことをやろうとしているのだからこそ、現場のオペレーションの隅々まで徹底してほしかった。Rhizomatiksと言えば紅白でのPerfumeの演出のイメージが強いが、あのように完璧にこなせないのだろうか。今のままだと、せいぜい夜の無人島に行くという非日常な体験という思い出止まりだろう。

そもそも横須賀市はどんどん人口が流出しているので、もっと地域振興とか観光推進とか頑張らないといけないはず。横須賀自体には米軍港巡りなど観光資源が豊富なので、今回のようなイベントを開催するなら、例えば東京などのアートファンを呼び込み、お金を落としてもらうということもできるのではないか(参加費の値段設定からしてそういう意図はなさそう)

# ここまで読んでも参加する方へ
行きの船などでしっかり地図を見ておくべき。また会話はなるべく控えてほしい。夜の海は風が冷たく気温よりも体感寒い。齋藤精一さんの作品はちゃんと探さないと分からない。


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