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遺言書の書き方

 前提として、遺言書は15歳以上であれば作れますが、認知症などで意思能力がなくなってからでは作れません。ある日突然、血管系の病気になることもないとは言い切れないため、早くから準備しておくに越したことはありません。
 また、遺言は何度でも書き換えることが出来ます。


1、遺言書の種類
 遺言書には、例外的に緊急時に病室などで口頭で作るものもあるのですが、
今回は平時の遺言書の書き方をご紹介します。
 これも、大きく分けると自筆証書遺言と公正証書遺言に分かれます。
自筆証書遺言は文字通り自分で手書きで作る遺言書、公正証書遺言は公証役場で作成する遺言書です。
 例えば、海外などにも莫大な遺産があり、政府に知られたくない場合は、誰にも内容を知られない「自筆証書」がお勧めです。遺言執行人に、お抱えの弁護士をつければ紛失・改竄の恐れもほぼ無いでしょう。
 何でもそうですが、役所を経由するものは、ご自身の資産情報は丸裸になることは覚悟されておいた方が良いということですね。役所が親切心だけで動くことは、基本ありませんので。


2.  自筆証書遺言書保管制度
 自筆証書遺言は、以前は、書いてそのまま自宅に保管したり、封印したものを公証人役場に持参し役場の印を押してもらった上で自宅や金融機関の貸金庫に保管という形でしたが、現在は、法務局が保管してくれる「自筆証書遺言書保管制度」というものが出来ています。
 自宅にしか遺言書がないと、遺言執行人を指定していない場合、いざという時に見つけられなかったり、改竄されたり、自分に不利な内容かもしれないと思った相続人が破棄するという事もありましたが、その点は改善できる様になっています。
 利用料も財産額に関係なく3,900円とリーズナブルで、1部が法務局にも書面及びデータとして保管されます。
 また、自分が亡くなった時に遺言書のあることを伝えてもらう人を、今年の10月2日からは3人指定することもできる様になりました。
 他には、自筆証書遺言書の場合は、家庭裁判所の検認が必要になりますが、この保管制度を利用すると検認が不要になるという利点もあります。
 ただ、この制度も、国が管理するものなので、個人の資産情報は国に流れると見ておいた方が良いには違いありません。
 公正証書遺言は、行政書士などの専門家が文案を作ることが多いので、今回は自筆証書遺言書の書き方をお伝えしていきます。


3.  遺言書を書く前に準備しておくもの
 まず、自分の財産を正確にしておく必要があります。
 不動産であれば該当する登記簿(土地と建物)を取ります。株式や社債、預貯金などの口座番号も明確にしておきます。
これらは、遺言書につける「財産目録」に貼り付けて使用できます。
 法務局に保管申請をする際に必要な、ご自身の住民票(本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票)もとっておきましょう。


4.  誰に何を相続させるかを決めておく
 そして、相続人も明確に。先妻との子供や、養子縁組した子、認知した子供も、現在の妻との間の子供と同じ割合の相続権があります。
 もし、法定通りに相続させるなら、わざわざ遺言書を作らなくても良い場合が多いです。
 問題は、次男だけは長年海外留学させ理系大学院まで行かせたので特別受益者に当たる、障害を負う子がいる、兄弟仲が悪い、妻の老後を見てくれる子に多く残したい、事業を承継する子にすべての株式を与えたい、第三者に与えたい、寄付したい、認知した子がいるが今後も家族の支えになってくれることはないので遺留分のみにしたいなどの理由から法定分と異なる分配をしたい場合は、理由も含めて明確に書き残しておいた方が良いでしょう。


5.  絶対に書かないといけない事項
 遺言書には、書き漏らしては無効になる事項があります。
氏名、日付(令和〇年◯月◯日)を自署(手書き)、押印することです。
全部書けたら、日付と印鑑を再確認しましょう。


6.  ペンと用紙について
 自筆証書遺言書は、文字通り手書きで書きます。
ボールペンでも筆でも構いませんが、読みやすい文字で書いてください。
擦ると消えるフリクションペンや鉛筆は使えません。 
 用紙は、便箋でも、和紙でも、大きさや余白についても、特に決まりはありません。(法務局に預ける場合はA4サイズのみ)


