マガジン一覧

ふらり旅

ふらりと旅した時の一瞬を、切り取って綴っています。

ふらり旅#12(福岡)

久しぶりによく雪の降った日の朝、かねてより予定していた通り九州へ向かった。自分では神経をすり減らして走ることが容易に想像できるほど、つるつるに凍った道路を、慣れた様子で運転する夫に感謝し、最寄り駅から広島駅を目指した。 定刻になっても姿の見えない電車に、私は「寒い寒い寒い」と小さくつぶやきながら駅のホームで足踏みをする。取り出したスマートフォンを見るとメッセージが1件。タップしようと画面に指を乗せると、指先の熱が奪われたのがわかった。新幹線で合流予定の友人が、乗るはずだった

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ふらり旅#11(名古屋)

久しぶりに潜る新幹線の改札に、テンションが上がった。お弁当は何にしよう、お土産は何を買って行こう。あれこれ迷うには、新幹線の出発時間が迫っていたため、結局お弁当ではなくコンビニのおにぎりを握りしめ、五個入りのもみじ饅頭を買った。 よく旅をしていた頃とは新幹線の車両も変わり、乗り込んでみると以前より車内が明るい気がした、まだ新しい鮮やかな青色のシート。適度に固くスリムになった座席。コンセントは窓側の壁ではなく、肘掛けの下。20代の頃に何度も乗った新幹線の記憶も、だんだんと薄ら

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ふらり旅 #10 (宮島)

久しぶりの宮島口フェリー乗り場は、日本語以外の看板が増えていた。見渡す限りどの看板も英語と韓国語の併記。 右も左も海外からの観光客と思われる方が多い。看板によると、JR-WEST RAIL PASS を持っている海外からの旅行者はJRが運行するフェリーに無料で乗船できるらしい。 宮島にはJR西日本が運行するフェリーと、松大汽船が運行するフェリーの二種類があり、フェリーの発着場も同じで、金額も同じだったと思う。 ただ先に述べたように、JRのRAIL PASSを持っていると

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ふらり旅♯9(東京)

急流に飲み込まれるように人の波にさらわれて、あれよあれよと流されるうちに、自分でもわからない所まできた。掲げられるサインは複雑で、向かう場所は東か西か、はたまた北か南か。行きたい道がどこにあったのか、私にはもうわからない。 ふらり旅♯9(東京) 新幹線のアナウンスが終点を告げて、車窓から見える景色は少し前から乱立するビルで溢れかえっている。見える空はずいぶんと狭くなっていた。 到着した駅に溢れかえったコインロッカーはどれも赤いランプ、訪れる人の多さを物語っている。だれが

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君と私の共同生活

自由な私と、更に自由に生きる夫との生活を綴ったエッセイ。

興味が狭く深い君と広く浅い私

好きなことは深掘りしたくなる。だけど、私は飽きが来るのが早いようだ。なかなか一つを深く突き詰めることはできないし、他のことが気になってしまう。本も読みかけで置いてしまうことが多々ある。 夏に買ってもらったLeica sofort2は、かなり興味が続いているが、深掘りできているかと言われると、それは違う気がする。撮るのは楽しいし、シャッターを切ることはやめないけれど、時折Leica sofort2である意味を考えてしまう時がある。 一方で夫氏は、一度ハマるととことん掘り進め

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金策が上手な君と浪費しかしない私

欲しい物があるとき、節約してそれを手に入れようとしたり、仕事を増やして収入をあげたり。はたまた、誰かに買ってもらうのか……。人によってその方法は様々だと思う。金額が問題ではない場合もあるだろう。 楽しいが比較的かつかつの生活をしている私は、欲しいものは買ったらなんとかお金を工面することが多いように思う(すごく高いものでなければ)。とはいえ、昔のような収入はないし、見入りにあったものを買うようにはなってきた。何度か段階的に収入が減ってきた私は、最近では夫氏に買ってもらうことも

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病的に几帳面な君と大雑把な私

血液型は性格に影響する根拠はないとの話をよく耳にする。確かに幼馴染はA型っぽくない性質をもっているし、仲のいい友人はAB型ぽくは見えない。ただ、それでも私はA型は几帳面だと思うし、O型は大雑把だと思っている。それはきっと、夫氏と私の生活が大いに影響している。 一緒に住み始めてすぐの頃、掃除のために床に置いてあるスピーカー(直置きではない)を退かして、元に戻したことがある。仕事から帰ってきた夫氏が部屋に入って最初に言った言葉が「スピーカー動かした?」である。怖い。 私として

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自己肯定感強強の君と弱弱の私

すでにいくつかnoteを読んでくださった方はお分かりだろうが、私は大変弱々しく、うじうじした人間である。自信などほとんど持ち合わせていない。多くの人が食パン一枚分の自信を持っているとしたら、私の自信は食べ終わってお皿に残ったパンの屑ほどしかない。吹けば飛ぶような自信だ。日々自分の至らなさを痛感し、「自分はできるやつだ」「明るい人間だ」と自分で自分を説き伏せる。 こんな私と生活を共にしてくれる夫氏は、自己肯定感強強の民だ。自信しか持ち合わせていない。「僕はできるから大丈夫」「

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散文詩的な呟き

日常の一コマを短い映像のように切り取っています。

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神議りの場でラップトップを開く神々は 神使が作った会議資料を広げて、 人の縁を紡ぐ話し合い。

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バウムクーヘン

まあるい一切れのバウムクーヘンを頬張った。記録された年輪がほろほろと崩れて、諄く甘い味が口いっぱいに広がる。欠けたバウムクーヘンはランドルト環と重なり、頭の中でぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる。雑多な言葉と放置された感情が、まわって回って、回り続けて、欠けた部分から零れ落ちた。瞳から溢れた涙はバウムクーヘンで満ちた頬を伝って、静かに床へ落ちた。

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紙月ーしげつ

元来私は、下を向いて歩く人間だ。 石畳の境目を避けて歩き、横断歩道の白いところだけを踏む。 すれ違う人も、俯いた視界に相手の靴が映り込むまで気づかない。 20時の暗闇を、足下を確かめながらぽてぽてと歩く。 汚れた靴の先に、昼間の出来事を思い出す。 等間隔に並ぶ街灯の間を、泳ぐように渡って家路を行きながら、 ふと、今日は満月だったかと、上を向く。 見上げた先には明かりの灯るマンションの窓が溢れている。 それぞれの生活が真冬の夜に漏れ出して、しばし夜空を漂って消える。

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実験的表現

自分なりの詩の表現を追求するにあたり、 色々試している中の一つ。 そこよりも、言葉の精度を上げるべきなのか。 結局のところ自分が表現したいことって何なのか。 詩の可能性とか、世界は色に溢れていることとか、 自分という人間を自分が諦めないために、 今はもがいているのかもしれない。

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机上のふらり旅

ふらりと旅をすることが好きだった私が、旅する経済力がなくなったことをきっかけに机上旅行を始めることにした。何に乗って、どこへ行って、何をして、どこへ泊まって、何を食べるのか。全ては机上の空論で、著者の妄想の域を出ないだろうが、お付き合いいただけたら嬉しい。

机上ふらり旅#00

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