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想像を思い描き続けたその先


音楽じゃ何も変わらないかもしれない
音楽じゃ命は救えないかもしれない


痛いほど感じたんだろう、口癖のように「歌うこと「しか」できない」と自分のことを言うその人は、変わり果てた故郷の景色を見て、どれだけ自分を無力だと思ったことだろうか。

絶望的なことに直面しても、自分の無力さを嘆いても、前を見据えて出来ることをやるべき事をしているその姿が最高に格好良くて大きくて眩しくて。思っていることを行動にすることはなかなか簡単なことではないということは大人になるに連れて強く感じる。でもこの人は思ったらすぐに行動している、その行動力と思考力は尊敬に値する。

自分は歌うことしか出来ないから、とまた歌を作り届ける。一瞬も立ち止まらず、常に前へ前へ。それは彼のこれまでと重なるものがあった。

いつだって音楽に対する希望を持って光を感じているのは紛れもない、いつもそれをわたしに示して教えてくれる ”高橋優” その人なんだ。

秋田の空の下でこちら側を見る高橋優の目はどこまでも澄んでいた。あの目を表現する言葉を私はまだ知らない、水のような清らかさと万華鏡のような煌めきと吸い込まれそうな黒。そちらから見える世界はどうですか?どうかその何よりも美しい目を汚すことの無い綺麗なものでありますように、出来るだけ希望で溢れた喜びと光の世界でありますように、と何度も願った。

1 絶頂は今
2 Piece
3 spotlight
4 HIGH FIVE
5 はなうた (弾き語り)
6 one stroke
7 高野豆腐~どこか遠くへ~
8 虹
9 泣ぐ子はいねが
10 明日はきっといい日になる
11ピーナッツ

毎秒と言っていいほど自分の目から見えるこの景色を残したい、今がずっと続いちゃえばいいのにと思った。秋田キャラバンミュージックフェスのリストバンドが揺れるすぐ先にある空が本当に本当に綺麗で。今秋田にいる、秋田で音楽を聴いてる、高橋優の音楽を聴いてる、それがたまらなく嬉しくて。最高で。心がいっぱいになって目から水になって出てきた。   


「叫べ!!!!!!」

「もっと出るだろ!!!!!!」「全部高橋にぶつけてこい!!!!!!!!!」


声にならない声を振り絞って、何度も叫んだ。
日々を生きてく中でひっそりと積もってくる薄暗くて重たいナニカも、嬉しいことも悲しいことも苦しいことも、全部吐いて全部ぶつけた。

なんでこんなに強いんだろう、なんでこんなに優しいんだろう。人間臭くて綺麗事でも嘘でもないただまっさらなキャンバスみたいな。誰かに期待してるから傷付いて、誰にも期待してないから強いのかな。私は変わらなきゃダメだとか変わってないのは変だみたいな思考や言葉ばっかの世界の中で「今のままでいい」と歌う高橋優が大好きだ

この記憶の中の残像も耳の中にある残響も太陽で火照った身体の熱も幸せな疲労感も珍しくした日焼けも全部いつかなくなってしまうのかと思うととても悲しい。忘れたくない日、死ぬ前に思い出したい日がまたひとつ増えてしまった。

こんな景色が何度も見られる私の人生、まだまだ捨てたもんじゃないな。早く高橋優が見せてくれる次の景色を見に行きたい。私が死なない為の大事なひとつの理由だ。帰りのこまちの中で揺れるリストバンドを眺めながらそう思った。



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