10.モラハラ父

 物心ついたときから、両親はしょっちゅう喧嘩をしていた。仲が悪い訳ではないと思う。ただひたすらに相性が悪かった。

 父は構われたがりで、モラハラ野郎で、機嫌が悪くなるとすぐ当たり散らす害悪のようなやつだ。母は温厚だが言い返すときは言い返すし、だから結構喧嘩になっていた。

 幼い僕はそれが酷いストレスだったし、そんなに喧嘩するならさっさと離婚しろと小学生のときから思っていた。それが結婚から三十年以上経ってもいまだに続いているのだから嫌になる。

 しかも父の口撃は大概がいちゃもんで、例えば家事をしている母を呼びつけてすぐに来なかったと怒ったり、スマホを充電しておけと寝そべりながら言いつけてうっかり忘れたら人格を否定するような暴言を吐く。なにかあればすぐに「だからお前は駄目なんだ」という。モラハラの権化である。

 耳かきくらい自分ですればいいのに、三日も経たずに「もう何年も耳かきをしてもらってないぞ」といっては家事をする母を邪魔する。阿呆としか言いようがない。

 ちょっと待って、と母がいおうものなら、「痒いのは待ってくれないんだぞ」とかいうけどだから耳かきくらい自分でしろと何度も(ry

 たまに気紛れに料理をしては片付けを一切せずに、俺は料理もする、偉いだろう、とふんぞり返るし、母を引っ張り回しては奥さんの買い物に付き合う俺は優しい、とふんぞり返る。控えめにいって鬱陶しい。邪魔。

 そういうのをずっと見させられて、イライラするし、ムカムカするし、本当に、どうして離婚しないのかと思う。

 母をときどき温泉だったりに連れて行ったり、僕と母を連れて長距離ドライブからの水族館や動物園に連れて行ってくれたりもするが、ある日急に「明日どこそこに行こう」と言い出す。正直いって迷惑だ。遊びに連れて行ってくれるのはいいが、僕や母にも都合というものがある。急にいわれても、はあ??という感じだ。幼い子供じゃないんだから。

 こういう、相手の予定とか都合とかを一切考えずいいことしているつもりなあたり、幼稚というか馬鹿というか、どうしようもない還暦過ぎである。

 とはいえ断ると不機嫌になることはわかりきっているので、僕も母も陰で「いつも唐突なんだから」「嫌になるね」というだけで、仕方ないから付き合ってやっている。

 動物園や水族館自体は、僕も行きたいところだしね。

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