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他者

「優しい」を認めて付き合ったはずなのに、
「優しすぎる」が原因で振られた、と彼女は言った。

日本語って、そんな便利さの中に
気難しい一面があると思う。
「親切」も度がすぎると「お節介」、
「賑やか」もヒートアップすれば「うるさい」。

以前、彼女を見て
「優しいご両親に育てられたから貴方は優しすぎる程
思いやりのある子に育ったのね」と言った人がいた。
でも、私はそうと限らないと思った。

本当は、親が厳しく自分の意見に蓋をするからこそ、
相手の気持ちを異常な程考えられるようになったのかもしれない。または、単純に怒られることを恐れているのかもしれない。

マイナスとマイナスがプラスを生み出すように、
彼女にとってのマイナスが、他者の視点では
プラスに捉えられるかもしれない。
もちろん、彼女にとってのプラスが、マイナスに
捉えられることもある。振った相手のように。

本当のことを私は知らない。
知らないが、彼女が心の底から笑えていることを、
私は切実に願う。