月と散歩
夕方になって、たまたま外にでた。今まさに東の空に浮かび始めた月に目を奪われ、誘われるがまま散歩に赴いた。
田んぼ道を一人、とぼとぼと歩く。
意味もなくスキップしたり、
あぜ道を全力で走り抜けてみたり、
鉄塔の横を通り過ぎる動画を撮ってみたり。
西から飛んできたコウモリが頭上を通り過ぎた。黄金色に輝く月に向かって飛んでいくその姿は、漆黒の影を作り出し、月のコントラストに私は見惚れていた。
掘り返された田んぼの所々に、一昨日降った水が溜まっている。水に写った月が、風に吹かれてゆらりと揺れる。東からの風に吹かれ続けた私の頬は、気づけば随分と冷たくなって居た。
こんなに月が綺麗な日は、妄想する。
「この明るさなら提灯がなくても帰れそうだ」
お酒の入った頭でそう考えて、店を後にする。吹く風の冷たさとは裏腹に、いい心持ちで暖かくなった体を連れて月を眺める。その美しさに思わず見惚れて、川に落ちる。そんな侍も居たのかもしれない。
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