べき関数の微分公式・積分公式の証明と導出方法
今回はべき関数の微分公式と積分公式の証明とその導出方法を解説していきます。
べき関数の微分公式・積分公式
まずはべき関数$${x^n}$$の微分公式と積分公式を確認しておきます。
・$${(x^n)'=nx^{n-1}}$$
・$${\int x^n=\frac{x^{n+1}}{n+1} +C (n \neq -1)}$$
・$${\int x^{-1}=\log |x|+C}$$ ($${\logは自然対数}$$)
当たり前のように暗記していると思いますが、今回はこれを証明していきます。
微分公式の証明・導出(二項定理を利用)
証明方法はいろいろありますが、今回は二項定理を使った証明をします。
二項定理
二項定理とは展開についての次のような定理です。
$$
(a+b)^n={}_nC_0a^n+{}_nC_1a^{n-1}b+{}_nC_2a^{n-2}b^2+…\\
…+{}_nC_ka^{n-k}b^k+…+{}_nC_{n-1}ab^{n-1}+{}_nC_nb^n
$$
何を言ってるのかわからないと思いますが、この定理が示していることを簡単に説明すると、 $${(a+b)^n}$$を展開したときの$${a^{n-k}b^k}$$を含む項の係数は$${{}_nC_k}$$となる ということです。
これを使って微分公式を証明していきます。
微分の定義式
まずはここで微分の定義式をおさらいしておきましょう。
$$
f'(x)=\lim_{h\to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h}
$$
極限$${\lim}$$の説明はここでは省略します。
微分の定義式に代入
ここからは$${x^n}$$を先ほどの定義式に代入して計算していきます。
定義式$${\lim_{h\to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h}}$$に$${f(x)=x^n}$$を代入すると、
$$
\lim_{h\to0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h}
=\lim_{h\to0} \frac{(x+h)^n-x^n}{h}
$$
まずは二項定理を用いて分子を計算していきます。
$$
(x+h)^n-x^n\\
=(x^n+nx^{n-1}h+{}_nC_2x^{n-2}h^2+…+nxh^{n-1}+h^n)-x^n\\
=nx^{n-1}h+{}_nC_2x^{n-2}h^2+…+nxh^{n-1}+h^n
$$
この式をよく見るとすべての項にhが掛かっていますね。よって式からhをくくり出すと
$$
nx^{n-1}h+{}_nC_2x^{n-2}h^2+…+nxh^{n-1}+h^n\\
=h(nx^{n-1}+{}_nC_2x^{n-2}h+…+nxh^{n-2}+h^{n-1})
$$
これで分子が計算できたので代入してみると、
$$
\lim_{h\to0} \frac{(x+h)^n-x^n}{h}\\
=\lim_{h\to0} \frac{h(nx^{n-1}+{}_nC_2x^{n-2}h+…+nxh^{n-2}+h^{n-1})}{h}\\
=\lim_{h\to0}nx^{n-1}+{}_nC_2x^{n-2}h+…+nxh^{n-2}+h^{n-1}
$$
hは0に収束するので、h=0を式に代入するとhが掛かっている項はすべて0になります。よって、
$$
\lim_{h\to0}nx^{n-1}+{}_nC_2x^{n-2}h+…+nxh^{n-2}+h^{n-1}=nx^{n-1}\\
よって f'(x)=nx^{n-1}\\
f(x)=x^nとしているので、\\
(x^n)'=nx^{n-1}
$$
これで$${(x^n)'=nx^{n-1}}$$の証明が完了しました。
積分公式(n≠-1)の導出(微分公式を利用)
次に$${\int x^n=\frac{x^{n+1}}{n+1} +C (n \neq -1)}$$の導出をしていきます。と言ってもこれは簡単で、不定積分の定義とさきほど証明した微分公式を利用していきます。
※証明は微分して$${x^n}$$になることを確認するだけ
不定積分の定義
不定積分の定義は次のようになります。
$$
ある関数F(x)を微分すると関数f(x)となる。\\
この関数F(x)を関数f(x)の不定積分あるいは原始関数といい、\\
\int f(x)dx \\
と表す。
$$
微分公式の利用
次にこの不定積分の定義と微分公式を組み合わせていきます。
不定積分の定義より、$${\int f(x)=F(x)}$$のとき$${(F(x))'=f(x)}$$なので微分すると$${x^n}$$になるような関数$${F(x)}$$を求めればいいということです。つまり、$${(ax^b)'=abx^{b-1}=x^n}$$となるような$${a,b}$$を求めればいいです。しかし、指数が$${n}$$になるには$${abx^{b-1}=x^n}$$を満たすには$${b=n+1}$$でないといけません。よって、
$$
abx^{b-1}=a(n+1)x^{n+1-1}=a(n+1)x^n\\
abx^{b-1}=x^nなので、\\a(n+1)x^n=x^n\\
これをaについて解くと、a=\frac{1}{n+1}
$$
これによって$${(ax^b)'=x^n}$$を満たす解が$${a=\frac{1}{n+1},b=n+1}$$であるということが分かりました。したがって、
$$
(\frac{x^{n+1}}{n+1})=x^n\\
よって、\int x^n = \frac{x^{n+1}}{n+1}+C (Cは積分定数)
$$
積分公式(n=-1)のときの証明・導出
最後に$${n=-1}$$のときの$${\int x^{-1}=\log|x|+C}$$の証明です。まずlogの中に入っている絶対値ですが、これは$${x}$$が負の値でも対応できるようにしたもので、本来は$${\log x (x\ge0)}$$です。なので、$${\int x^{-1}=\log x+C}$$を証明すればよいです。
微分から考える
積分と微分は対になる関係なので、$${(\log x)'=\frac{1}{x}}$$が証明できれば$${\int \frac{1}{x}=\log x+C}$$も証明されます。なので今回は微分から考えていきます。
e^x と log x の関係性(逆関数)を利用する
$${e^x}$$と$${\log_{e}x}$$は逆関数の関係にあります。逆関数とは、ある関数の結果をもとに戻す関数のことです。つまり、
$$
e^{\log_{e}x}=\log_{e}{e^x} (=x)
$$
となります。これを利用すると、次のような式変形によって$${(\log_{e}x)'}$$を導き出すことができます。
$$
e^{log_{e}x}=x\\
(e^{log_{e}x})'=(x)'\\
e^{log_{e}x}\cdot (\log_{e}x)'=1\\
(\log_{e}x)'=\frac{1}{e^{\log_{e}x}}\\
(\log_{e}x)'=\frac{1}{x}\\
よって、\int \frac{1}{x} = \log_{e}x+C
$$
これはあくまでも一例で、$${(\log_{a}x)'}$$の公式を利用した証明もできます。
証明はこれで以上です。最後まで見ていただきありがとうございました!
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