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正多角形の面積の公式の導出方法(証明)

今回は正n角形の面積を求める公式の証明と導出方法を解説していきます。


正n角形の面積の公式

面積の公式は次のようになります。

$$
正n角形の一辺の長さをaとすると、その面積Sは、\\
S=\frac{a^2n}{4\tan\frac{\pi}{n}}
$$

ここで「なぜ面積を求めただけなのに三角関数が入るのか」という疑問を持った方もいると思います。今回はその理由含め解説していきます。

導出に使う公式

基本的に三角関数に関する公式を使います。また、多角形の内角の和の公式も使います。三角関数の公式は下のようなものを使います。
・加法定理 $${\sin(a\pm b)=\sin a\cos b\pm\cos a\sin b}$$
・$${S=\frac{1}{2}ab\sin\theta}$$
・正弦定理

正n角形を三角形に分ける

これから面積を求めていくわけですが、正五角形などはそのままでは面積を求められません。そこで、正n角形をn個の合同な三角形に分割して考えましょう。

イメージ図

作図がものすごく雑ですが、このような感じで正n角形を分割します。この三角形たちはすべて合同です(正n角形は必ず円に内接するため)。

1つの三角形の面積を求める

次に分割した三角形の面積を求めていきます。
ここで、有名な三角形の面積を求める下のような公式を使います。

$$
三角形のうち2辺をそれぞれA,B、その間の角を\thetaとおくと、\\
S=\frac{1}{2}ab\sin\theta
$$

ここで、正n角形の一辺(三角形の底辺)を$${\alpha}$$とおきます。そしてこの三角形は底角が等しいことより二等辺三角形なので底辺のほかの2辺は等しいです。底辺の他の2辺を$${\beta}$$とおきます。
ここで、底角を求めてみましょう。

n角形の内角の和は$${180(n-2)^{\circ}}$$なので、正n角形の1つの内角は$${\frac{180(n-2)}{n}}$$となります。底角の大きさは1つの内角の大きさの$${\frac{1}{2}}$$であるので、底角の大きさは$${\frac{180(n-2)}{2n}}$$となります。そして、分子を展開して約分すると$${90-\frac{180}{n}}$$となり、ここでこの値を弧度法に変換すると$${\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n}}$$となります。これが底角の値です。

次に$${\beta}$$の値を求めていきます。これには正弦定理を使います。
正弦定理を使って$${\beta}$$を求めるには頂角の値が必要です。といってもこれは簡単で、$${\frac{360}{n}^{\circ}}$$、弧度法で表すと$${\frac{2\pi}{n}}$$となります。これらの値を正弦定理に代入すると、

$$
\frac{\beta}{\sin(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n})}=\frac{\alpha}{\sin\frac{2\pi}{n}}
$$

この式を変形すると、

$$
\beta=\frac{\alpha\sin(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n})}{\sin\frac{2\pi}{n}}
$$

となります。ここで分子のsinに加法定理を適用すると

$$
\frac{\alpha\sin(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n})}{\sin\frac{2\pi}{n}}=\frac{\alpha\cos\frac{\pi}{n}}{\sin\frac{2\pi}{n}}
$$

のようになります。そして、$${\frac{\pi}{n}=\theta}$$とおいて変形すると、

$$
\frac{\alpha\cos\frac{\pi}{n}}{\sin\frac{2\pi}{n}}=\frac{\alpha\cos\theta}{\sin2\theta}\\
=\frac{\alpha\cos\theta}{2\sin\theta\cos\theta}\\
=\frac{\alpha}{2\sin\theta}\\
=\frac{\alpha}{2\sin\frac{\pi}{n}}\space(=\beta)
$$

$${\beta}$$の値が分かったので、公式$${S=\frac{1}{2}ab\sin\theta}$$に代入してみると、

$$
S=\frac{1}{2}\alpha\cdot\frac{\alpha}{2\sin\frac{\pi}{n}}\cdot\sin(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n})
$$

となります。

式変形してnを掛ける

最後に式変形してnをかければ公式は完成です。
先ほどの式は一見複雑そうに見えますが、$${\sin(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n})}$$は加法定理を使うと$${\sin(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n})=\cos\frac{\pi}{n}}$$と変形できます。すると、

$$
S=\frac{1}{2}\alpha\cdot\frac{\alpha}{2\sin\frac{\pi}{n}}\cdot\sin(\frac{\pi}{2}-\frac{\pi}{n})\\
=\frac{\alpha^2\cos\frac{\pi}{n}}{4\sin\frac{\pi}{n}}
$$

となります。ここで、$${\tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}}$$であるので、$${\frac{\cos\theta}{\sin\theta}=\frac{1}{\tan\theta}}$$、つまり$${\cot\theta}$$となります。よって、

$$
\frac{\alpha^2\cos\frac{\pi}{n}}{4\sin\frac{\pi}{n}}=\frac{\alpha^2}{4\tan\frac{\pi}{n}}=\frac{\alpha^2\cot\frac{\pi}{n}}{4}
$$

となります。

さて、これは三角形1つ分の面積なので、正n角形の面積にするにはnを掛ける必要があります。よって、

$$
(正n角形の面積)=\frac{(一辺)^2n}{4\tan\frac{\pi}{n}}
$$

が導かれます。面積を求めただけなのに三角関数が入るのは途中で三角形を使っていたからですね。

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