7.  では、いよいよ書いていきます(まずは基本形)
 縦書きでも横書きでも構いません。
こんな感じが基本形です。

               遺言書
    遺言者、日本太郎は、次の通り遺言する。

    第1条. 遺言者は、遺言者の所有する別紙1の不動産を、
        長男 日本一郎(昭和◯年◯月◯日生)に相続させる。

    第2条. 遺言者は、遺言者の所有する別紙 2 及び別紙 3 の財産を、
        長女 日本花子(昭和◯年◯月◯日生)に相続させる。

              令和5年9月30日
                  京都市伏見区◯町1丁目◯番地    
                        日本太郎  印 


8.  解説します
 「遺言者、日本太郎は、次の通り遺言する」と書くのは、誰の遺言であるか明確にするためです。
 相続人に対しては、文末は「相続させる」と書きます。

 この例文は、遺言書本文には「別紙1」「別紙2」と書いて、別紙に登記簿藤本や通帳コピーを貼付する形式にしています。
別紙をつける場合は、別紙に、登記簿や銀行通帳のコピーを余白を開けて貼って行き、ページ番号を振ります。ページ番号は、仮に、遺言書本文と別紙の分と合わせて4枚なら、右下に、「1/4、2/4・・」の様に書いていけば良いでしょう。

 別紙1、別紙2・・の代わりに、登記簿謄本通りに「所在・・、地番・・、地目・・」と書いたり、「銀行名/支店名、支店番号、口座番号」を書いても構いません。
 
 また、遺言執行者をつけた場合は、「第◯条.   この遺言の、遺言執行者として、次の者を指定する。」とし、続けて、「遺言執行者の住所、氏名、職業、生年月日」を書きます。

 そして、忘れてはいけない遺言書作成日付です。ちなみに日付は和暦でも西暦でも構いませんが、できるだけ統一しましょう。
 続けて、ご自分の住所を、住民票の記載通りに書きましょう。
最後に、自署(署名、サイン)をし、名前にかぶらない様に押印します。
          
 なお、法務局に保管せず、自宅の神棚や金庫に保管する場合は、これで完成です。改竄を防ぐために封書に入れて封印しておくと良いでしょう。
 特に遺言執行人がいる場合は、あえて法務局に保管する必要はありません。


9.  遺言は条件(負担)をつけたり第三者に与える事もできる
 長男に確実に妻の介護をさせたい場合は、例えば上の例ですと、「第2条」として、「長男 日本一郎は、前条の財産を相続することの負担として、遺言者の妻 日本撫子(昭和◯年◯月◯日生)が死亡するまでの間、同人と同居し、その生活費、医療費、介護費その他を負担し、身辺の世話をしなければならない。(文面は自由です)」といった感じの文面を追加することができます。
 条件は、子どもが障害者であったり、祭祀の負担をさせるなど、財産をより多く与える代わりに、その分義務を果たしてほしい場合などにつけると良いでしょう。
 また、介護でお世話になる予定の第三者に与えたい場合は、「第◯条. 遺言者は、遺言者の所有する別紙 4 の財産の全てを、次の者に遺贈する(第三者は相続人ではないので「相続させる」ではなく「遺贈する」と表記します)」とし、
「第三者の住所、氏名、生年月日」を書きます。

 ただし、条件をつけた部分は付言事項ですし、そもそも、たとえ公正証書遺言であっても、相続人全員が、これと異なる分け方をしようと決めたら、遺言が守られることはないということは覚悟しておきましょう。
 なぜなら、遺言は契約ではなく、一方的な意思表示に過ぎないからです。 
 
 他にも、色々と遺言を使って、ご自身の「不安払拭」や「安心」を作る方法がありますので、「誰でも書ける、単純な『◯◯を□□に相続させる』という遺言書作成のために、専門家にお金を払うのでは意味がない」と思われる方は、一度お問い合わせください。
 
 遺言は、あなたの思いを伝え、実現して貰うための最後の武器です。
「あなたが与えるだけ」の文書なら、あえて作る必要はありません。


©️2023   ようてんとなーたん


 



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